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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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「お前はだめだ」

今日は茅と飛竜は学校に用事があるとかで、2人して居残りをしていて。

先に姐の修行をさせるべく央を帰していた。

央と一緒にリルも帰って行った。

それに特に何も言わずに、2人は見送ったのだ。

そして、用事を片付けて帰ってきた二人に見えてきたのは。

門番とにらみ合っているリル、そしておろおろとしている央だった。

「何してんだよ」

人んちの前で。

少し不機嫌そうに、茅がそう言った。

おそらく、関わり合いにはなりたくなかったのだろう。

門番は茅の姿を認めて、こちらに向き直った。

「お帰りなさいやし、若頭」

「おぉ。で、何やってんだ」

「実は、彼女の付き人としてこの女子が入りたいと言ってきて」

あぁ、つまり央の修行を見たいリルが入りたいとごねていたらしい。

一応、極道としてリルを入れるわけにはいかない。

門番にとってはリルの身元は不確定で、もしかしたら敵でもあるかもしれないというのに、入れられるわけがない。

それに、認められていない央の友人というだけで入れられるわけがない。

よって、この門番の言っていることは正しいのだ。

彼はよく仕事をしている。

だが、リルはあまりよくわかっていないらしい。

リルは央がまだ候補であることも知っているし、認められていないのも知っている。

だから来たのだろうか。

自分は後月会と友好状態にある蒼秀会の次期8代目に妹のようにかわいがってもらっている。

それが、この先もし極道として生きるなら彼女の強みになる。

それをきっと彼女はわかっているから、だから央の後ろ盾になってくれようとしている。

茅には2人の思いが痛いほどわかってしまった。

まず、門番は仕事をしているのだから感謝しないといけないだろう。

だけれど、だからと言ってリルを外に放り出しても面倒になる。

先ほども言ったが、彼女は蒼秀会の次期8代目が妹のようにかわいがっている人で、リルが言えば、その兄面した次期8代目がこちらに絡んでくるのは目に見えている。

さぁ、どうしよう。

どうすればこの場を収められるだろう。


茅の気持ちを読んだのか、央が動こうとした。

だが、一瞬彼のほうが早かった。

「なんで、入れられないんだ?」

飛竜だ。

先ほどまで茅の後ろにいたのに、いつのまにか並んでいた。

「6代目付、俺はこれが仕事です。身元も知れないようなやつを、通すことはできません」

「身元も知れてるっていうのは、やっぱり身内の事を指すわけ?」

飛竜の言葉に、そこにいる全員が訳が分からないという顔をした。

飛竜はいつも何をしだすかわからないが、それは今日も健在らしい。

にこにこと笑っている飛竜は、門番に答えを促す。

「まぁ、そうですが。そこの6代目姐候補は、上から入れていいという指示はいただいておりますし。一応、身内として扱えと言われています」

不服なのか、少し影を含みながら門番は言った。

その門番の答えを気に入ったらしい。

トコトコと飛竜は門番の前にやってくる。

「お仕事、ご苦労様。でも、こいつは中に入れてやってくれるか?」

「は?なんでです?」

門番が不審な目を向ける。

飛竜は笑みを崩さず、いつのまにかリルの隣に行っていて、そしてリルを自分のほうへと引っ張る。

「うわっ」

リルが小さく驚いた顔をしたが、重力には逆らえず、飛竜のほうへと抱きつく形になった。

「こいつ、俺の彼女なんだ」

その場の空気が、一瞬止まった。

「恋、人。ですか。その堅気が?」

「こいつはただの堅気じゃない。蒼秀会の次期8代目のお気に入りだ。そんで、今日から俺の恋人になった」

わかったなら、中に入れてもらおうか。

にっこりと笑う飛竜に、うすら寒いものを覚えた門番は、自分の仕事を一瞬忘れ、先ほどは何を言っても開けなかった門を開いてしまったのであった。


「あの、飛竜君」

「飛竜でいいよ。君付けとか最悪」

にっこりと笑いながら、飛竜はそう言った。

その笑いが、本当は笑っていないことをリルは知っていた。

「どうして、入れてくれたの?私はあなたと恋人になったことはないと思うんだけど」

「もちろん、そんな事実はねぇ」

まだにっこりと笑う。

飛竜にとって、笑うことは一番たやすいことだ。

わけがわからないという顔をしたリルに、飛竜はおかしそうに笑った。

「そういう事にしておいたら、いろいろ都合がいいだろう?」

「まぁ、私も央ちゃんと支えらえるようになるから、いいけれど」

一応、蒼秀会で姐修行的なことを半ば強制的にやらされたことがあったから、姐が何をすればいいのかとかはわかる。

央の助けになればいいと、そう思っての行動だったが。

茅が入れるようにしてくれるとそう思っていた。

でも、入れるようにしてくれたのは飛竜だった。

さきほど、初めて会話したその男。

「とりあえず、ありがとう」

「いえいえ、たやすいご用ですよ」

にっこりとまだ飛竜は笑っている。

その笑い方に、リルはついに切れた。

「いい加減怒っているなら怒っている顔をしなさいよ。あなたって本当に子どもね」

「え?」

また、飛竜の時が止まった。




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