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第30話

 真の暗闇の石造りの、人がようやく立って通れる広さの通路を先頭が人狼で僧侶のジョイ、次が戦士ハミル、盗賊ステラ、魔法使いグリシュ、戦士のクリスタルがしんがりを歩く。


「あれ?」いきなり松明を持ったジョイが消え、ハミルが声をあげた。

 すぐにハミルも消えた。

 ステラが立ち止まって、「落とし穴だわ」と声をあげる。

「おーい、無事か?」とクリスタルが足元の穴をのぞいて声をかける。

 しかし返答はなく、はるか下も暗闇だけで、ジョイの松明は見えない。

 松明がなくなり、クリスタルたちの居る場所は真っ暗闇になった。


 グリシュが指を立てて「モロ!」と言うと、グリシュの指の上に拳ぐらいの炎が現れた。

「俺は魔法使いなんで、光はだせん」と言う。

 暫く待っていたが、足元の穴から落ちた二人のは声はしない。

 もう一度クリスタルが穴に呼び掛ける。

「おーい。俺の声が聞こえたら、返事しろー!」

 しかし返事はない。グリシュが穴の中に向かって

モロ」と叫ぶと、空中に握りこぶし大の炎が現れ、そのまま穴の中に落ちて行った。

 炎は遥か下まで落ちてだんだん小さくなり、見えなくなった。

「相当深い穴だな」とグリシュ。

「どうする?」

「私達もこの穴に落ちるか、先に進むか、どっちかネ」とステラ。

「バラバラで進むのは都合が悪い。俺たちもこの穴に落ちよう」とグリシュが言った。

「よしっ!」とクリスタルが同意して、足元を見ると……

「穴が消えちゃったワ」とステラ。

 足元の穴が無くなって元の石畳に戻っている。

 クリスタルが渾身の力で、穴のあった場所を妖剣ダイモスで一撃した。

 大きな敷石が破壊されて吹き飛んだが、その下はただの岩盤で、穴の痕跡は無かった。

「落とし穴の痕跡がない……なんで?!」とクリスタル。


「……さっさと俺たちも堕ちれば良かったな」とグリシュが諦められない様子だ。

「仕方がない。先に進むとしよう」とグリシュが言った。

 グリシュが前方に魔法で炎を出して、グリシュ、ステラ、クリスタルの順で歩き始めた。

 かなり歩いて、ステラが「そろそろお腹が空いたワ」と疲れた声。

「料理人がいないんじゃ、どうしようもない」とグリシュは無表情で答える。

 三人はそのまま歩き続けた。

 ステラがとうとう、「あたし、お腹空いて、疲れてもう歩けない」と座り込んだ。

「仕方ないな」とグリシュが自分の服のポケットから、ポン!と大きなパン三個と水筒を出した。

「これでしのごう」とひとりづつに、パンを配る。

 水筒の水を少しづつ飲み、少し休むと「いいわ。歩けるワ」とステラが立ち上がった。

「じゃあ、行こう」とクリスタル。

「ジョイとハミルは生きてるのかしら?」とステラ。

「生きてるよ」とグリシュ。

「何を根拠に?」とステラが聞くが、グリシュは答えない。


 しばらく歩き続けて、また丸いホールの空間があった。

 今度はそこには8メートルはある巨大なトロルが五匹、舌なめずりをして、眼をランランと光らせて三人を待っていた。

 ホールの入り口で、「ふむ」とグリシュは言うと、「俺一人で一匹は楽に倒せるが、五匹はきつい」

「戦い必要ないじゃん」とステラ。

 ステラは自分の腰につけたポシェットから、何か薬の包みを出すと、「少し風を起こして」とグリシュに頼んだ。

 グリシュが「ベントス!」とつぶやくと、小さな風がホールの中へ吹き抜けた

 ステラは粉を振りまいた。


 暫く待つとトロルはあくびをして、ふらりとしたかと思うと五匹ともドーンと倒れて眠ってしまった。

「5匹のトロルは、毒チョウの粉でしばらく眠ったワ。忍び足で急ぎましょ」

「器用なやつだな」とグリシュ。

 三人は忍び足で、ホールを抜けて、向こう側の通路へと進んだ。

「そろそろこっちも眠らないと体がもたないな」とクリスタル。

「じゃあ、順番に一人が起きて……」とステラが言うが、グリシュが「こっちが安全でも、ジョイとハミルのほうが危険な可能性がある。あの二人の発見を最優先にしないといけない」と言う。

「でも、眠らないとこっちもヤバいぜ」とクリスタル。




 そのころ、下へ落っこちた二人は。


「いてて。相当深く落ちたな」とハミル。「さすがのグリシュさんでも、こっちの気配がつかめないと、上昇の魔法もかけれないガウなぁ」

「途中が滑り台みたいになってて、さらに、その先に落っこちたから、向こうからも穴に飛び込まないと、こっちにこれないだろ」とハミル

「穴に飛び込んで、みんなこっちに来てくれるガウかな?」とジョイ。

 暫く待ち、さらに待ったが、三人が穴に落ちてここへ来る気配はない。

「穴が塞がるとか、ここへ来れない事情ができたガウな。グリシュさんだけなら、さっさと穴へ飛び込んだろうガウけど……」とジョイ

「なんか腹減ったな。ジョイさん、食いもんないか?」

「素材はグリシュさんが持ってるから、おれは料理人なだけだから、食いもんはパンと水しかないな」

 とジョイは、腰につけた小さなポシェットからヒョイと大きな黒パン二個と水筒を出した。

 ハミルはなんと二個ともひったくると、大きな口でたちどころに食べてしまった。

「み、水、水……」と水筒もがぶ飲み。

「あれ?! 全部飲んじゃった……すまねえっ」と水筒を下に向けたが、水は空。

「ひどいガウ……」とジョイ

 松明が消えてどこかへなくなった。ので、ジョイは新しい松明を小さなポシェットからヒョイと出した。

 火打石を出すと、カチカチと器用に打ち、直ぐに火をつけた。

 辺りは非常に広い空間で、松明はついたが、周りはあまりよく見えない。

 ジョイが松明を持って、とりあえず周りの壁まで行ってみた。

 すると、周りの壁は、人がひとり通れる位の穴が無数に開いている。

「どこ行きゃいいんだ?!」とハミル

 人狼のジョイは鼻をヒクヒクさせた。

「こっちガウ」と一つの穴を選ぶと、ハミルを待たずに、中へ入って行った。

 ハミルもあわてて、ジョイの後を追う

 ジョイがつぶやいた。「グリシュさんと二人で時空の狭間の扉まで行った時より難易度高いガウ……」



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