理沙 跳ねる鼓動は
いよいよ、明日か。
荷物もまとめて、明日早起きするために早めに布団に入ったけど、全然眠れない。
明日の今頃は何してるのかな。
もしかしたら、由実と一緒のお布団で寝たり、みんなで遊んだりするのかな。日常が変わるだけでもどきどきするのに、普段一緒に学校生活を送るみんなとの距離が、そのときだけ、変わる。うまく思い浮かばない日々。そうなると分かるだけで、頭が冴えてしまう。
携帯を取り出して、電話帳の中にある由実のページを開く。
そのまま呼び出しボタンを押すか押さないかで迷う。時間はそろそろ十一時。もう寝てるかな。それとも、まだ寝れてないのかな。
一回だけ。そう決心して電話する。呼び出し音が一回、二回。もうあきらめようとしたときに、聞こえた電話越しの声。
『もしもし、……理紗?』
学校で聞く声よりも、ちょっと眠そうな由実の声。
「由実……、ごめん、起こしちゃった?」
『ううん?私も理沙にかけようとしてたの』
なんでだろう、きゅん、って、心がときめいた。
「よかったー、迷惑じゃないかって心配だったんだ。おやすみ、また明日ね」
『あー、待って、理沙』
どうしよう、うさぎみたいに心臓が跳ね上がる。
「な、何?」
『あのね、もし良かったら、……なんだけど』
空港に一緒に行かない?その一言で、わたしのドキドキはさらに速くなった。
「うん、いいよ」
それだけを言うので精一杯だった。それ以上言うと、本当に「好き」って言ってしまいそうで。
『よかった~。時間どうする』」
「うーん、一旦切っていい?調べてからラインで送るね」
『うん、待ってるね』
向こうから切れた電話。よかった。真っ赤な顔は見られてない。
「いつくらいに空港着きたい?」と送ると、既読がすぐに付く。あ、見てくれてるんだ、と舞い上がっていると、「8時半くらいかな」と返ってくる。集合時間は9時。本当に由実らしいな、と思わず笑顔になる。
地図アプリを検索して、空港のすぐ近くの駅に、8時25分に着くようなルートを調べる。由実は朝弱そうだから、できれば出発が遅いほうがいいな、と結果を遅く出られる順にセットする。由実の最寄り駅を出発地にして、検索をかける。一番上に出た結果を由実とのトークに送る。また一瞬で既読がついて、「ありがとー^0^」「おやすみ!」と、あっという間に戻ってくる。「おやすみ、また明日ね」と返すと、もう返事は来なかった。
布団に潜っても、由実の声を聞いたときのドキドキはなかなか治まらなかった。余計に眠れなくなっちゃったな、と自然に苦笑いが出た。
感 想 く だ さ い 。