第20部 女傭兵奇談前日話
リリン王子から「あの、魔物退治をついでにお願いできないでしょうか?」という言葉が出た
リリン王子「お隣の僕の母方のおじい様の治める国の話なんですが。 おじい様は60歳とまだお若くて、僕のお母さんを産んだおばあ様がお母さんを産んだときに亡くなってるんで、若い新しい二度目の王妃さまがいるんですが。 その人との間に、14歳になる息子と、17歳になる娘がいるんです。 アルト王子とレネット王女と言います」
ここで、リリン王子は執事の持ってきてくれた金のカップに入った水を飲んだ。
「その17歳になるレネット王女の部屋に、夜な夜な女の幽霊が出るそうなんですが、だれかその女の幽霊を退治していただけないでしょうか?」玉座に座り、リリン王子はおそるおそる言った。
「詳しい話は、向こうの王宮の王室執事に聞いてくださらないと分からないですが。僕もあまり詳しくは知らないので。かなり困ってるらしいので引き受けていただけませんか?」
リンダは苦笑いして「あたしらは戦争を請け負う傭兵であって、幽霊退治は専門外だね。悪いけどお断りだ」
クリスタルは「おれが引き受けるぜ」と勇ましい。
リリン王子は「ありがとう、お兄ちゃん」ととても嬉しそう。
リンダが言った「リリン王子様、他人に物を頼むときは、報酬も幾らかちゃんと言わないと、失礼なんだよ。クリスタルに引き受けさせたなら、あんた、いくら報酬を払うのさ?」
「じゃあ、ここで金貨100枚をお払いします。僕が」とリリン王子は執事に命じて金貨100枚の入った麻袋を持ってこさせて、執事がクリスタルに金貨100枚の入った麻袋を渡そうとした。
なんとクリスタルはそれを断ろうとした、が、リンダがクリスタルの手を掴み、「それはいけないよ」と首を横に振った。
執事からリンダは奪うように金貨の入った麻袋をひったくると、クリスタルに強引に受け取らせた。
「この世界にゃ、常識てもんがあるんだよ。いいカッコすんじゃないぜ。世の中の経験の浅い若造だね、にいちゃんは」とリンダはクリスタルに顔をしかめて見せた。「覚えときな!」
城の外へ出ると、城前の広場にはボロボ傭兵隊500人が待機していた。
傭兵なのでてんでに好きな格好で待機しちゃいるが、気は荒いがリンダを慕う良い部下たちだった。
その中から「よお、俺もその幽霊退治に参加しようじゃないか」と声がした。
ボロボ傭兵隊の戦士たちの中から、クリスタルの聞きなれた声がした。
「よお、六年ぶりだな。でかくなったなぁ。俺が誰かわかるか?」
クリスタル「……ハミルじゃないか?!」「あっはっは。やっぱりクリスタルだったのか。そうじゃないかと思ったんだが、人違いだったら嫌だったんで今まで黙ってたさ。あははは。会えてうれしいよ」
なんと家政婦のミルルさんの22歳の息子のハミル・ガウだった。
ハミル・ガウ「リンダ隊長、2年以上お世話になりましたが、俺はこいつと一緒に行くことにします。これまでありがとうございました」
リンダは「残念だね。また会おうよ」とあっさりとハミルの肩をポンと叩いた。
ハミルは少し涙ぐんでいる。
幽霊退治を引き受けたことで、クリスタルは、ここで親しくなったボロボ傭兵隊と別れることになった。
「リンダさん、ギニーンさん、ボロボさん。物凄くお世話になりました。本当に感謝です」とクリスタルは笑顔でボロボ傭兵隊のみんなに別れを告げた。
リユはケロッとしているが、
ハルナは幌馬車の中で少し寂しそう。
涙を浮かべて歯を食いしばってそっぽを向いている。
クリスタルはリユとハミル・ガウと隣の王国ジルバニアの幽霊退治に向かう。