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支配ウイルス収束 解明

 煙草にして吸うというのも結構考えたんですが、よくよく考えればそのような仕掛けは他にもありますね。

「ここまでの理論が一応通っているとして、支配側感染者と被支配側感染者の違いですが、抗体をつけているかつけていない状態で一気にウイルスが侵入するかという事です。」

「抗体をつける方法があるんですか。」

「はい、それはいたってシンプルで生ワクチンと同じ原理で少しずつ投与することだそうです。」

「つまりヒ素と同じように昔から少しずつ飲むという事か。でも、感染しない程度に飲む量を増やしていくというんですか。」

「いえ、作中で竹島さんは面白い事を書いていますね。此れだと思いますよ。」

 そういうと友永は二本の指を口の手前で上下させた。成程と竹島は思った。

「煙草の中にウイルスの原液を乾燥させたものを混ぜておくか、予め染み込ませておくのです。この論文には高熱でも支配ウイルスが死滅しない事が明記されています。

「つまりこのウイルスを少しずつ習慣化して摂取して、抗体とも言える状態を手に入れたんです。それを直前まで行っているという事は佐伯はよほど念入りな性格なんでしょう。」

「でも、葉山さんの記述だと最後には感染した状態で彼らの前に姿を現しています。これは説明できますか。」

「確かにこれに至っては説明が難しいんですが、この論文にこう書かれていました。」


 そう言って彼女が用意してきた論文は全面ドイツ語である。

「私はドイツ語が出来ないから教授にお願いしたんですよ。」

「あ!ああ、此処にはこう書かれています。支配する側も命令するたびに脳に負担が出ていくため徐々に症状が現れていく。ただ、最後まで自我崩壊は現れなかった。と、この徐々に表れた症状は嘔吐や喀血、発疹でしょう。それもきっと被支配側より弱い症状と見られます。だから、佐伯は一度葉山さんの前で症状が起きて自分も被支配側になってしまったと見せかけた。そして、猟銃で脳を貫いたフリをして海に落ちたんでしょう。」

「それもパフォーマンスだったというのですか。」

「その証拠に日和村に現れたと自分で書いているじゃないですか。あれには今は説明できない見せ掛けがあったか、ウイルスそのものの身体増強作用が異常であったかのどちらかでしょう。」

「なら私は後者だと思います。」

「それはどうしてですか?」

「日和村で彼、佐伯雅孝を見た時は随分回復していました。脳に傷があったかのようには見えませんでした。これは回復の作用もあるのではないでしょうか。それに脳に受けた傷ですよ。回復したとしてもそう簡単に判断が働く状態にまで戻るでしょうか。」

 竹島の質問に少し友永は考え込んだ。


 竹島は悩む友永を見て質問を別の形式で出し直した。

「そこには疑問が残りますね。その研究資料にはにはウイルスにある回復作用に関して書かれていますか。」

「いえ、回復作用には言及されていません。だから一般的に考えて脳で打ち抜かれたのがそれほど急に回復するなんて私は考えられません。」

「まあそうですね。しかし、頭の近くに派手に猟銃を撃っても大丈夫な所なんてあるんですか。この後、海に落ちて泳いで陸に戻って傷を回復させる必要もあります。それに葉山さんは実際に血を吹きだして沈んでいく佐伯を見たって言っていますし。あれを見た笹塚さんもあれは死んだなと言って諦めたそうですよ。」

「それは結構凄い事ですよね。確かに脳の付近は急所が多い上、出血があまりに速い。難しいでしょう。ただ、一つ抜け穴のような場所があります。この頬の辺りを横向きに打ち抜くんです。」

「痛々しいですね。仮にそれが出来てこの後助かるとしても障害が残るんじゃないですか。」

「ああ、それは有り得ますね。猟銃は意外と強いから顔面も崩壊する。顔の形を上手く戻す事は出来なくなるかもしれません。しかし、竹島さんも気付いているのではないのですか?醜悪に曲がっているが、確かに佐伯と判別できるというような記述が「日和村事件」にあったじゃないですか。」

「気付いていましたか。」

「私を試していたんですか。」

 友永は少しいじけたように言った。

「いえ、ウイルスの回復作用を疑っていたことは本当ですし、打ち抜いたのが顔なんて言うのも今聞いた話ですよ。」

「教授の言うとおりの変わった人、翻訳を頼んできたのはそちらなのに嫌に雄弁ですね。」

「ご機嫌を損ねてしまいましたか。タブレットでも食べます?」

 竹島は普段から携帯しているラムネの様なノンシュガーのタブレットを出した。

「頂きます。」

 それを受け取ると2粒ケースから出した。竹島も2粒を口に放り込む。


 その時、突然研究室の扉が開く音がした。それも物凄い勢いで焦燥を感じさせるものだった。

「入る時はノッ...て教授!どうなさいましたか。」

 宝井は友永を無視して竹島に話しかけた。

「来てたか竹、早速だが、今すぐ神戸に行きなさい。」

 神戸という場所には何の心当たりも無かった竹島はそのまま聞き返した。

「何故でしょう?」

 すると宝井は胸に挟んだタブレット端末を開いて、あらかじめ用意していたであろうページを開いた。

「取り敢えずこれを見れば解るだろう。」

 何かと珈琲が愛おしくなる季節です。(投稿3月)好き嫌いは大きく分かれますが、洒落た飲み物ですよね。リアルでも小説内でも私は大好きです。

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