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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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ねぇ、人を信じることには何が必要ですか?

昔まで、そんなことを考えなくても生きていけたのに。

ねぇ、人を信用するのには何が必要ですか?

契約書?約束の指切り?

そんなもの、破いてしまえばすべて同じことなのに。

ねぇ、人を信頼するのには何が必要ですか?

わからない。

だって、私は信じようと思ったことがないのだから。

だけど。

『逃げんなよ!』

その言葉で、央の世界は変わるのだ。


『俺、お前のこと好きなんだよ。』

前に言われたとき、びっくりしたけれど嬉しかった。

そんなことを一回も誰にも言われたことがなかったから。

あれは、央にとっては嬉しい出来事で、茅が自分を友達だと思ってくれているのだと判断した。

友達だから好きだと言ってくれる。そう思っていた。

本当の告白だなんて気付いてもいなかった。

いや、茅にとってもあれは本気などではなかったはずだ。

面白いものを見つけたから。弁当を作ってくれる人を見つけたから。

その人への好意だったはず。


でも、今の言葉はあの時とは全く違う。

真剣な言葉に、まっすぐな瞳。

それが、央をとらえて離さない。

この告白に、何一つ嘘がないのだとそう訴える眼だ。

「ち、がや」

「俺、お前の昔の話を聞いたとき、最初は同情した」

その気持ちは、嘘じゃなかった。

この次期6代目という役名がある自分が、そうそう同情なんてするわけがない。

だから、それができる央が好きだと思っていた。

けれど、一晩たった今、それは違う気持ちへと変化したのだ。

「俺は、お前に笑っててほしい。そのためなら、なんだってやってやる。そう思ったんだ」

「茅」

そう思ったら、いてもたってもいられなくなった。

早く、この気持ちを伝えて、彼女を守りたい。

そう強く思った。

同情、したのは本当。

けれど、その同情が一日で変化する。

こんなに、感情に振り回されるなんて、自分らしくないのに。


「わ、たし、今、わら、ってる、よ?」

「嘘つけ。お前は迷ってるだろ?俺への返事にどう断ったらいいか」

ずばりと真実をつかれて、央は瞠目した。

茅がやっと央から顔を話す。

央はあきらかにほっとしていた。

「お前は、人が怖いって聞いてる」

それは、まぎれもない央の真実だ。

人は、怖い。

怖くなかったのは、父親と今の母親のみ。

他の人間は怖くて仕方がない。

「じゃぁ、お前は俺も怖いか?」

「え?」

「俺は、もちろん人間だ。しかも、いいか悪いかって聞かれると悪い人間のほうだ。いい人なんかになれやしねぇ。そんな人間の俺が、お前は怖いか?」


――――――怖い。

わけがない。

怖いなんて、どうして思うのだ。

央の目が見えにくいとわかって、彼は極力大きな声を出さないように気を付けてくれた。

弁当のお礼だと言ってジュースを買いに行ってくれたり、見たいという自分の気持ちをくんでくれて、コンタクトを渡してくれた。

他にも、茅が優しいところなんて央はもっと知っている。

茅が、央に乱暴だったり怖い人だったことは、仲良くなってからは一度もないのだから。

確かに、最初は茅が怖かった。

けれど、今は違う。

人をいい人と悪い人の2つに分けるのは、どうかと思うが。

央にとっては、茅はいい人だ。

「央、お前は人間が怖いんじゃない」

「え?」

驚いて、茅のほうを見る。

茅はまだ真剣な目をしていた。

何故だろう、彼の次の言葉を聞くのが怖いなんて。

次の言葉で、央のすべてが暴かれてしまうみたいで、怖いなんて。

でも、それを言ってくれる人を央はずっと待っていた気がするなんて。

「お前は、人間が怖いんじゃなくて、人間を信じることが怖いんだよ」



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