理沙 きみのぬくもり
ようやくくっついたと思ったらこれだよ!
今作もブクマ二桁ですありがとうございます。
腕の中で、すやすやと寝息を立てている由実。さっきよりもちょっと温かくなった気がする。その温もりをずっと感じていたくて、ベッドの上に寝かして、その横に私も寝転がる。そのまま由実の体を抱き寄せる。ふわふわで、そばにいるだけで落ち着くけれど、胸の奥がきゅって痛む、不思議な感じ。
「ん……理紗……?」
胸元にいる由実は寝顔のままで、見とれるくらいかわいい。とっつきにくいだけで、笑うときとかすごくかわいい。由実がそんなとこを見せる相手が、私だけなのが、体が浮かびそうなくらい嬉しい。夢の中でも私を想ってくれるところも。由実のことを知れば知るほど、かわいくて、大事にしたくて、もっと知りたいと思う。
不意に、背中に手がかけられる。柔らかい温もりは、陽だまりのように私を優しく包みこむ。由実の肌から香る甘いにおいは、目をつぶっていてもそばにいるって教えてくれる。
由実、あったかい。気がつくともう何かに引っ張られるみたいに夢の世界にいた。空の上で、妖精みたいに空を飛ぶ由実と私。鳥の上に乗っかったり、雲の絨毯の上でおひるねしたり。どこまでも飛んで行けて、いつも一緒にいられた。由実を追いかけたり、追いかけられたり、手をつないで一緒に飛んだり。いつまでも笑っていられる気がした。ぴぴぴぴ、と携帯のアラームが私を現実に呼び戻すまで。
朝練があるから行かなきゃ。アラームも止められない。けど、もうちょっとあったまりたい。結局、由実のことをそっと撫でて、自分を納得させる。由実の髪はさらさらで、手櫛ですいてもすっと通った。そろそろ行かないと、時間に遅れてしまう。
「行ってくるね」
と耳元で囁いて、いそいそと着替えて部屋を出る。外の集合場所に着いたのは時間ギリギリで、大体の人がアップを始めていた。全員ついたところで、ホテルの建物の周りを5周したら各自で解散という説明がされる。一通りストレッチをしたと思ったところで集合がかかり、いよいよスタートだ。
息が苦しい。足が重い。それでも走っていられるのは由実のためで、それ以外は頭の中から放り出されていた。タイムキーパーをしている顧問の先生の横を通り過ぎて、「あと一周」と声をかけられる。長距離はそんなに得意じゃない。他の部活のと思わしき人も、どんどんと少なくなってきている。最後の角を曲がって、先生の姿がぼんやりと揺れる。フラフラになりながらなんとか走りきって、その場にへたりこんだ。
息が整ってきて、クールダウンをして、ホテルの入り口に駆け込む。エレベーターホールに来て、ちょうど着いた方に乗り込む。自分の部屋の階はもう押されているのを確認して、収まった鼓動がまた早くなるのを感じる。
飛び出そうになる心臓を飲み込みながら、部屋へ向かう。ドアを開けると、何も聞こえない。由実も、奈緒さんも、まだ眠っているみたいだ。
すぅすぅと、魂が飛んでいったみたいに眠っている由実。もう、たまらなく愛おしい。眼鏡をかけてない由実は、もっとかわいい。だから、きっと、「魔が差した」んだろうか。由実のぷにぷにとしていそうなほっぺに、そっと口づける。マシュマロみたいに柔らかくて、温もりが気持ちいい。
触れたいだけ触れて、そっとくちびるを離すと、由実と目が合ってしまった。あっと言う間に顔中が熱くなる。多分、昨日見た由実くらい真っ赤になってるかもしれない。
「理紗……、おはよ」
「お、おはよう、由実」
傍らに置いてあった眼鏡をかけて、由実は、私の方に顔を近づける。――くちびるに触れた温もりは由実のもので。温もりが離れる。気が付いたら抱きしめられていて、耳元でささやかれる。
「あのね、……理紗が『好き』って言ってくれたの……、すっごく、嬉しかったんだ」
少しずつ紡がれる由実の言葉で、舞い上がれそうになる。耳にかかる息がくすぐったい。お返しとばかりに、由実の耳元で言う。
「由実……、お願いがあるの」
「何?」
頭の中で、昨日からずっと言おうとした言葉。それを言うのは、すごく勇気が要った。でも、――由実にもっと近づきたいという思いが勝った。
「あのね……、付き合って、くれる……?」
顔から火が出そうなくらい熱くて、由実も耳まで赤くなってて。
「……い、いいよ」
時間が無限に引き延ばされたような感覚の中で、ようやく聞けた答え。由実を抱きしめた両腕が、さらにきつくなる。もういっそ、もう戻れなくなりたい。「友達」の、もっともっと向こう側に行って。
「じゃあ、デート……、しない?」
抱き合って、真っ赤になった顔なんて見られない。だから言える。心の奥底から近づいて、触れていられる。
「い、いつ……?」
「……今日……っ」
もう、今すぐにでも、由実と一緒になりたくて、言ってしまった一言。もう、後には引けない。胸の奥が痛いくらい苦しくて。
「うん、……デート、しよっか」
言われた途端、体が、浮いているような気がした。ただ、由実の温もりと、跳ねる鼓動だけが体に伝わるみたいで。
起床時間になって、由実の携帯から、目覚ましがけたましく鳴るまで、お互いの体温をずっと感じていた。
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