非能力者の日常
プロローグ
俺は朝が苦手だ。
なんなら、夜寝入るまでも時間がかかる。
夜早く寝て、朝早くに気持ちよく起きる?
無理無理。
そもそも、朝「よく寝た、気持ちいい朝だ」
なんて思った記憶は、一度もないんだから。
ーーーまぁ、そうも言ってられない。
今日も仕事だ。
俺の1日は、8時に始まる。
起きて自分の身支度をしたら、
相棒ヤナンの、ディーディーに餌をやる。
家を出るのは9時ごろ。
ディーディーに乗って20分走ると職場のある街
[ディンガーリンド]に着く。
9時半に職場で、早番のリィザと引継ぎをしたら、
10時から仕事開始。
俺の仕事?
ヤナンに乗ってるんだからわかるだろ、
ポストマンだよ。
この街で一番楽しい仕事さ。キツイけど。
「なーにぼーっとしてんのよ。早く行きなさいよ」
リィザにせっつかれる。
「8番街、今日ちょっとヤバいんだから、急がないと終わんないわよ。いや、あんたなら平気か」
ーーまぁた8番街か...あそこ結構面倒なんだよなぁ。
暗い顔をするとリィザに背中を叩かれた。
「ほら、行った行った!」
しかたない、行くか。
ディーディーに午前中分のお届け物を山ほど積んで、今日は1番街から順番に配達の予定だ。
「じゃ、行ってきます。リィザ、俺の昼飯よろしく!」
「はぁ、はいはい、行ってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振るリィザを背に、事務所をでた。