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みぃちゃんと僕  作者: みどりちゃん
第一章 みぃちゃんとぼく
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2話 みぃちゃんと楽しい人生

 家に帰って夕食を食べている時、僕はみぃちゃんに言おうと思っていたことを思い出した。今まですっかり忘れていて、結局、ドンジャラやクローバー畑で遊んでから何も伝えずに帰ってきたのだった。

 みぃちゃんに人生の裏テクニックを伝えに行ったのに、伝える代わりに、人生についてみぃちゃんに語られたのだった。


 おいしいギョーザを食べながら、そんな風に考えていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。

 「僕が出てくるよ。」

 玄関まで走って行くと、僕はドアを開ける。ドアスコープは背が届かなくて見られないから、ドアチェーンが防犯の要だ。僕にとって。

 ドアの先にはみぃちゃんが笑って立っていた。

 「ねぇ、夕飯、一緒に食べさせてよ。」

 とみぃちゃんは言う。いいよ、と僕が言うより先に、もうみぃちゃんは台所を横切り、テーブルの前に座っている。父も母も楽しそうにみぃちゃんと挨拶をして、おかずを分けてあげている。僕のお皿からも。

 あんな風に入ってくるなんて厚顔無恥っていうものの見本だな。それにしても、どこが引きこもりなんだろうか。まさか、日本に引きこもってる、なんて言わないよね、みぃちゃん。

 

 「みぃちゃん、ギョーザおいしいね。」

 そうだね、おいしいね。と、みぃちゃんは笑っている。またどきどきする。トレーナーのマリリンのせいだろうか。いや、やっぱりみぃちゃんの笑った顔の仕業だ。ちょっと、水を飲んで落ち着こう。

 「ねぇ、みぃちゃん。楽しくないことを思い出しながらね、『楽しい人生を送ってきました。愉快な人生でした。夢のような最高の人生。人生万歳!』って言うと、いろんなことがおもしろいことのように思えてくるんだよ。とっても素晴らしいと思うんだ。みぃちゃんはどう思う。」

 ふーん、ちょっとやってみるよ。そう言うとみぃちゃんは唐突に歌い始めた。

 「楽しい人生、愉快な人生、

  引きこもって、誰にも会わない、

  おもしろいな、楽しいな。

  外に出ても、誰も知らない。

  愉快だな、滑稽だな。」

 歌が終わってから、みぃちゃんは一言、わかる気がする。と言って席を立った。お風呂も借りる気でいるようだ。湯船にお湯を入れ始めた。


 僕が食後のミルクティーを飲んでいると、お風呂場から歌声が響いてきた。

 「楽しい人生、愉快な人生、

  引きこもって、誰にも会わない、

  おもしろいな、楽しいな。

  外に出ても、誰も知らない。

  愉快だな、滑稽だな。」

 

 みぃちゃんがかわいい声で歌っている。

 「社会からも引きこもり、

  自分からも引きこもる。

  自宅からも引きこもり、

  夢の中でも引きこもる。

  楽しいな、幸せだ。」

 新しい歌詞が聞こえてきた。だんだん長くアレンジされていってるみたいだ。

 やっぱり、みぃちゃんはおもしろくて魅力的だと僕は思った。そして、僕はずっと、みぃちゃんの歌声を聴いていた。

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