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第8部 ウィルガルド大陸伝奇

 食堂の外に出てみたが村の婦人たちはまだ大勢バーゲンセールに群がっている。

 宿の前のバーゲンセールが空く様子がないのでクリスタルは宿の中へ入ってみた。


 40代くらいの商人と思われる男女が、会話している。


 おもいきってクリスタルはその女商人に聞いて見た。

「あの、用心棒を募集してると聞いたんですが」


「うん?坊やは傭兵かな?それともただの腕自慢かな?

 私たちの隊商の用心棒志望なの?」


「あ、あの傭兵です」


 女商人が聞いた

「すごく若いようだけど、実績は?」


「あ、あのあまりありません」


 男が言った

「ベリラ、冗談言うなよ。このガキはその傭兵の従者だろう。

 おい、本人に来るように言いな」


「いや、私は武器商人もしてるからわかるけど、この子の剣はすごい剣だよ。

 たぶん国宝級の代物だと思うよ。バリエル、

 この剣が使えるなら傭兵として実力十分だね。イケメンだし(^^♪」


「おまえは、すぐ男の中身よりイケメンがどうのこうの、

 とか……全く。本当だ。すごい剣だな。

 国宝どころか神話級の剣じゃないのか?(ゴクリ)

 これきみの剣かい?盗んだんじゃないよね?」


「はい、自分の物です。ずっとこれを使ってます」


 クリスタルはモード4にして薄紫に光る妖刀ダイモスをスラリと抜くと数回軽く振った。

 手慣れた剣さばきだった。


「すごいね。喜んで、きみにお願いしたいね。」「お願いするわ」

 ベリラとバリエルはクリスタルに頼んだ。

 そのとき、派手な格好をしたおじさんが昼食を食べに宿に入ってきた。

「おねえさん、何か頼む」

 宿のおねえさんが何種類かの料理の皿を出した。

「ボノ兄さん、この子に用心棒を頼むことにしたわ」

「そうか、ベリラ、おまえが決めたんなら、それでいい。

 今のバザーで天子様の都で売れ残った商品も売り尽くしたし、

 この村で特産物の目的の絹糸も大量に仕入れた。

 強い用心棒の傭兵さえ雇えたなら、

 明日、早朝に出発しよう」


 リユが口をはさんだ。

「お給料はいくらなの?あたしはこの人の仲間で

 マネージャのリユというのよ。値段しだいね」


 ボノ兄が食べながら答えた。

「成功報酬だが、とりあえず、金貨2枚払っとこう。モグモグ。

 残りの金貨2枚は山を越えて無事に西の町に着いてからだな。

 それでいいか?」


「いいわね(^^♪」


「だれが、俺のマネージャーだって⁈」


 商人たちは、いつでも馬に荷を積み込めるように、慌ただしく準備を始めた。


 クリスタルは宿のカウンターの中年の男に聞いた。

「宿は空いてますか?」


「いまはこの商人の隊商で3部屋いっぱいだ。物置なら安くしとくよ」


 リユが口をはさんだ

「仕方ないわね。寝具は良いやつを提供するなら

 泊まってあげてもいいけど、物置なら野宿とあまり変わらないから、ねぇ」

 宿の主人は言った

「仕方ないな、物置で1人シーツ2枚、毛布1枚で銅貨20枚でどうだ?」

 クリスタルは野宿はしたくなかったので、リユの口を塞ぐと

「それでいいよ」というと、夕食まで、荷造りに忙しい商人たちを

 手伝いながら雑談した。


 朝早く、まだ暗い内にクリスタルとリユは朝食だと起こされた。

「昼飯がいつとれるかわからないから、とりあえず十分に食べといてね。

 この食事からうちの従業員あつかいで会計はこっちもちだから。

 気にせずに好きなだけ食べなさい。それと、はい、まず手付の金貨2枚」


 クリスタルはベリラから金貨2枚を渡された。


 リユが「半分はあたしの権利よ!」と小さな手を出したが無視した。


 クリスタルが聞いた

「リユも飯は好きなだけ食えるのか?」


「もちろんよ」とベリラ


「わーい(((o(*゜▽゜*)o)))」リユは喜ぶと、

 いきなり宿の料理を手当たり次第に注文して食べだした。




 朝、宿の朝食は豪華だった

 ガチョウの丸焼きが2匹、餃子が山盛りに、豚まんが20個ほど山盛り。

 ラーメンはお代わり何杯でも隊商持ち。

 リユは食えるだけ食った。

「山は寒いから」と、ボノ兄が

「古着だが、これを貸してやる」とフードのついた毛皮の外套を

 クリスタルとリユに貸してくれた。

 靴に滑り止めだといって、金属のついた紐を

 靴左右1つづつにボノ兄は丁寧に結んでくれた。

 3人の商人たちは手慣れた様子で装備を整え、

 馬の荷造りの紐の緩みがないか確認している。


「可愛い妹さんね」とベリルが言った。


「だれが妹だって?」とクリスタルが言うと


 リユが目をくりんと回してパチパチ瞬きして上目遣いに

「いいからいいから」とずうずうしい返事。


 いよいよ、大天竜山脈の走破ルートに入る。

 延々と続く山道を七頭の馬に三人の商人と使用人が二人で大量の荷物を積んで

 最も谷底の低いとこ低いとこを選んで走破して行く。

(なぜか七頭目の馬だけすごく荷物が少ない。

 クリスタルが聞くと「途中で増えるから」とのことだった)

