理沙 沸き立つ衝動
掲載順ミスのため急きょ2話投稿に。
今日が誕生日なので許してください。
「ねえ、早速着ちゃう?」
ビニールに入った空色のTシャツを抱きかかえながら、スキップしそうなくらい上機嫌だ。わたしとおそろいのを買えたから……だといいな。
「ねぇねぇ、これかわいくない?」
と由実がシャツが密林みたいに並べられているところから引っ張り出してきたのは、南国の生き物たちのキャラがいっぱいでかわいいデザインのものだった。
「おぉ、かわいい!」
「でしょ?これ買っちゃおうかなー」
同じものは無いかな、とその近くを探す。ちょうど同じ色のものがあり、かかっていたハンガーごと取ると、デザインもちょうど一緒だった。サイズもピッタリだ。
「ねえ、似合う?」
とそのシャツをあてがう由実。
「うん!すっごく似合ってるよ!」
何でだろう。今まで見た中で一番かわいい。上機嫌でテンションが上がっている由実につられるかのようにはしゃいでいた。
「よかったー。じゃあこれ買おーっと」
「あーっ、待って。うちもこれ似合う?」
と急いで着ているように由実とおそろいのものを体に合わす。
「理紗もかわいーよ!」
と言われて、ちょっとほっとする。お揃いって、ちょっと恥ずかしいけど、それの何倍も嬉しい。
「じゃあうちもこれにするー」
「うん、そうしよ!」
自然とこぼれた笑顔は、きっと、もっと由実とつながっていられたから。
歩くのはちょっとゆっくりめに、エレベーターホールまで向かう。2基しかないエレベーターはなかなか来なくて、でもその間にいっぱい話せる。
「明日海行くでしょ、その時とかは?」
「えー、でも恥ずかしいよぉ……」
お揃いのを買ったからもう今更なんだけど、いざ二人で同じものを着てるのを想像すると、――やっぱりドキドキする。
「それに、服混ざっちゃうかもしれないし……」
「そうだね……」
うーん、と頭を抱える由実。ちょうどエレベーターがやって来て、乗り込む。わたしたちだけかと思ったら、もう四,五人乗ってきた。二人だけだったら、もっといっぱいお話しできたのにな。
ちょっと狭いエレベーターの中で、由実と手が触れた。さっき勢いで握ってしまった手首の感触を思い出してしまう。やわらかくて、あったかかったなぁ……、なんて、何を考えてるんだろうと頭から振り払うように首を振る。
そんなことばっかり考えてたら、わたしの心臓がもたないんだもの。ランニングをした後みたいに、胸の奥がズキズキして。
もっと、由実に触れてたい。不意に、沸いてしまった衝動。
二人きりというわけじゃない密室で、それをこらえるのに必死だった。
感想が物書きにとっての最大のプレゼントです。(テキトー)




