譲られる思い。
薬のおかげか、カノンの様子は徐々に落ち着いてきた。恐らく神経的な痛みが強くて耐えるに耐えきれず…といった状態だったのであろう。
カノンに額を当て熱がないかを確認する。
「辛くない?」と聞くと「あぁ、かなり落ち着いたよ、ありがとう。」と返事が返ってきて一安心…のはずだったのだけれど、その直後に「こりゃ片腕ダメかな。」と言っている。
確かに解毒剤はきちんと使ったし、何か他の場所でも傷を負っていたのかを聞いてみることに。
「腕?肩以外には傷が無かったけれど他に傷があるの?」と訊ねる。
すると「いや、恐らく使ってもらった解毒剤よりもゴブリン共がより強い毒素を生み出したんだろう。剣は使えても弓は無理だな…。」とカノンは自分の弓矢を見ている。
「アリス、私の弓矢を貴女に贈りたい。使ってはくれないか?」と言われ、私は「え?でも特注品のようだし、私が使いこなせるものなのかな?」と聞く。「貴女が使いこなせれば私がもっと強く立ち回れるかもしれない。背後さえ取られなければきっと大丈夫なはずさ。この片腕だって盾を持てば十分に戦うことも出来る。どうかな、貰ってくれないかな?」とまで言われたら断る理由は無い。
「カノン、ありがとう。私は貴女のことも守りたい。だから是非使わせてもらうわ。」と返事をする。
「よし、決まりだ。だいぶ体も楽になったしそろそろ行こうか。」と方向性は纏まり小屋を立つことにする。