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第9部 ウィルガルド大陸伝奇

 ウィルガルドの町は、近づいてみると、大きな町で都市と言っても良かった。

 ルド町と言い、町が大公の治める公国であった。

 大天竜山脈を行き来する冒険商人の重要な中継ルートのひとつだった。

 とても大きな塩水の湖ルド湖に面していて、塩作りが盛んな町だった。


 3人の商人はここに自宅と本店を持っていた。

 この3人は兄妹で、定期的に冒険商人をする以外に

 ボノ兄がなめし皮の加工職人で靴も作る。カバンも作る

 ベリラがアクセサリー職人。帽子も作る。

 バリエルが仕立て屋だった。


 それぞれに夫や妻が店を切り盛りしている。


 クリスタルは3人の商人に偉く気に入られた。


 ボノ兄が言った。

「剣は神話級の剣なのに、着てる服が騎士服で少し魔力で

 防御力を付けただけの服とマントだな。

 きみが倒してくれた氷河ライオンの肉と内臓は

 この町の錬金術師が欲しがっていた素材でね、

 この旅の収益より高く売れたんだよ」


 バリエルが言った。

「氷河ライオンの頭蓋骨、骨、皮、牙、爪できみに

 良い装備を作ってあげるよ。

 時間がかかるので、また1か月くらいしたら、

 この町においで。その頃には仕上げておこう。

 きみの戦いを見れただけでもすばらしい。できた装備、

 アクセサリーは全部で金貨30枚で譲ってあげよう」


「……いま、この旅の報酬いれて金貨8枚しかない。稼がないと」


「いっそ、無料にしなさいよ」とリユが3人に言うと、


「氷河ライオンの毛皮はただで手に入れたが、

 自分たちの技術料は無料じゃあない」

 と言われた。


「無理言うなよ。リユ、仕方がない」


 ーー悪くはない話だ。けれど、とにかくあと22枚の金貨を稼がないと。

 あと、リユはとにかく良く食べる。その食費も稼がないと。


 この戦いで、「リユはけっこう役にたつな」とクリスタルは思った。


 いつのまにか、クリスタルはきっちりリユの食費を稼ぐのも

 あたりまえのように(リユの作戦にひっかかり)思い始めていた。

 とりあえず、さっきリユがせしめたつもりの真珠28粒を、

 リユが「この強盗!人殺し!」と泣き叫ぶのを無視して取り返した。


「この真珠はいくらくらいになるのかな?」


 アクセサリー職人のベリラに聞くと、


「これは魔力を帯びた真珠だね。これは良い錬金素材になるよ。

 私に金貨40枚で売らないかい?」

 クリスタルは即売った。


(しかし、ベリラがそのあと、それを28粒まとめて

 金貨100枚で錬金術師に売ったことをクリスタルは知らない)


 お金はできたので、ボノ兄に「金貨30枚全額前払いでいいか?」

 と聞いた。「いいよ」と言われたので、

 ほかの2人にも確認と承諾をとった上で

 ボノ兄に金貨30枚を前払いした。

 領収書をもらったクリスタルだった。


(この3人は親切だけど商人なので油断がならないな、と

 いう感じできっちり領収書をもらったクリスタルである)


 ーーそもそも、リユはリユで1か月後になったら、大食いのリユに「お金があるから」

 と大食いされて食費にされて絶対必要な金貨30枚が残ってない可能性があった。

 これまで母親任せ、王室騎士として王宮まかせで生きてきたクリスタルには、一人でリユを養い商人たちと付き合うのは生まれて初めての新鮮な駆け引きだった。


 リユは金髪に碧の目でくるくる巻き毛の

 可愛い7歳の女の子。美少女(中身は魔族だけど)


 妹なんぞ持ったことのない17歳のクリスタルは、

 だんだんリユに「あたしはあなたの妹なのよ」といわれるとホンワカして照れた

 リユが目をくりんと回してパチパチ瞬きして上目遣いに見られると可愛いのだ


 ピンクのふんわりスカートにピンクのチョッキに袖の膨らんだ白いブラウス、

 羊毛の手編みの真っ赤のフードの左右の紐を括らずに垂らしてる、

 白いくるぶしまでの皮のブーツ……

 洗濯して干してあった物を勝手に持ってきたらしいが


「もう少しリユの魔力をあげる装備も考えてやらないとな」

 ある程度、戦力になることを期待できそうだけど、

 ーーいつまで自分とつきあってくれるのか?、そこはわからない。

 なにせパピヨンゴブリンなんて、魔族、どんな生き物なんだ?ーー


 そっとリユを鏡に映してみると、バレバレで、

 ウサギと子熊を合わせたような紫の毛玉のモフモフの不思議な小動物

 黒いクリンとした眼をした尻尾はとげのある紫の悪魔の尻尾の魔族が映っている。


 ルド町は大きな町で町の城門があり、その通りを行くと、

 広い広場があり、そのさらに上に領主のルド女大公の住まう館があった。


 ルド女大公は50歳位で、魔法使いで錬金術師でもあるそうだ。


 この町は皇帝の治める王都ラフレシアからも遠く、

 周りは塩の多い荒れ地で、人は住んでいない。

 人が住んでるのはこの町の中だけ。

 だけどルド町の中は人口も多く、陽気な住み心地の良い田舎の都会という感じだ。


 クリスタルは、調子のいいリユのおかげで、ベリラの家に居候していた。

 リユがベリラにたいそう気に入られたからである。


 ルド町の広場に面して3軒つづきの大きな商家があった。

 下が店で、裏が庭。上が住宅である。

 右から、ボノ兄、ベリラ、弟のバリエルの家。


 ベリラはちょび髭をはやしたキザでお洒落な夫がいて

 アクセサリー屋をやっている。

 夫婦仲はとても良く焼けるくらいである

「ハニィ~♪朝食できたよ~」家事の大半は彼がしてくれる。

 商旅から帰ると、旅先で仕入れてきた石や骨、牙や色々な素材を加工して

 ベリラがアクセサリーを作る。ベリラは帽子も作っている。

 夫はそれを店で売る。店員が一人いる。

 ベリラのアクセサリーや帽子は人気である。

 魔法のアクセサリーも多くないが売ってるが、

 それにはひどいぼったくりの値段がついていた。

 10歳位の眼鏡をかけたおしゃまな娘が一人いる。


 クリスタルとリユはお店の裏から上がる階段のすぐ横の

 古いベッドが2つある空き部屋に居候させてもらった。

 ただし、部屋にいそうろうさせてくれるだけで、

 食事は自分らで外に食べに行かなければならない。


 ボノ兄の店はやりての奥さんが店を切り盛りしている。店員が二人いる

 夫の作った皮の靴やカバンを売っている。

 12歳と13歳のいたずら盛りの息子が2人いる。


 バルエルはお世辞の上手な奥さんが衣服店をやっている。店員が一人いる。

 夫の仕入れてきた絹を町の大勢の織子に渡し、絹布に織りあげてもらう。

 それを夫が紳士服や婦人服に仕立てる。お嬢様な13歳の娘が一人いる。

 魔法の服や靴も売ってるが、どれもひどいぼったくりの値段がついていた。



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