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現代ファンタジア 第1章  作者: 草野 雅
現代ファンタジア
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『信用』と『信頼』は違うものだ。

少なくとも、央はそう思っている。

央の中ではこの2つは同じようで違いがあった。

信用は、信じてはいるがそれは契約だったり決め事だったり。信じてはいるが、裏切る可能性も持つかもしれない。そういう信じ方。

信頼は、本当にその人を信用していて、それで自分も心を許して信じようと思う信じ方。

同じように聞こえるかもしれないが、央には意味の全く違う言葉だった。


信頼している人はたった2人。

父親と、今の母親。

この2人は信頼できる。

央が、一緒にいてとても安心できて、なんでも話せる2人。

今までの央の世界には、2人しかいなかった。

ずっと、この2人だけが央の世界だと思っていた。

『央、茅君っていう子がとても大好きなんだな』

その言葉を聞いて、その言葉を認めて、央の世界が急激に変わった。

その人の傍にいることへの幸せ、その人が傍にいることによっての安心。

今まで、央の唯一はいなかった。

仲のいい人が一人もいなくて、だからこそ初めての唯一。

その初めての人を、信頼したい。

央は初めてそう思った。

だが、信頼したいという思いも、央の心の奥底が拒否するのだ。


――――人は、怖い。

ただ、その言葉のせいで。


「央」

さんざん逃げ回ったのに、彼はここを探し当ててしまった。

逃げ回ったといっても、言葉の通りだったらすぐに捕まっただろう。

歩き回っていては、すぐに見つかる。

そう思ったからこそ、央は一つのところでじっとしていた。

「ち、がや」

「探したぞ。腹減ってねぇか?」

そう言って、購買で買ったのであろうパンを差し出される。

昼休みが始まって、央は何も食べていなかった。

だが、あいにく食べたい気分ではなかった。

「い、い」

「食べろ。俺の飯が食えねぇっていうのか?」

多少、怒っているらしい。

確かに今日央は彼へのお弁当を作ってきていない。

作れるはずもなかった。

作ることによって、思い出してしまう彼を消したかったから。

「あのよ、央」

怒っているだろうに、いつもと変わらない声を出す茅。

その気遣いに、央は気付いていた。

「お前の昔の話聞いちまった」

え?と声を出して央は驚いた。

だが、そうすると昨日母親がいなかったことにもつながるので、納得もした。

「そう、……」

「俺、それで考えたんだけどよ」

茅は一体何が言いたいのだろうか。

よくわからないが、茅が緊張していることもわかった。


「俺、お前の事守りたいんだけど、どうすりゃいい?」

「は?」

茅が何を言ったのか、央にはまったく理解できなかった。

脳のキャパがあふれたわけでもない。

だが、央にはその日本語が理解できなかった。

「茅?」

「俺、お前のこと好きなんだよ。わかってるだろ?」

じっとこちらを見つめてくる真剣な1対の目。

央には見えなかったが、その分伝わるものはある。

気配にさとい央ならば、それぐらいわかってしまえた。

だが、やはり先ほどの言葉は頭に入ってくれない。

茅はそんな央に気づかずに続ける。


「だからさ、俺はお前の事を守りたい。守るから、守らせてほしい」

「あの、茅」

「なんだよ」

「話が、見えないん、だけど」

茅は先ほどの央と同じ顔をした。

いや、同じ顔になるような筋肉の動かし方をしようとしたが、結局いつもの不機嫌顔だった。

「話が見えねぇって?どういう事だよ」

どういう事だと言われても。

言葉の通りなのだが。

そして、その言葉通りすぎて、何を話せばいいのかわからない。

茅は一瞬考えるように間を開け、そして再度口を開く。

「お前に昔起こった話を聞いた。それを聞いて、俺は、お前の実母から、お前を守りたいと思った。って言ってんだよ」

「えー、と」

生まれて初めて聞いたと言わんばかりに、央はぱくぱくと口を開く。

が、何も口から音は出なかった。

「俺、お前の話聞いて、強くそう思ったんだよ」

先ほどのぱくぱくと口を開いていたのは、どうやら終わったらしい。

央が、心配そうにこちらを見てきた。

「なんで、そんなこと思うの?」

「は?」

おそらく、今日一番ドスの聞いた声を茅は央に送ってしまう。

それに、央はなぜだかびくりと肩を震わせたりしなかった。

「お前、本気で言ってんのか?」

「本気って、何が?」

「俺、お前に告白したはずだよな?」

告白?

はて、その言葉ってなんだろう。何を告白したんだろう。

本気で央はそう思った。

どうやら、落ち着いたのではなく本当にキャパオーバーを催したらしい。

茅ははぁとため息をついた。

とりあえず、央にコンタクトを無理やり入れさせて、その上で顔を近づける。

「ち、ちが、や?」

茅への恋心を認めた央にとって、それは凶器にもなりえた。

心がドクドクとうるさい。

けれど、茅が言った言葉によって央の心臓の音が止まった。

「俺は、お前が好きだ。お前が好きで、おまえを恋人にしたい。いや、俺の姐にしたい」

最後の言葉はよくわからなかった。

だが、心臓の音はどこかへと言ってしまった。

完璧に、キャパがオーバーになり顔がほてってくる。

熱い、熱い、熱い。

体の中の血液のすべてが沸騰したかのように、熱い。

「俺は、お前が好きだ」

『俺、お前のこと好きなんだよ。』

なぜだろう。

あの時とかぶって見えた。



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