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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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「6代目付が遊部 央を認めた」

そのニュースは、すぐに分家にも伝わった。

もちろん、分家頭の六木組の頭にも。

もちろん、六木組の組長は癇癪を起したかのように怒り狂った。

「飛竜、『こちら』の答えは出たわけね」

クスリと香絵が笑う。

六木組の組長に、さっさと茅のところへ行けと昨日言われたばかりだった。

「じゃぁ、私も本気を出すとしましょう」

そう言って、香絵は本家の門をくぐった。



「何しに来た」

ぶすっと突然の来客を睨みつける。

傍には飛竜、央とリルがいた。

「何をしに来たとは、またすげないお言葉ですね。私はあなたの婚約者でしてよ?」

「それは、断ったはずだ」

「あら、それはあなたが『俺、彼女で来たから』という戯言ですか?」

久しぶりに会った。

それは、茅が逃げ回っていたからではなく、本当に香絵が久しぶりに来たのだ。

一度、香絵と対峙して、彼女ができたから婚約者にはなれないと言ってから、来なくなっていたから、あきらめてくれたのかと思っていた。

「戯言、だと?」

「戯言でよいでしょう?どうせ今の関係です」

「そんなこと、だれが決めた」

「誰がとは?では茅様。お伺いいたしますけれど、どうやってその堅気の女を姐にするおつもりで?」

茅がくっと唇をかんだ。

やっと宇月組の組員に認めてもらったのだ。

他の分家は絶対にまだ認めてはいないはず。

むしろ、認めようとはしないだろう。

目の前の人と同じく。

「彼女を姐にすれば、11組が黙っていませんわよ?もちろん、我が六木組も。そして」

香絵は一瞬、飛竜のほうに目を向けた。

「飛竜殿がいらした、羽月組も」

「羽月は俺とはもう関係ありません」

「あら、そうでしたか?申し訳ございません」

うふふと笑って、香絵は飛竜を見た。

飛竜は、おそらく自分が今どんな顔をしているのかわかっている。

昔一緒に遊んでくれた優しい姉のような人。

その人が認めてくれないのは、きっと茅のほうが悲しいだろう。

「愛人ぐらいにしておきなさい。それがあなたと、この組、後月会引いて、彼女のためにもなるのですからね」

そう言って、香絵は立ち上がる。

その動作は洗練されていて、美しかった。

「では、御前失礼。あなたも、いい気になって妻の座は狙わないようにね」

でないと、恐ろしいものがやってくるわよ。

クスッと笑って香絵は出て行った。

部屋の中は静まり返る。


「央、悪い」

「え?」

いきなり謝られ、央は間抜けな声を出した。

「なんなの、あの人。央ちゃんばっかりにそんなこと言って」

「リル、私大丈夫だよ」

「でも!あんな言い方」

きっと香絵が去って行った方を見る。

央はそれも止めた。

「央ちゃんは、悔しくないの!」

央は何も答えられなかった。

ただただ、頭の中には彼女の微笑みがあるだけだった。




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