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第29部

 一番の食いしん坊のハミル・ガウが「腹減ったなー」と言った。

「そうだね。お腹空いたね。宿屋で明け方に急いで朝ご飯を食べてすぐにダンジョンに入ったもんね」とステラも言う。

「グリシュ、そろそろ食事休憩にできないかな?」とクリスタル

「おーけー」


 松明たいまつ以外、何の明かりも無い暗黒の回廊の通路に、ジョイが小声で「ライトニング」と言った。

 小さな灯りが空中に輝いた。

 グリシュがジョイの松明たいまつを横の通路の壁近くに置くと、そのまま松明は空中に浮いている。


 料理人だというジョイがみんなに聞く

「何か食べたいものはあるガウ?」


 遠慮がちのクリスタルはしどろもどろに、「じゃあ、俺はジョイ、お前と同じ料理でいい」と言うと、


「僕は殺したばかりの血の滴るウサギの生肉ガウけど? それでいいガウ?」と


「おれ、豚の丸焼きーとアイスクリーム」


「あたしはチキンサラダーとオレンジジュース」とステラ


「俺は烏骨鶏の卵の目玉焼きとキャビアの白トリュフかけがいい。あと食後にカモミールティー」とグリシュ。


「お前、ホントに人狼のジョイと同じもの食うのか?」とグリシュが半信半疑でクリスタルに聞く。


「じゃ、じゃあ、ブイヤベースとパエリヤ?」とおそるおそる言うクリスタル。


 ジョイが笑顔で「お待ちガウ」と、いきなりグリシュが首から下げているコハクの首飾りの中に入ってしまった。


 直ぐに帆布のレジャーシートを持って出てくると、暗黒の回廊の通路の真ん中にパッ!と敷いた。


 そこには、大小の銀の皿に銀のカップ。すべてのオーダーがそのレジャーシートの上に配膳されていた。


「おおっ♪」「まあっ♪」とハミルとステラの歓声。


「すごい」とクリスタルは目を丸くする。


「お水はこちらにありますガウ」とジョイが水のいっぱい入ったガラスの大きな水差しをレジャーシートの隅に置いた。銀のコップも横に五個置いた。


「あーーお水が欲しかったワ」とステラ。「俺も、俺も」とハミル。二人で大きな水差しいっぱいの水をすべて飲んでしまった。


「じゃあ、お水の水差しのお替りを持ってきますガウ」とジョイはまたグリシュのコハクの首飾りの中へ。

「不思議ね」とステラ。


 ジョイはグリシュのコハクの首飾りから出てくると、またなみなみと水のいっぱい入った大きなガラスの水差しを帆布のレジャーシートの上に置く。

 自分も、銀の皿に置かれた、殺されたばかりの血の滴るウサギの内臓を四つん這いで犬食いしはじめた。「うめ~ガウ♪」


 グリシュは折り畳みの椅子とテーブルをどこからか出して、ナプキンを襟元につけると

 椅子に座って銀のナイフとフォークで上品に食事をしている。


 クリスタルもドッカとあぐらをかいて帆布のレジャーシートに座り、銀の皿に入った熱々のブイヤベースとパエリヤを添えられた銀のスプーンで美味しく食べた。


「さあ、食事は終わりだ」とグリシュが言うと。

 ジョイはレジャーシートを畳んで自分のポケットにしまって、またグリシュが置いた空中に浮かんでる松明を持った。


 食事の終わった五人は気分一新で、また暗闇の回廊の果てしない通路を、

 いつ現れるか分からない『時空の狭間』の扉、目指して歩き始めた。

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