理沙 手の温もりは
いちゃいちゃが本番だと思う今日この頃
海に行ったことが久しぶりすぎて、今こんなに胸の奥が痛いくらいどきどきしてるのが、海に来たからか、隣に由実がいるからかわからない。
着替えて、その上にウウェットスーツを着る。それに袖を通していると、
「ねぇ、わたし眼鏡ないと見づらいんだ……。それにみんな同じ服だからわかんなくなっちゃう……」
と、眼鏡を取った由実がおそるおそる言う。
「うちがずっと手、繋いでるから」
由実の顔が赤くなる。私も顔中熱くて、多分二人とも真っ赤だ。
「え、……いいの?」
「さっきまで、ずっと繋いでたじゃん」
赤い顔を見られたくなくて、ちょっとうつむきながら言うと、由実の顔はますます真っ赤になって、そんなところがかわいくてかわいくてしょうがない。
着替え終わって、荷物をしまっていると、由実が髪を後ろで結んで、ポニーテールにしていた。普段のまっすぐに下ろした髪型よりも、由実の丸っこくてかわいい顔に、すごく似合っている。
「髪結ぶなんて珍しいねー」
「だって、結ばないと髪型変になっちゃうし」
なぜかまだ顔が赤い由実に、ちょっといたずらしたくなった。
「そっちのほうがかわいいよ」
さりげなく、みたいに言うと、急に俯いて顔を手で隠す由実。――その隙間から、さくらんぼみたいに顔中赤くなった肌の色。
悪いな、とは思いつつ、あまりにもかわいくて、何かしそうになるのをこらえるので必死だった。
最初に自由時間で、由実と一緒に「やってみたいこと」を、いっぱいした。
砂はけっこう柔らかくて、入れそうなくらいの穴がすぐに掘れた。由実にそこに寝転がってもらって、そこに砂を集めて埋める。出てる顔から、「わぁ、あったかーい!」って言う由実は、きらきらと輝いているように見える。
由実を砂から出して、海の中に入ろうとする。海の中に入って数歩。腰のあたりまで浸かる。握った由実の手がほどけて、さっきまでとは違う繋ぎ方をされる。指を絡められて、―――恋人つなぎ。そう気づくと、顔が火照って、水の中に顔をつけても全然治らない。
「ごめん、なんか恥ずかしいよぉ……」
これ以上は耐えられそうになくて白旗を上げると、
「いいよ、じゃあ、やめにする?」
と、意外にあっさりと返してきて、指を離そうとする。でも、なんでか、離したくないと思うわたしもいて。
「このままでも、いいよ」
と指にちょっと力を入れる。繋がったままの手の温もりは、水に浸かってても温かい。
「もう、『友達』じゃないもんね」
ようやく答えを見つける。由実の顔が、ぱぁっと明るくなる。反対の手も絡められて、真正面に来る由実の顔。
「理紗、大好きっ」
体中が溶けてしまいそうなくらい熱い。由実が、わたしの『恋人』になってから、由実のことがたまらなく愛おしくてたまらない。由実のことをいっぱい知って、それでもまだ全然足りないと思うくらい、由実に溺れてる。
バナナボートの順番が来て、由実の後ろに乗る。進み出すと、思ったより速い。ジェットコースターみたいな感じで、つい叫びたくなる。蛇行とか急カーブがあって、風がごうごうと打ちつけるけど、みんな海に落とされるとかはなく無事に終わった。
ボートを降りてから、「恐かったよぉ~!」と抱きつかれる。半泣きの由実の頭をそっと撫でる。落ち着いたと思って、手を離すと、「こっち来て」とわたしの手を握って海の奥のほうに行く。そろそろ足が着かなくなりそうなところで、人はほとんどいない。
由実の顔が近づいて、――あ、目閉じた。海の中にいて冷えそうなのに、抱き合った体はお互いを温めあう。重なったくちびるがそっと離れても、体は触れたままで。
「理紗……、あったかい……」
さっきより心なしか赤くなった頬。
「よかった。海の中ずっといると、寒いもんね」
「うん、だから嬉しい」
私の心が、溶けていく。由実が、優しく包み込んで、あたためてくれるから。もう、由実が離れてしまうのが、耐えられないと感じる私がいる。
「そろそろ戻ろ?シュノーケリングの順番来ちゃうし」
「そ、そうだね」
恋人つなぎにも、けっこう慣れてきた、きがする。これからも、ずっとずっと由実との思い出を積み重ねていきたいな。
いっぱい感想やブクマをもらって嬉しい限りです
でもまだまだ感想募集してます。お願いします。




