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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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結論から先に言うと、央を認めさせることはできなかった。

それは当り前であろう。

なんと言ったって、分家たちが許すはずもないのだから。

それに、本家の組員たちだってすぐに認めるはずがない。

そんなことはわかりきったことだった。

だが、やはり認めさせてはあげたかったというのが、茅の思いである。

そしてもう一つ言うと、央は認められなかったが、候補には収まった。

これは、5代目付からの提案だった。

5代目は認めているし、姐も認めると言っている。

6代目付は認めているかいないかわからない。

なぜなら、飛竜はその会議にまだ出られないから。彼は本家の幹部ではないのだ、まだ。

そして他の幹部たちは認めない。

そこで平行線になっていた時に、5代目付が言ったのだ。

「まぁ、我々も彼女のことを何も知りませんからな。だから、候補としてあげることにしましょう」

幹部たちからは渋る声が聞こえたが、きちんと5代目付が締めてくれた。

首の皮一枚、いやそれよりは太いものがつながった。

そして候補となった瞬間、姐が今度は言い出した。

「じゃぁ、あの子にも姐修行をさせましょう」

これにも、もちろん幹部たちは渋った。

「他の子だって姐修行やっているでしょう?彼女の事をわかるためにも、修行させるにもちょうどいいわ」

皆、姐には逆らえなかった。

目の前の真っ黒い物体。これを作ったのは間違いなく、目の前の女性。

元の食材がなんであったかわからない。

そんなものをここに来たらいつも食べさせられた。

食事を作るのは、姐の仕事なのだ。


と、そういう事で。

央は候補に収まり、そして姐の修行もすることになった。

姐の修行、本来なら自分のいる組でやるものであるが、もちろん央には組なんてない。

だからか、姐自ら志願し、宇月組で修行することになったのだ。

現在、1か月が過ぎようとしている。

央はその修行がちょっと楽しいらしい。

毎日帰りに宇月組に寄って、修行をして帰る。

時に、姐に引き止められて泊まる。

そんなことを繰り返しながら、央は姐の修行をしていた。


央が姐の修行を始めてから、宇月組は変わった。

何が変わったか、それは大きく2つ。

まずは、茅の態度。

いつも不遜で、人の事を一体なんだと思っているのだろうかというかのような態度であった茅が、央に接している時だけはまったく異なる。

それを、組員が驚きで見ていたのだ。

昔から気難しい、機嫌の悪そうな顔をしている彼が笑うなんて、どうして思うだろうか。

年嵩の組員は、それこそ茅を息子のように見ていた節もあり、それで央への態度は軟化した。

もう一つ、それは料理。実は、これが一番大切だった。

今の姐は、はっきりと言って料理が下手。

お世辞にもうまいなんて一生言えないぐらいに、壊滅的にへたくそなのだ。

一体何年厨房に立っているんだと言いたくなるぐらい、駄目だ。

毎日、出てくるのは炭のような、真っ黒焦げの料理。

姐は一品作ればそれでいいのだが、その逸品が黒い。

曜日によって、姐が作る一品は決まっていたが、これがメインだともう最悪。

ちなみに、これは今の姐になってからできた仕来りであるが、本当にいつも泣きそうだった。

が、央が来た瞬間、炭の料理がなくなった。

それは姐修行中の央が早く覚えられるように姐が配慮した結果でもあったのだが。

これが、若輩の人たちにとても喜ばれたのだ。

今では、小さい子ならば「今日の晩御飯は何?」と聞いてくるようになったぐらいで。

おおよそ、本家では問題なくなってきている。

問題は、中年層だ。

5代目に忠誠を誓っている年嵩の組員と、茅と兄弟のように過ごしてきた若輩の組員。

だが、中年層は違う。もちろん、5代目に忠誠を誓ってここにいるが、茅にはまだ誓えないし、若輩のようにするには高いプライドが邪魔をする。


「6代目付!」

「なんだ?」

6代目付、東澤 飛竜は機嫌が悪くなさそうに振り返る。

誰かと思えば、中年層のリーダー的存在だ。

「最近、あの女が幅を利かせすぎている。どうかあなたから言ってください」

言われる言葉は、わかっていたことだった。

なぜなら、飛竜がそうするように促したから。

「俺もそれは気になっている。だが、若はそんなことを聞いてくれなくてね」

「まったく、恋情に気を取られて」

ぎりっと悔しそうに歯を噛むリーダーに、飛竜は同じように悔しそうな顔を一瞬した。

それは、リーダーにはきちんと見えた。

「俺らは若を認めたわけじゃねぇ」

「あの若では未熟すぎる?」

「その通りだ。6代目付、あんたならわかってくれると信じてたぜ」

ニッと怪しく笑うリーダーに飛竜も妖しく笑い返してやる。

それは了承の意だ。

「俺らはあなたを次期6代目にしたいと願っているのだが?」

「まさか。俺にそんな」

「なれるさ、あなたなら」

「まぁ、考えておいてやる。お前らは俺についてくるのか?」

クスクスと飛竜が笑う。

それを、肯定にとらえてリーダーはふっと笑ってから真剣な目をする。

「もちろん。あなたが6代目になるべきですから」

飛竜はその言葉に機嫌よく笑った。

「時が来たら動く。お前らも準備しておけ」

「了解しました」

そう言ってリーダーは去っていく。

あまり長く話していても、敵意見つかるかもしれない。

だから、長く話す必要はなかった。

「バカばっかりだな」

くくっと飛竜は笑う。その笑いは、嗤いも、哂いも含んでいた。



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