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第5部 ウィルガルド大陸伝奇

 クリスタルがアナスタシア王女と契ったその日の昼前、

 クリスタルはガヌロン大臣に呼び出された。

「ハピリ半島地方のピリ砦にこの手紙を届けてほしい。王命だ!至急だ!」

 ガヌロン大臣より王印の押印ついた封書を渡された

 クリスタルは自分の馬ではなく、

 早馬用の馬を乗り継いで行くことを命じられた。

 すでに各宿場駅にはのろしで知らせてあるという。

 初めての王命による早馬のお使いだったが、

 張り切ってクリスタルは出立した。


 そして同時に、とうとう悲劇は幕を開けた。

 王都ラフレシアより、馬車がやってきた。


「皇帝の勅命である!」と正装したラフレシアの宮廷官使が5人、


 ガウス・ハルモニア王の玉座の間へ帽子を被ったまま頭を高く掲げ、

 そのまま入ってきた。


「皇帝陛下の勅命である!」と叫び、


 王都の宮廷官使が皇帝の書状を読み上げる。

 王も大臣たちもすべての人がひざまずき、頭を垂れる。


「皇帝ジョー・デウス陛下の勅命である。 

 王太子アドニス・デウス殿下のお妃にアナスタシア王女を

 迎えることを陛下自身がお決めになられた。

 これは異を唱えることは許されない下知である。

 アナスタシア王女は、すみやかに、

 この馬車にて王都に同行されること!」


 王女を乗せていくという、

 その馬車は8頭立ての純金の馬車であった。

 最高の格式の馬車であった。


「おお、なんという栄誉であろうか」


 人々はささやきあったが、王は不機嫌そう。

(ガウス王はアナスタシア王女がクリスタルを

 愛していることを知っていたのだ)

 暫く、王がうつむいて返事もしないので、

 横のガヌロン大臣が、王に代わり官使に返事した。


「身に余る光栄。恐悦至極にございます」


「ささ、早く、王女を、御使いに、ご用意をさせて」


 宮廷官使は言った。

「用意は一切ご無用。王女の御身一つで来ていただくのが

 しきたりに御座います。王女をここへ今すぐお連れください」


 大臣が命令し、これからショッピングにいくつもりで、

 護衛のクリスタルを探していたアナスタシア王女は、

 大臣の命令を受けた女官たちにつかまり、


「いったいなんなの、放してよ!」

 嫌がる王女に


「光栄で栄誉なご縁談でございますのよ」


 と笑顔の6人の女官たちは力ずくで、王女を捕まえ、

 良かれと思い、力ずくで引き摺って来た。

 そして、返事もせず、下を向いたままのガウス王を尻目に、

 ガヌロン大臣と5人の宮廷官使は力ずくで王女を黄金の馬車に押し込んだ。


「きゃぁー!! これはいったい、なんなの? お父様!助けてください!!」


「あなたは王太子アドニス・デウス殿下の

 王太子妃に皇帝陛下が決定されたのです。

 これには誰も逆らうことは許されません。

 この世で最も光栄で栄誉なことなのです。

 御身の幸運を感謝なさい!」


 宮廷官使が王女にこう、言い放った。


「そんな話お断りします。嫌です! 放して!お父様!助けてください!」

 アナスタシア王女は金切り声で泣き叫んだ。


 うつむいたままのガウス王は、体ががたがた怒りで震えている。


 王は娘を救えないわが身のふがいなさを、気が狂わんばかりに耐えていた。


 泣き叫ぶアナスタシア王女を乗せたまま、そのまま、

 8頭立ての黄金の馬車は出発し、

 すごい速度で王都ラフレシアを目指した。



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