イセカイデバッガー
「デバッガー?」
「左様」
トラックに撥ねられかけた俺は神様に救われ仕事を頼まれた。
以上、状況説明終わり!
「デバッグって、ゲームとかでバグ取るやつ?」
「左様」
「何のバグ取り?」
「異世界」
何だこのジジイ。頭のネジ抜けてんのか。
「何だよ異世界って。あと単語で喋るのやめろ」
「剣と魔法の世界じゃよ」
「そこで、デバッグ?」
「仕様かどうか怪しいもの見つけたら、報告してくれれば良いから」
「時給は?」
「歩合制。バグ1個1万」
かくして俺は、この剣と魔法の世界へ転移した。
何でも近々本命の異世界転移をするらしく、その際に主人公が困らないためのデバッグを俺が任されたらしい。
「バグって何だ……、どうやって探すんだ」
『そこの草むら入ってみて』
「おっ、何だそれ。テレパシー? ……よっと」
[エンカウント!]
「おっ、魔物だ」
『倒してみ。管理者権限で能力上げてるから』
「よっ……。うわぁワンパンだ」
『うっわグロ』
[魔物Aを倒した!]
「ん? 何か報酬とか無いの?」
『えっ、2G貰えなかった?』
「何だGって。ねぇよそんなの」
『マジか……早速1万の出費はツライ』
「えっ、今ので良いの? ガバガバじゃねーかこの世界」
『……余計な事言わなくて良いから。その調子で探してってよ』
「こいつぁ良い小遣い稼ぎになる予感だぜ」
こうして俺の、剣と魔法と金の大冒険が始まったのだ。
「……アイスゴブリンに火属性極大魔法通んねーぞ!」
『くっそ、凡ミスだわ』
「……転移魔法使ったら真っ暗な空間に出たぞ!!」
『うっわ、座標の小数点1個ズレてた』
「……3人目のヒロイン全然落ちねーぞ! 致命的だろこれ!」
『マジで!? あっぶな……』
「……最初にお前と話してた真っ白な空間、3分くらい走ってたら背景無くなったぞ!」
『お前デバッグの才能有りすぎじゃね?』
『……ご苦労。そろそろ良いじゃろう』
「42個!! 42万の臨時収入フッフゥ~!!」
『……チッ、約束の金はお前の部屋の机に置いておく』
「お~耳揃えて払えよクソジジイ! ほらほらさっさと家に帰さんかい! またいつでもデバッグしてやるぜウハハハ!」
『…………二度と来んな』
「うぉっ、眩しっ」
「ここは……俺の部屋か!」
どうやら無事元の世界に帰還できたらしい。一瞬あのハゲに殺されたんじゃないかと焦った。
「はっ! 机の上!」
こちとらこれだけが楽しみであんなクソみたいにだだっ広い世界走り回ったんじゃ! 今夜は豪遊したるわヤッフウウゥゥ!!
「あったあった!! あのジジイ、桁誤魔化してやがったらただじゃ……」
「……G…………」
おわり♡
気付けば三夜連続で短編投稿。私は何をやっているやら。