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第16部 女傭兵奇談前日話

 クリスタルはガタガタという車の振動で目覚めた。

 だれかが頭を小枝で突っついてくる。

 目を開けるとリユが小枝でクリスタルの頭をつついていた。


「あ、目が覚めた」とリユが言った。


 そこは荷馬車の中だった。


 数人の人間が、

「大丈夫か」とクリスタルの顔を覗き込んでいる。


「ああ、目が覚めたのか」


 女の声がした。

「私の名前はリンダ。ここの傭兵隊長だ。

 ここはボロボ傭兵団さ。気分はどうだい? 

 きのう、弟のボロボがおまえらを谷川の流れの中で見つけて、

 私とギニーンで引き揚げたのさ」


 ギニーンという若い男が声をかけた

「よぉ、死にぞこない。息を吹き返したのか?まあ、命拾いしたなぁ」


「すいません。ありがとう。ご迷惑おかけしました」


 荷馬車の中は結構広く、リユ以外にも5歳くらいの女の子がいた。

 リユと話していたがクリスタルが起き上がると、挨拶してきた。


「私はハルナだよ。よろしくね」


 荷馬車の外は幌で見えないが、大勢の男の声と馬のいななきが聞こえる。

 ここはかなり大きな傭兵部隊の様だ。


「これから私らは攻城に行くんだよ。普通、こんな山道は人が通ることはない。

  まあ、見つけられて良かったけど、あんたらはここで暫くこの戦いが終わるまで、

  軟禁させてもらうよ。なんせ城の裏側からの奇襲なんでねぇ」


 リンダは白銀の鎧を着た細マッチョの30過ぎくらいの巨乳をナベシャツで隠してる美女だった。

 背中に大剣を装備している。女剣士の様だ。

 この若いギニーンというマッチョでイケメンの25位の男と夫婦の様だ。

 ギニーンは2頭立ての荷馬車の御者をしているのに振り返っては後ろに座っているリンダにしきりにキスをしたりボディタッチをしている。(こいつどんだけ女好きだ! 頻繁に嫁の尻を触っている!)リンダはそれを意に介さずリユと談笑している。

 リンダの膝の上で甘えているハルナという女の子は娘の様だ。


 馬車の隅で上からランプを下げその明かりの下で

 ボロボという小太りの不細工な30過ぎの男はさっきからしきりに金勘定をしていた。


「兄ちゃん、相当強そうだから、できればこっち側で助っ人してほしいけどな」

 クリスタルにボロボが言った。

「なんせ、俺が見つけてやらなけりゃ、お前らは今頃死んでたからなぁ」

 と恩着せるように言う。

「助けてやったんだから、こっちに加勢するのは浮世の義理ってもんだよなぁ」

 とボロボが言う。


 リンダが弟のボロボをなだめるように言った。

「無理に引き込んで戦わせても、顔知らないから、こっちの仲間を殺してしまいかねない。

 だから、いいよ。戦いが終わるまで、この幌馬車の中で大人しくしててくれればね。

 この馬車の中でハルナだけ守っててくれるかい?にいちゃん。

 待ってる間にこの馬車の中にある食物と水は好きなように食っていいから」


「着いたようだね。じゃあ、行くよ」「おう!」「おぅ!」


 大人3人が武装して外に出て行った。

 クリスタルは幕を開けて外を覗いてみると、500人位の兵隊たちがいた。

 みんなリンダの部下の様だ。リンダがなにかテキパキと指揮している。

 これから戦争が始まるのだ。

 少し行ったところに黒々と石の城壁がそびえて居る。ここは城の裏側らしい。

 ときの声ががあがり、戦闘が始まった。


 クリスタルは幌馬車の中で、丸1日待った。


 男の声が聞こえたので、外を見てみると、

「バルヌ閣下。この幌馬車の中にリンダの娘がいると思われます」

「よし人質に連れて逃亡しよう」

「はっ、では」

 抜刀して、5人ほどの血だらけの男たちがどかどかと幌馬車内に入ってきた。

 クリスタルはすでに呼吸を整え剣を構えていた。

 クリスタルはこれまで人間は一度も殺したことがなかった。

 できれば殺したくなかったが、世話になった恩義は返さなければならない。

 瞬時に二人の兵隊を切り捨てた。

 切られた兵隊は血を吐き倒れ肉塊となった。

 2人がリユとハルナの手をつかみ、喉もとに剣を突きつけ

「この子供の命がおしくば……」2人の兵隊が言葉を言い終わらないうちに、

 クリスタルは二人を切り捨てていた。

 5人の兵隊は外にいる髭を生やした50位のおっさん一人になった。

 そのとき、リンダとギニーン含む、30人ほどの傭兵が城から走り出てきた。

「ハルナ!、無事なの?」

「ママー、おにいちゃんが助けてくれたよ」

「おい、にーちゃん、グッドジョブだぜ。俺の娘助けてくれてありがとな」

 とギニーンが言って、バルヌ閣下と呼ばれた男を一刀のもとに切り伏せた。


「ああ、おわったおわった。まったく長引いたなあ」


「そうだねえ。みんな腹減って、てんでに持ち合わせの軽食食いながら戦ってたなあ」


 その時、バルヌ公がいきなり、ぐちゃぐちゃの死体の肉塊から内側の肉を食い破るように3メートルはあるドラゴンに変身した。

 そしてギニーンに爪で一撃を食らわせた。ギニーンは両手に装備した2本の片手剣で切りかかったがドラゴンのうろこが固く、カキーン!と跳ね返された。

 ギニーンはドラゴンの爪の一撃をまともに食らった。

「ぐはっ!」ギニーンは口から血を吐いて10メートルは離れた城壁まで吹き飛んで壁に激突した。

 クリスタルはジャンプすると、妖刀ダイモスを振りかぶり3メートルはあるドラゴンの首を一刀のもとに切り落とした。

 切り落としたドラゴンの首は、紫の禍々しい煙を出し、バルヌ公の首に戻った。


「ギニーン。大丈夫かい⁈」


「おれは丈夫だけが取りえさ。ふっ」


 ギニーンが負け惜しみをいいながら、リンダに肩を支えられてなんとか幌馬車に戻った。


 幌馬車は、クリスタルの応戦で幌が根こそぎ吹き飛んでいた。

 ささやかな家具も粉々にぶっ壊れ、

 ボロボが金をため込んでいるらしい木の箱が壊れて数百枚はあるかとおもわれる金貨が散乱していた。


 クリスタルは両方の耳に痛みを感じた。

 耳のあたりから2個の大きなヒスイが転がり出た。

 クリスタルはそれを拾うとポケットに入れた。

 クリスタルは自分の耳が本当の耳に戻ったのを感じた。




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