 商人3人とクリスタルとリユが先頭のボノ兄の後ろを歩いていく。

 ルートは谷間、谷間を縫って歩いていく。

 昼頃に、小さな滝がちょろちょろと流れているところがあり、そこで昼食。

 昼飯を取り終えると、

 ボノ兄が言った。

「そろそろだな」


「1週間前、この小さな滝の先で氷河ライオンに襲われたんだよ。

 魔物の姿を見ただけで、すごい戦歴をぺらぺら自慢していた

 用心棒は、剣を抜きもせずスタコラ逃げ出したんだ、

 その用心棒を信頼していた俺たち3人は命からがら逃げだした。

 商人にとって命と同じくらいに大事な荷物と荷物を背負った馬を必死で

 守りながら村に引き返したんだよ」

 と言ってる間にそろそろ、「その場所だね。覚悟してくれ。お願いするよ」


 クリスタルは大剣をモード4にして妖刀ダイモスの力を解放した。

 ダイモスが紫色に微光を発した。

 三人の商人はその様子を見て、ぞくっ!としたようだった。


「わかってます。必ずみなさんと荷物と馬を守ります」 


 そのとき、恐ろしい冷気が吹いて気た。

 ボノ兄が叫んだ「来た!」


 目の前に、四メートルはあるかと思われる2つ頭の青いライオンが現れた。

 2つの頭の口から凄まじい冷気を噴き出している。

 しかし、その冷気はクリスタルの構える妖刀ダイモスにすべて吸われていく。


 クリスタル以外の全員がはるか後ろに逃げた。


 青色のライオンの眼が光ったかと思うと、

 2つの口を開き、牙をむき出し、クリスタルに飛びかかってきた。

 クリスタルめがけて噛みついたライオンの二つの頭の歯がカチン!カチン!と空を切った。

 クリスタルがとっさに身を低くしたからだ

 今度は四本の前足が襲い掛かったぶん!ぶん!ぶん!ぶん!空振り

 クリスタルが高く高くジャンプしたからだ

 一瞬でクリスタルは、氷河ライオンとの間合いを取ると

 剣を斜めに構えて、呼吸を整え始めた

 リユが走り寄ってクリスタルの足元に身を隠すと、すぐ魔法で援護してくれた。

 1度は怖くて逃げたけど

「ファイアー!」「スリープ」「ファイアー!」「スリープ」

 リユの果敢な魔法攻撃!

 ライオンに向けて炎の玉が何個も連続で噴き出した。

 氷河ライオンは一瞬ひるんだ。


 ライオンの隙を狙っていたクリスタルは

 振りかぶると、大剣をブン!と力いっぱい一振りし、

 返す刀で、これも渾身の力で横に振った。

 氷河ライオンの首が一つどさっと落ち、

 つづいて2個目の首がどさっと地面に転がった。

 すさまじい叫び声があがり、しばらく頭を失っ氷河ライオンは

 崖の壁に幾度もぶち当たっていたが、

 崖の一歩手前で絶命して動かなくなった。

 辺りは静かになった


 ボノ兄は「すばらしい!」とパチパチと手をたたきながら、

 クリスタルの横ににっこり笑ってやってきた。

「すごいお宝が手に入ったね。ボノ兄さん」とべリラが言う。

「さっさと済ませちまおうぜ!」バルエルが銀の短剣を抜いた。

 ボノ兄も銀の短剣を抜き、氷河ライオンを解体始めた。

 手際よくライオンの毛皮を剥ぎ、骨から肉を切り離し解体していく

 そして、七頭目の馬はあらかじめ荷物がすごく少なかったのは

 このために用意されてたようだ。

 その馬に氷河ライオンの毛皮を内側に

 塩をたくさん振りかけて荷造りして馬に乗せた。

 肉も骨も内臓もきれいに解体して塩をたくさんかけて、

 荷造りして馬に乗せた。二人の使用人も忙しく働いた。

 これで七頭とも、同じくらいの荷物になった。


 そのあとも、けっして楽ではなかった。

 山道を延々といちばん低い谷から谷を縫ってすすみ、

 とうとう十日目に最後の峠に差し掛かり、ウィルガルド側の町が見えてきた。


 町に入る前にボノ兄が言った。

「これが約束の金貨2枚だ」

 ボノ兄は氷河ライオンの頭の毛皮を何時の間にかきれいに剥製のなめし皮にしていた。


「これを頭にかぶり、顔を隠したらいい。いま戦士の間では

 こういうマスクが流行っているからね。

 とくに氷河ライオンのようなレアな

 魔物の皮は強い傭兵らしくて自然な感じだから大丈夫。

 不自然じゃないよ。これで敵の氷や冷気の攻撃はほぼ防げるからね」


 氷河ライオンの頭の剥製のなめし皮をクリスタルの頭にすっぽり、

 ボノ兄は被せてくれた。


 そのとき、クリスタルは少し眩暈がして、どさっと膝を付いた。


 ベリラが駆け寄った。

「大丈夫?」


 クリスタルは少し、口に違和感がしたが、

 自分の口が本来の身体に戻ったことに気が付いた。

 クリスタルの口が元に戻ると20個以上の真珠がポロポロと

 顔の口のあたりから落ちて地面に転がった。


「およよ。もーらいっ」リユがさっさと真珠を集めると

 自分のポケットに入れてしまった。


 ーーこの真珠はゴーレムの秘術で僕の歯に代わってたのか?







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