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由実 溶けて混じる想い

 登校日だということが頭から抜け落ちていて、起きたらもう学校に遅刻する寸前だった。寝間着を脱ぎ散らかして、制服にいそいそと着替える。ご飯は省略して、いそいそと学校に向かう。

 最寄駅まで10分のところを5分で間に合わせ、ホームに降りてちょうど滑り込んだ電車に乗る。顔中から溢れる汗をワイシャツの袖で拭う。目的の駅に着いてまもなく、今までで一番本気で走った。腕時計をちらちらと見る。あと8分。走ればギリギリ間に合うかもしれない。

 教室に滑り込んだ瞬間にチャイムが鳴った。ガララッと思ったよりうるさくトアが動いた。急いで席につくわたしを見るクラスメイトの中に、

「由実、おはよ」

 ものすごく久々に会う、理沙の声は笑っているときのだった。

「うん、おはよ」

 鞄からタオルを取り出して首に巻きながら、久しぶりに理紗と他愛も無い話をする。まるでまだ「友達」だったときみたいに。

 走ってきたからか、胸がどきどきする。体が熱い。

 でも、わたしの心にいる理紗はどんどん大きくなっていって、理紗に恋していることに気がついた。


 蒸し暑い体育館で、旅行会社の人の話は耳に入らない。説明の前のときに配られたしおりを見ると、班も泊まる部屋も理紗と一緒だった。そんなことはすっかり記憶からなくなっていた。そういうのを決めたのは期末試験の前だたら3ヵ月近く前のことだったし、そのときもずっと理紗のことばかり考えていたから。行ったことのない場所で、理紗と一緒に動いて、同じ部屋でお泊りする。想像するだけで、頭が溶けちゃいそうだし、思考は勝手いに未来に飛んでいって、夢みたいな妄想をいくつも生み出しては消えていく。


「楽しみだねー!」

 説明会が終わって昇降口に向かう途中、理紗から声をかけられる。

「うん、わたし沖縄行くの初めてだから余計に楽しみだよ~」

 本当は、理紗と一緒に行くのが一番楽しみなんだけど。さすがにそんな事、―――告白してるみたいだもの。手紙ならともかく、自分の口で言うなんて。考えただけで顔中真っ赤になりそうどよ。

「うちもちっちゃい時の一回きりだし、すっごく楽しみ!」

 早く来ないかな、と言う理沙に、

「でも、その前に夏休み終わっちゃうよ?」

 と言うと、「あー、宿題やんなきゃ!」と頭をかかえる。そんな理紗が、なんかかわいい、と思う。

「何残ってるの?」

「英語と古典……」

 並べられた教科は、理紗のほうが得意な教科。数学とかだったら教えられたのにな。

「なら大丈夫だよ!私も残ってるし」

「よかったー!理紗もう終わらせてそうだったし」

「お互いがんばろう!」

「うん!」

 話は修学旅行の話に戻って、したいこととかいっぱい話した。砂に埋まってみたいとか、ホテルのご飯いっぱい食べたいとか。でも、わたしが一番したい事は、どうしても言えないまま、ホームで別れる。わたしと理紗が乗る電車は逆方向。でも、電車が来る前に、一つだけ、聞きたいことがある。

「ねえ、理紗」

「ん?」

「何か……、靴箱に手紙、入ってなかった?」

「あー、夏休み前にあったけど、名前がなかったんだよねー……、それがどうかした?」

「いや、それを入れてるとこみたいなの見えて」

 慌ててごまかす。よかった、嫌われたわけじゃなかったんだ。

「へー、誰からかなわかる?」

「ぎゃ、逆光でよく見えなかったんだ……」

「そう?そんな気にしなくてもいいよ」

 ――何とかごまかせた。気がする。ちょうど、理紗の乗る電車がホームに止まった。

「じゃあ、またね」

「またね、由実」

 なぜだか、無性に寂しくなったけど、砕けたと思っていた恋心は、まだ繋ぎとめられていた。それが、とっても嬉しい。

 爽やかな空に、蝉がまるで陽を喜ぶように鳴いていた。

こっちももう一顧のほうも感想書いていいんだよ?むしろ書いてください(懇願)

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