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第10部 ウィルガルド大陸伝奇

ベリラがルド女大公に頼まれていた魔力をこめた真珠の首飾りを納品するのに

クリスタルとリユは付いていった。その真珠はクリスタルの歯だった真珠だった。

状態変化を防御する性能=病気にかからなくなったり体調が悪くならなくなる

魔力を持つ性能があるらしい。クリスタルには驚きだった。


 女大公の館で、ベリラがルド女大公と話している。ベリラと友達のようだ。

50歳位の太ったおばさんで、陽気で気さくな人のようだ。

横に小さなおしゃれな絹の椅子に座って八歳位のおしゃまな女の子がいた。

ルド女大公の娘でレミルナ小公女と呼ばれる可愛い女の子だった。

 

 その横の立派な椅子に騎士で夫らしい60歳位の白銀の鎧を着た騎士の

おじさんがいたが少し気難しそうな人だ。おじさんは

「失礼する」と言って部屋を出て行った。


 ルド女大公はうれしそうに自分の首にその真珠の首飾りをつけた。

「さすがはベリルね。気分がよくなってきたわ」

「そうでしょう。良い出来でよかったわ」

「いつも頭痛がすると言ってるから、ママ、良かったね」

とレミルナ小公女が可愛い声で笑顔で言った。


 ルド女大公が「世間話なんだけどさ」

「ハルモニア王国はさあ、国民全員が不浄の死でアンデッドに

 なってるらしいよ。あの国も立派な王様で平和な国だったのに、

 世の中、正しい王の国があんなになるのわからないものだねえ。

 あの国にはもう生きた人間はいないらしい。

 不浄の死が原因不明なんで、王国は立ち入り禁止らしいよ。

 もし立ち入ったらその人間もアンデッドになってしまう

 可能性があるらしいんでねぇ」


ベリラが答えた「まぁ、恐ろしい話ね」


クリスタルはその話を無表情で聞いていた。


ルド女大公はまたおしゃべりした

「このまえ女教皇さまが亡くなられて、

 女教皇さまが空席なんだよねぇ。メシヤの血を引く12正統王家の

 うら若い処女の王女様たちの中から占星術師が聖処女を選ぶ儀式をして、

 聖処女を選び、女教皇さまに即位していただかなければならないのに、

 ここ だけの話だけど、なぜジョー・デウス皇帝陛下は

 その聖処女選考の儀式に反対なさるんだろうねえ?

 女教皇さまがおられない状況は異常事態だよ

 私も占星術師の一人だけれど、本当なら、星座の巡りで

 つぎの聖処女様はハルモニア王家から

 出るはずだったんだけどねぇ」


「ほんとですねえ」とベリルがあいづちをうった。


「そっちの坊やが、腕の立つ傭兵さんなのね。

 主人が明日、近所に出没する盗賊団の討伐に精鋭の兵隊を

 30人連れて行くんだけど、助っ人をお願いできないかしら」


リユが口をはさんだ。

「お給料はいくらくらい?」


「討伐が終了したら、金貨10枚払うわ。それでどう?」


「いいわ、それで手を打ちましょう」

すっかりクリスタルのマネージャー気どりだった。


 次の日の朝、クリスタルはルド女大公の夫君の騎士ペミロ公と

馬をならべて速足で駆けていた。ペミロ公はクリスタルが頭にかぶっている

マスクが氷河ライオンの毛皮であることに気づきクリスタルにびびっていた。


後ろに馬に乗った30人の青銅の鎧に鉄の槍を持った兵隊がついてくる。


 クリスタルもこれまで幾度も盗賊の討伐の経験があった。

なにせハルモニア王国騎士で元王室警護隊隊長である。


 馬の後ろにはリユが乗っている。

「こんなに堂々と正面からいって大丈夫ですか?」

とペミロ公に聞いた。


「わしに意見する気か? 若造」


「いえ……」

次の言葉を飲み込んで、クリスタルは黙ることにした。


 深い森の中の断崖の近く岩山に洞窟があった。

そこが盗賊の隠れ家だったが、

盗賊たちは逃げずにペミロ公を待ち構えていた。

 

