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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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「なぜ!強い奴らを連れてきたのに!」

女が焦ったようにそう喚く。

茅と飛竜はけがをしたが、央の比ではなかった。

ところどころから、血が出ている。

きっと服を脱いだら、あざが全体にできているのだろう。

そんな痛々しい姿を見て、耐えられるわけがなかった。

ツカツカと茅がそちらの方へと歩いていく。

女は、央をつれて一歩一歩下がっていく。

ついに、壁に行き当たってしまい、次は央を楯にしだした。

「てめぇ」

「こ、これ以上近づいたら、この子に刺すわよ」

女が持っていたのは、小型のナイフ。

新品なのか、刃先は鋭そうだった。

が、茅はそんなものどうでもいいとばかりに歩いてくる。

「さ、刺すわよ!」

「刺してみろ、てめぇに地獄を味あわせてやるよ」

茅がまたキレている。

だが、今回は飛竜は怖がりなんてしなかった。

なぜなら、飛竜すらもキレていたからだ。


「あなたたちは私に手を出せないでしょう!!」

「あぁ?」

いきなり自信満々にそう言いだす女に、茅は眉を吊り上げる。

女はひぃっと小さい声で言ったが、この声は大きかった。

「だって、私は堅気ですもの!後月会は堅気への暴力はご法度でしょう!」

「おまえのどこが堅気じゃないって?」

これだけ、極道を使っておきながらよく言う。

茅はそう言ってにらんだ。

もちろん、その睨みは女に恐怖を味あわせた。

「私はここの頭の愛人であって、それだけだもの!その人に使ってもいいって言われているのよ!だから、私は堅気よ」

そう言われて、茅は止まってしまう。

確かに、情報では愛人はいるがその愛人は堅気であると書かれていた。

それが、この女か。

おそらく、間違いではない。

そこに書いてあった特徴とよく似ている。


「後月会は、堅気への暴力はご法度だ」

それは組の決まりごとであり、絶対に覆してはいけない決まりだ。

茅は次期6代目として、それは死んでも守らないといけない。

なぜなら、一度でも違えてしまった場合、もう茅にそれを云う効力がなくなる。

そうなってしまえば、自分の面目も丸つぶれだ。

「若、ここは俺が!」

そう言って飛竜が前に出ようとする。

茅がそれを止めた。

飛竜はお付として茅を守らなければいけない。

彼の6代目の地位を守るのだって、彼の仕事。

だから、茅を守るために自分が犠牲になってもいい。

そういう思いが、飛竜の中にあることを茅は知っている。

だが、それではだめだ。

それでも、堅気への暴力をすればきっと自分の地位は危なくなるだろう。

飛竜も思い当ったのか、茅が止めた時にきちんと止まった。

どうすればいい?

やっぱり、自分に央は守れないのだろうか。


守ると誓ったのに。

誓ったくせに、何もできなかった。

央がさらわれる可能性は、想像していたくせに。

央がいいと言ったからといって、飛竜をつけておかなかった。

自分が央の傍にいられないとき、守ってくれる人を他人任せにした。

彼らも万全は期してくれただろう。それはわかるが、やはり飛竜にはかなわない。

央がさらわれたとき、自分はキレていた。

それはそうなってしまったことへの憤りと、そうした女への憎悪だと思っていた。

だが、本当は違う。

茅は、自分にキレていたのだ。

守ると言ったのに、誓ったのに。

それでも守れなかったことへ。

茅は自分に失望し、そして情けなくなった。

守るといったのに。

目の前の愛しい人は、自分が動く間に――――。

情けなかった。悔しかった。

やっと見つけて、極道の連中も数分は起きられない程度に痛めつけたのに。

最後、この女は自分ができないことを知っていて、それをついてくる。

―――自分は堅気を殴れない。

央を助けたいのに、自分はそこに行くことすらできない。

―――情けない。

守ると言ったのに、一番守れない。

そんな、役立たず。

それが自分だったなんて。

「若……」

飛竜が茅を伺ってくる。

茅は先程から顔をまったく変えず、女をにらみつけている。

こうしていて、状況がよくなるものでもないのに。

そんな時だった。


「へぇ、お姉さん堅気なんだぁ」

そう間延びした声が聞こえて、飛竜はそちらを向く。

そこにはとても笑顔な1人の女がいた。




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