支配ウイルス収束 遭遇
此処で第1部と繋がってきます。彼も此処で登場させて良い物か迷いました。
竹島は車を三宮のパーキングに停め、友永と共に駅へと急いだ。駅では複雑な路線に少し戸惑ったが、ポートピアに着けばどこでもよいと、市民広場まで行くことにした。丁度、空港行きが来ていたので、迷いなく二人は駆け込み乗車した。電車は意外にも混雑している。二人は辺りを見回し、感染者がいるかどうかを確認しようと全員の顔を覗き込んだ。
ゆりかもめや大阪新都市交通を思わせる奇妙なモーターとタイヤの音が心地よい程度に車内に伝わる。
「本当に速いですね、竹島さん空港と考えついて此処まで来るのに10分もかかっていませんよ。」
「気付いた場所が三宮に近いのが幸いしました。しかし、これで空港でなかった場合はさらに多くの時間を要して戻る羽目になります。」
「全く、竹島さんといると日常がギャンブルみたいですね。そう言えば、日和村でよく波多野さんを助けましたよね。」
「ああ、あれは日和村に向かう道中に例の長い名前の基地局の駐車場があるんですよ。其処に波多野さんの車が止まっている所でもしかしたら研究壕に行ったのかと考えが働いたんです。」
「それも賭けみたいなものではないですか。よく夕方に渦中の森林に踏み込みますよね。」
「それは波多野さんにも言えることですよ。あの人の勇気には本当に恐れ入りました。でもそこに波多野さんが居なくても私は其処で資料を漁る積りでしたよ。」
「全くとんでもない事ですよ。あそこは国有林ではないですか。事件の巣窟になっていたことも、貴方があそこから資料を大量に漁ったことも全て常識外ですからね。」
きつく言われる度に竹島は解っていますと返した。少し間をおいて友永は切り出した。
「もしこの島で佐伯と対峙したらどうするんですか。」
「相手は私を殺そうとするでしょう。しかし、此処は正当防衛が絶対に行使されます。当然不必要に殺せば重罪に課せられますが自分の身を守る為なら・・・これを上手く利用します。」
「因みに竹島さんは格闘技か何かなさっていましたか?」
「ははっ、愚問ですね、何を言っているんですか?先ほども言った通り武術はおろか運動など一回もやったこと無いですよ。」
「どうやって日和村で戦ったんですか?」
「それはもう見れば解るでしょう。まず、硫酸というのを思いついて、その後は13日の金曜日の物真似みたいに斧を振っていましたね。」
「本当に良くそれで戦えましたね。殺人鬼の物真似ですか。何か本気であの記録を読んだ私が馬鹿みたいです。」
「そんな言い方は止して下さい、記録を書いたのは本気なんですよ。それに友永さん。此れから何があるかなんて全く解らないんですよ。逆に言えば、今までの常識は通用しなくなるかもしれないのです。正攻法じゃないほうが良い事もあるでしょう。」
「いずれにしろ感染者に見つからずに進むのが一番ですね。」
そう言いながら友永は空いた席に座った。
「あれ、もしかして、竹島さんですか?」
友永の隣の細身の男が竹島に声を掛けた。友永の前で吊革に摑まっていた竹島は驚いてその男の顔を覗き込む。
「葉山さん、お久しぶりですね。」
普通に話しかけたが竹島はかなり動揺している。葉山の正体に記録で知っている友永も同様だ。
(因みに「どうよう」は駄洒落ではない。)
「竹島さんこそこの様な所へどうしたんですか?」
「いえ、まあその色々ありまして。此処に用事が出来たんです。」
「そこの女性は?もしかして竹島さん、彼女いたんですか。」
「まさか、からかわないで下さい。それより、人に事情を聞いておいて自分の事は話してくれないんですか。」
竹島は本題に持ち込もうと直ぐに話を切り替えた。
「ああ、それなんですがね、この島の港に屍生島で亡くなった方々の遺骨を運び込む作業が行われるんですよ。当然感染した後に殺される人も含まれています。」
「えっ、そんな事があるんですか。神戸市の広報掲示板には書かれていませんでしたよ。」
「当然でしょう。神戸市が行っている事ではないですし、あの事件の詳細はまだ誰も知らないままなんです。公にすることは出来ませんから、一部の関係者、遺族にしか知らされていません。」
竹島と友永は目を合わせた。
(間違いない。此処だ。)
ポートアイランドがあるのは埋め立て地の特徴ですよね。液状化とか起きたらどうするのかいつも考えてしまいます。これは脳の無駄遣いですので、止めておくことを推奨します。
お付き合い頂き有り難う御座いました。