しみったれた日
しみったれた今日。
明日も明後日もきっとそう。
ちょっとお高めの婚活パーティ、女性はドレス男性はスーツというプチドレスコード
服も髪も化粧も、バッチリだったのに結果は微妙
窓に映る私は背中が丸くなっていて、ドレスも少しずれ如何にもお疲れって一目にわかる様子
「さいあく」
小さく悪態ついてから背筋を伸ばす、私はまだ頑張れるって自分に言い聞かす
その時、急に姿勢を変えたからかしてクラリと立ちくらみがした
目の前が徐々に暗くなり、目の奥やら耳の奥やらが絞られるように痛む
まあまぁ有る事なので、焦らず脚を軽くひろげ踏ん張り、お腹に力を入れて姿勢をキープ、そうすれば乗り切れるはずだった。
ーーー
痛みが引き、目を開けるとソコは今までいた場所ではなかった。
何処かの大広間、それも中世ヨーロッパのコスプレパーティ真っ最中のようで、目の前がには古めかしい衣装で着飾った人や甲冑を着た人が階段に並んでいた
私いったいどうしたの?
何時間も立ちくらみで立ちっぱなし?
それとも夢遊病の卦でもあったの?
私はなんとも目立つ場所にいた様で、皆の視線を独り占めしている
誰も声を発さず近寄らず
もしかして、私の存在がアートや出し物として処理されてた?
なんて思いかけてたら上から声が降ってきた
「表をあげよ」
気がついたら、正面にある階段はひな壇だったようでソコには如何にも王様全とした叔父様が玉座にいらっしゃった
「其方が勇者か?」
王様からの問いかけ、彼は主催者なの?ゲスト?スタッフ?キャスト?頭の中は大混乱
いいえ
その言葉を言っていいものか
見ず知らずのパーティ、急に迷い込んだ私は段取りなんて知らないし、なんて言っていいものか
分からないので口を噤む、分からないときは分かる人に聞く
今回は前者を選択し黙りを決め込むと、王様の脇にいた人から早く答えよと声が飛んできた
周りの目が痛い、フォローも望めなさそう。
そうだよね、コスプレパーティに異物が1人って空気読めないのも程がある。
邪魔者はさっさと退場しないと、生唾のみこんで口を開く
「いいえ、違います」
私の言葉は緊張感から口が動かず思ったより小さな声しか出ず、声はくぐもっていた
壇上の2人はアイコンタクトをし、脇にいた方の人が顎をしゃくった
そうするとボーイさんが近づいてきて、お言葉をと私を促した
「いいえ、私は勇者の方ではありません」
喉はカラカラて大きく伝えようとしたのに、声は震え結局1度目と殆ど同じような声量しかでなかったが、今度はボーイさんが、私の声を大きく復唱してくれた
「うそだ!!」
その瞬間に響く怒号
「その魔法陣は勇者召喚を幾度も行ってきた魔法陣だ、流し込む魔力も十分に満ちていた!
彼女は嘘をついている、彼女は勇者だ!!」
「魔法…?」
ーーー
結果、ココは違うパーティ会場なのではなく、異なる世界だそうです。
魔法で光や水や火やらを操り、魔獣や魔物と戦うファンタジックな世界だそうです。
そのなかで、勇者となる資質を持つものを呼び出す魔法陣により、召喚された私は勇者だそうです。
私は勇者になるそうです。
皆の注目を浴びるなかで、怒鳴られながら聞き取った以上の事に眩暈を感じる
しかし、鎧を着た人たちが柄に手をかけている事、怒鳴った人とよく似た服装の人たちが密かに杖を構えている事に気づき、身の危険を感じて笑顔をつくる
「微力ながらお力になれればと」
私の言葉はボーイさんによって大きく宣言された
続く?