 盗賊は40人ほどで首領は角の生えた鹿頭の魔族だった。

おそろしく足の速い男だった。

オス鹿頭の盗賊のかしらは、魔法の速足の呪文を唱えた。

自分のすばやさを上げる呪文をさらに唱えた。

盗賊にまっさきに気づいたリユが、

敵をノロノロにする呪いをかけたが、効かない。

オス鹿頭の盗賊の首領が、

ペミロ公とその30人の兵隊に「スリープ」と唱えた。

全員が馬に乗ったまま眠ってしまった。


妖刀ダイモスを持ったクリスタルにはスリープは効かなかった。


クリスタルは作戦をたてた

クリスタルはオス鹿の頭の魔族の盗賊の首領に言った。

棒読みで「すごいなあ。俺はおまえにはかなわないや。お前が優れている印に

 俺のこの聖典にでてくる妖刀ダイモスをここに置いていこう」


クリスタルはポンと紫に微光を発する呪いの妖剣ダイモスを地べたに投げ捨てると、

そのままにして一目散に逃げだした。


リユが「えええええ⁉ あんなやつにやるならあたしに頂戴‼」

と大声で喚いたが無視して逃げた。

しばらく待つ間にも、リユは怒って興奮して、

クリスタルを馬の後ろから、

足で蹴ったり、手でポカポカたたいたり、怒りまくっていた。

それも我慢して、クリスタルは暫く待った。


 少し経ってから、元の場所へ戻ると、

オス鹿頭をした魔族の盗賊の首領も部下全員も、

ぶっ倒れていた。

呪いの妖剣に触れたからである


「ざまみろ」


 ーーオス鹿頭の魔族の盗賊の首領は大喜びでダイモスを両手で

握りしめた直後に倒れた。もう死んでいた

部下たちも自分こそ神話クラスの剣ダイモスを持ち去ろうとして全員が取り合い、

ダイモスを手に握った。

クリスタルはそれを遠くから見ていてほくそ笑んだ。


 ダイモスに触れた盗賊の首領は魔族だったので

ダイモスに瘴気と魔力を吸われ、即死。

部下たちも、ダイモスに生気を吸われて倒れていた。


 クリスタルは妖刀ダイモスを拾いあげると、

全員を兵隊たちの持っていた縄を持ってきてぐるぐる巻きにした。

ねんのため盗賊の首領はペミロ公から渡された『封魔の鎖』で縛りあげた。

ーーこの鎖は錬金術師の奥さんルド女大公が造ったものだ


 ペミロ公と兵隊たちがようやく目を覚ました。

すでに盗賊はクリスタルによって縛り上げられて魔族の首領は倒されていた。


「……たいしたもんだ」


そのとき、クリスタルは眼に痛みを感じうずくまった。

両手で眼を抑えているクリスタルの手から2個のおおつぶのサファイアが

ころころと転がり出た。

リユはクリスタルが両手を顔から離さないうちに、

サファイアを2個とも拾い上げ、ポケットにしまってしまった。

「うふふふふ(^^♪」

クリスタルは自分の二つの目を取り戻した。


ルド女大公からクリスタルは金貨10枚をもらった。

が、

ルド女大公がリユのスカートのポケットを指さして聞いた、


「その魔力を持ったサファイアは、その坊やの気配がするわね」


「⁈」クリスタルはリユを見た。


クリスタルはリユを捕まえると、ポケットから2個のサファイアを取り返した。

リユは「この強盗! 人殺し!」と泣き喚いたが。


「すごいサファイアね。これに私が錬金術をほどこして、

 イヤリングにすればすごい魔力UPのアクセサリーできるわ」


それを聞いて、クリスタルはルド女大公に、

「あまりお金はないけど、

 自分の所持金全部でそれをリユの魔力UPために

 おねがいできないか」とたのんだ。


ルド女大公は、太った体をゆすりながら、楽しそうに笑って

「あなたが魔族の盗賊を倒したことを主人の手柄にしてくれるなら、

 ただでしてあげるわ」

と言ったので、クリスタルは即、承知した。


 町では、ペミロ公が見事、魔族の盗賊と40人の

無法者を倒したことが広報の兵士によって公表され

町の人々は熱狂してペミロ公の武勇を称えた。


 ルド女大公がサファイアを錬金術で加工してくれた。

それをベリラは金貨1枚でイヤリングにすることを引き受けてくれた。


 そのサファイアのイヤリングをリユが装備して、リユの魔力は各段に上がった。

おそらく魔法の成功率も上がったはずだな、とクリスタルは思った。


 リユは予想もしてなかったクリスタルからのプレゼントに半信半疑でいたが、

やがてとてもうれしそうに、可愛く、小さな声で

「ありがと」と言った。


この日、クリスタルは思い切ってルド女大公にある話をした。

その話に感銘を受けたルド女大公は、ある人物に宛てたとても大事な手紙をクリスタルに託した。






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