第40部
ここは王都ラフレシア
今日は、聖ヴィルガルド帝国が建国されて10年になるその盛大な祝典の日。
きょう、中央宮殿のバルコニーで聖王ジョー・デウスの国民への演説がある。
大勢の国民が中央宮殿広場に集まった。
みんな着飾っている。お酒が入っている人もいる。
「われらの聖王さま~万歳!!」とそんな声が時々聞かれる。
王都ラフレシアに住む人々は、みんな、聖王ジョー・デウスに感謝し聖王子アドニス・デウスともども愛している。
王都は美しく、人々は景気良く、健康で幸せに溢れている。
王都ラフレシアは美しく咲く花の匂う様に、いま繁栄の盛りにある。
聖王ジョー・デウスが中央宮殿のベランダに現れた。群衆の前に。
その横には聖王子アドニス・デウスと、聖王子は横に美しいが気のふれた青白い病身の母の皇后アルテミシアを支えて共にテラスの脇に姿を見せていた。
聖王は演説をした。聖王ジョー・デウスは偉大な顔を輝かせて未来を語った。
その演説の最中に、おぞましい事件が起こった。
聖王の背後にあった白大理石の裸体の青年像がいきなり石化が解けて、人間の男になり、足元に踏んで隠していた銀のナイフで、聖王ジョー・デウスを刺殺したのだ。
聖王は息絶えた。群衆は怯えた。
その裸体の青年はすぐ逃げようとした。
聖王子が捕まえようとしたが、聖王子の姿はまるで魔法にかかったように赤ん坊の姿になってしまった。
聖王子が連れていた気のふれた皇后アルテミシアがいきなり正気に返り、赤ん坊になった聖王子を抱きかかえた。
犯人の青年は口の中にルビーのペンダントを隠していた。
それを出して自分の首にかけようとしたところ、その赤いルビーからハルモニアの王女アナスタシアが現れた。アナスタシアの身体から赤い小さな玉が天へ上り、どこかへ飛んでいった。
群衆は恐れた
「あれは婚礼を挙げて直ぐに死んだと発表されたアナスタシア王太子妃だ! なんという不吉なことだ!」
アナスタシア王女は聖王を刺殺した青年に抱きついたが、周りの兵士たちが青年を捕らえ、鉄の枷をつけて鎖につないだ。兵士たちは刺殺した青年を牢獄へ連れて行こうとしたとき、
ベランダに正装した女教皇ルチアナが現れた。
「そのジョー・デウスを刺殺したを青年は特赦にする!!」と女教皇は大声で高らかに宣言した。
群衆はどよめいた。
そしてジョー・デウスがその青年に何をしてきたかをその場所ですべての人々に明らかにした。
聖王ジョー・デウスがいきなり死亡して、赤ん坊となった聖王子アドニスを側近たちは急遽、即位させた。
聖王二世として。
しかしジョー・デウスを失った聖ヴィルガルド帝国は、求心力を失い、徐々に瓦解始め、やがて王都ラフレシアは略奪の横行する荒れすさんだ町へと変貌した。
聖王ジョー・デウスのもとに統一されていたヴィルガルド大陸は、また再び戦乱の時代に戻った。




