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理沙 きっかけは

書いてネット投稿するでもなくため込んでた百合小説です。

この二人で番外編合わせて4万文字くらいは書いたかな・・・・(遠い目)

 そろそろ梅雨も終わりの兆しを見せて、もう夏休みを迎えるだけになった心も天気も晴れ上がる日。

 バレー部の練習も終わって、帰ろうと外を見ると、まだ夕焼けの赤い空。もうそろそろ高校生活も折り返し地点だ。他の部の仲間とは靴箱が離れているから、いつもみたいに小走りになる。自分の出席番号の書かれたロッカーを開ける。2段になっている箱の上の段に、ちょこんと乗っている真っ白な便箋。黄色い星のシールで封をされたそれには、「合田理紗さんへ」と、丸っこい文字で書かれている。自分の名前が書かれているから私に宛てたものなのだろうが、差出人の名前がない。

「おーい、理紗―!」

「あ、待ってて、すぐ行く!」

と、慌てて前にいる仲間のもとに向かう。白い便箋は制服のポケットに突っ込んでおく。どうせ家までは中身は見れないし、気の合う友達とバカ話に花を咲かす。

でも、いつもと何かが違う。あれ?女同士の話は流れが速いのはいつものことだけど、いつの間にか置いていかれそうになる。さっきまで、何話してたっけ……?

 惰性で改札に定期をタッチして、ホームに入るが、頭の中はあの手紙でいっぱいになって、とてもじゃないけど考えを振り払うことができない。誰からなんだろう。何が書いてあるんだろう。揺れる電車の中で、思いも揺れる。

「理紗、降りるんでしょ?」

車掌さんがアナウンスする駅名は、いつも私が降りるところのであった。

「う、うん、ありがと」

慌てて仲間に礼をいう、あの調子だと、きっと降り損ねて終点まで行っていたかもしれない。

「どうしたの?そんなぼーっとして」

という声を適当にかわして、ちょうど開いたドアに逃げ込む。

「じゃあねー」

「また明日―」

挨拶に手を上げて答えて、階段に向かうほんのちょっとの間にも、あの手紙が脳裏に焼きついて離れない。ほんの薄い便箋の中の、きっと数枚ほどの手紙は、中身なんてものを見せなくても、こんなにも私の頭を焦がしていく。何が書かれているんだろうと、家路を急いだ。

 家につくと、もうテーブルの上にある何枚もの皿から湯気が立ち上っている。

「おかえり。もうご飯できてるよ」

「ただいま。すぐ行くね」

と2階の部屋に鞄と例の手紙を置く。部屋着に着替える事も考えたがお腹が鳴ったので急いでリビングに戻る。

 普段は部活のこととかも話すのに、今日は早く食べ終わりたくて、家族にもテレビにも目がいかない。どうした、という父の疑問に明日までの宿題があるから、と返す。――まあ、確かに宿題だよね?「この手紙の意図と目的と、それについての考えを答えよ」っていう。提出する相手もわからないけれど。

 食べ終わって、部屋に向かう。電気をつけ、窓から外を眺める。そろそろカーテンを閉めないと中が見えてしまう暗さで、すぐにカーテンを引く。レールを滑る音が耳に気持ちいい。制服をハンガーにかけて、部屋着に着替える。その時間ですらもったいないと感じる。

 机に向かって、置いておいた手紙に目を合わす。留めているシールをはがすと、中から白い手紙が二枚、顔を出した。

 一通り中身を読んでみる。丸っこい文字で書かれた中に、差出人の名前はない。でも、ある一つの文が、私の心に飛び込んで、深く深く打たれた。

「理紗さんのことが、好きです」

身体中が熱くなって止まらない。頭の中が大地震でも起きたみたいにぐしゃぐしゃになってしまう。「好き」というたった二文字で、胸がきゅっと苦しくなる。でも、この気持ちを誰にぶつければいいのか、全然わからない。その後は、何もかも上の空になってた気がする。気がついたらもう寝る時間で、パジャマ代わりのTシャツを着ていた。

 あの人だったらいいな、と思う人と、字がちょっと似ていた。

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