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支配ウイルス収束 襲撃

 今回は遂に終わりの始まりと言ったところでしょうか。

 竹島は自分の身の安全を確保し、感染者を迎え撃つために海岸の公園に移動した。今回は武器などを持っていないが、戦いやすい場所で3人という有利な状況だ。

 感染者も知能は残っているので武器などを使えるが、其処まで行動な命令は支配側の負担となる。『佐伯は未感染者を襲え』『自分についてこい』などの単純な命令しか出さないだろうというのが友永の予測だ。 友永にも佐伯の写真を見せたが、見たことがある竹島や葉山よりも認識の早さは遅いだろう。葉山も感染して発疹が現れた後の彼に少し戸惑うかもしれない。

 竹島は海岸の公園を北へ向かった。此処は元々人が集まらない場所なので、感染者も全くいない。これは感染者が未感染者を襲うために人口密度が高い場所に移動するからだろう。そして実はこの北方面こそ葉山が佐伯に指定された場所でもある。

 公園を移動するうちに北側の倉庫に突き当たった。運ばれる予定の自動車がずらりと並んでいる。

「ちょうどいいので、しばらく隠れておくことにしましょう。此処は公園よりも人口密度が低い上に障害物もあります。」

 友永はこの意見に賛成のようだった。たが、葉山は首を立てには振らなかった。

「待ってください竹島さん、それって神戸の人を見殺しにするっていう事ですよね。確かに私達は安全だ。でも、その結果、感染者を増やしてしまったら元も子もないでしょう。」

確かにそうかもしれないと竹島も一瞬考えたが、今は少人数で危険を冒す事は無いと葉山を諭した。

「ええ、しかし、ウイルスの性質も粗方解り、政府も先の二件を学習し、対応が早くなっている事と思います。今、私達が考えるべきは佐伯雅孝の処分です。それにこうも考えられます。ウイルスの性質上、佐伯さえ死ねばこのパンデミックは収束します。」

「それは少し言い過ぎではないでしょうか。支配ウイルスには脳を破壊する機能があります。佐伯が居なくなれば確かに感染者の暴走が止まるでしょう。しかし、彼等の脳はもう治りません。大量のロボトミーを生産する結果に至るでしょう。」

 葉山を説得することは難しくなった。

「友永さん、ロボトミーとは何ですか。」

 案の定、葉山が質問してしまった。

「自発的行動を促進する脳の中枢が破損し、無自覚、無制御の状態の人間の事を総称してこう呼びました。でも今の竹島さんの反応を見ると、本当は予測がついていたようですね。」

「ええ、何となく解っていました。具体的に脳の何処が破壊されていくのか貴方は教えてくれませんでした。しかし、支配ウイルスの機能を考えるとそうなるのかなと。実際の所支配側がいない被支配側はリモコンのないラジコンの様なものでしょう。」

「竹島さん、それは少し冷たすぎやしませんかね。私はこれでもあの時救えなかった生徒の事を激しく後悔しています。今でも夢に出るほどの嫌な記憶です。簡単に人の命を切り捨てる事なんてできません。」


 数秒の沈黙が3人に流れた。重い空気を裂くような声が背後から聞こえた。

「やっと...見つけた。」

 3人は一斉にその声の方を向いた。葉山にとっては良く聞き覚えのある声。竹島にも一度だけある。

「竹島、まさか葉山と揃って行動していたとはな。」

 その顔は醜く爛れているがはっきりと佐伯雅孝であると解る。細身の体躯も赤い発疹を纏うその顔も全て見覚えがある。あの薄暗い研究壕の中で。

「佐伯君。本当に君なのか...」

 葉山の震えるような声。かつての上司を醜い獣を見る目で見つめている。

「ああ、そうだよ。貴様も良くも色々言ってくれたな。お蔭で俺の計画は全て台無しだ。俺の努力や支配も全部お前がチクったその竹島とかいう世話好きな他人に潰されようとしている。折角全部の証人になってもらうためにお前だけ生かしておいたって言うのに仇で返しやがった。」

 佐伯は剥がれて醜く腫れた口でそう叫んだ。竹島は表情一つ変えずに返した。

「葉山さんの功績に感謝したいと思います。これで議論の必要も無くなりました。此処で貴方を殺せば全て解決します。貴方をここで殺せばあの島や元凶の眠る村で亡くなった人達に顔向け出来ますね。もういいでしょう。支配ウイルスを開発した仲間さえも殺し、自分だけで抗体を手に入れて此処まで世間を狂わせた。貴方の野望はもう十分達成されました。」

「黙れぇ、この糞ジャーナリスト気取りが。貴様が俺の全てを壊した。此処でお前も葉山もついでに俺を見た其処の女も殺してやる。情報を知っている人間をまとめて処分するために此処に態々招待してやったんだ。有り難く思えよ。」

 佐伯は如何にも悪臭い台詞を撒いて竹島に睨みを利かせた。

「それは逆に言えば私達は貴方を殺すために此処に集まることが出来たという事でしょう。祝うべきですよ。此処で元凶たる貴方はその天敵たる私を対峙することが出来たんです。有り難うございます。」

 竹島はこんな時でも態と嫌味臭く返すのを忘れなかった。

 

 お付き合い頂き有り難う御座いました。

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