支配ウイルス収束 探索
自分で書いておいて変ですが、神戸って良いですよね。とか言いつつパンデミックの舞台にしますが。
神戸市街に車が入って数分が経つが、何の異常も見られなかった。竹島は地下で事件が起こるという線を強く考え始めた。もしそうなら異変が地上に露見するまでに若干の時間を要しても変ではない。時刻は丁度正午でラッシュではないが、これくらいの時間でも利用者は意外と多い。
この場所で佐伯を迎え撃つことになれば、佐伯の手駒となり得る感染者は減らしておく方が無難である。そうでなくても市内で感染を拡大させればまずい。
「やはり、私は地下に居るのだと思います。サリンの時のように移動中の電車の中で次々と感染させればウイルスの回りも非常に速いし、効率的に事を進められる。」
「竹島さん、神戸を把握しておかなかったのは少し無計画すぎます。」
「そういわれても、あの時西日本出身の佐伯が東京って言ってくれるわけでもないでしょう。話口調で分かると思いますが、こうしてこの地方を時々訪れる私は東京人ですからね。」
「これでは、敵の巣窟に地理的条件を確認せずに乗り込む阿呆兵士ですよ。」
関西人は突っ込みがきついなと言おうとして竹島は気付いた。友永も標準語を話している。他の人もかなり標準語に近い言葉を話しているように聞こえるが、関西人はアクセントや語尾の上げ下げの加減が若干違う。友永はそれが無い。
本来、今はそのような事を話している場合ではない。神戸の中でも発生ポイントを絞り込んで其処を繰り返し巡回しなければならない。此処での目印は葉山氏が屍生島で探索をしたとき同様、赤い発疹と極端な嘔吐下痢症状、そして充血して真っ赤になった目だ。ただ此れだけでは絞り込むのがかなり難しい。もしかしたら本当の風邪でそうなってしまったのかもしれない。
しかし、その発疹は他の病魔が齎すそれらと明らかに違う。日和村で佐伯を見た時自分の目で確認した竹島にはひそかな確信があった。それでも問題がある。佐伯に出ている発疹と他の感染者に出ている発疹が異なる者であるという可能性だ。こうなったら判別の明確なポイントが無くなる。
まずは地下鉄と近鉄及びJRの運行状況と高速道路の走行状況を改めて確認する。これは問題が無かった。
次に市街地の方を車で巡回し、警察に事件の発生に関して尋ねた。本日の事故発生件数2件とあったのでまだカウントされていないだろう。もしあのウイルスが使われればこれだけで済むとは到底思えない。市街地が中心街から少し離れているので此処の戻ってくるのには時間が掛かる。そして、人口密集度は高いもののそこまでパンデミックに向いた場所ではない。
更に今日神戸で行われる行事やイベントも調べてみたが、特にこれという者は無かった。
「竹島さん、やはりこの虱潰しは余りに無謀で馬鹿馬鹿しいです。これ以上空回りしてもガソリンと体力の持久戦ですよ。」
「ふぅ~む、此処まで見つからないと逆に不安になるな。実は全員感染していて私達を監視しているとか。」
「それは有り得ませんね。全員顔が腫れていないじゃないですか。あれはやはり明確とまでは行かないにしても感染・未感染を見分ける重要なヒントです。無いなんてことは被支配の感染者にはまずないと言えます。」
その時上空を一つの轟音と影が通過した。あまりにも近い空の遠くに見えるそれはまるで天を舞う鯨のように見えた。
「そう言えば、神戸も空港が意外と近くにありま・・・ああああっ」
「何ですか。急に叫ばないで下さ・・・ああっ」
『空港だ!』
二人は声を揃えて叫んだ。通りかかった中年男性を驚かせてしまった。神戸の空港には空港に行くために鉄道で経由する大きな島(通称:ポートアイランド)があり、そこは地理的にも環境的にも感染拡大に最適な場所である。そして、そこには神戸の観光名所や主要機関がずらりと並んだビル群やポートレールと呼ばれるユニークな鉄道も存在する。大都市と言うのは感染拡大にリスクを伴うが、支配ウイルスの場合はそれが極めて低い。
「ほぼほぼ確定ですね。急いでいきましょう。竹島さん。」
「此処は車を三宮付近に停めて、ポートライナーで行きましょう。」
「何故ですか、きっともう感染は始まっている。今ここで車で飛ばせば感染を食い止められる。間に合うかもしれないんですよ。それに、車で行かなければ確実に丸腰ですよ。そしたら感染者の攻撃に対処の使用が無い。」
「いいえ、車で行っても渋滞に巻きこまれれば、結果は同じです。恐らく空港に向かう間にある小島の様な場所、ポートアイランドで事件は起こる。今から三宮に飛ばして、そこからポートレールに乗ります。」
竹島は自分の車だけは傷つけたくないという本音は一度も漏らさなかったが、友永には何となく解った。
友永も中々強いキャラクターですね。別にオッドアイであることや、嫌に可愛い事は此処では関係ないですから着目しないでください。
お付き合い頂き有り難う御座いました。