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序章2

放課後になり、式と榊はミステリー研究会の部室に向かった。


「部室はどこにあるの?」

「第二校舎の2階にあります」


この学校では、普通教室や特別教室、図書室など学校に備わっている基本的な施設は第一校舎という場所にあり、部室や倉庫などは第二校舎という場所にある。


「前から思ってたんだけどさ、完全学力主義って学校教育法とかに触れないのかな?」

「さあ……。私たちが気にしても仕方ないと思いますけど」


そんなことを話しているうちに、部室にたどり着いた。


「ここですね」

「とりあえず、入ってみようか」


式はドアにノックした。


「失礼します」

「失礼します」


二人は部室に入った。


「おや?誰かな?」


中から男の声が聞こえた。

背が高い男だ。180cm以上あるだろう。


「初めまして。私は榊刹那と申します。学年は一年です」

「俺は式十四郎っていいます。同じく一年です」


二人は自己紹介をした。


「私たちはこのポスターを見て合宿に参加してみたいな、と思い部室に来たのですが……」

「ああ、合宿参加申し込みか!」


男はうれしそうに言った。


「いやーよかったよ、もしかしたら新入部員が一人もこないんじゃないか、と思ってたんだ」

「私たち以外の新規参加者はいないのですか?」

「ああ。全くこないんだ」


式は部屋を見渡した。部室にはこの男一人しかいなかった。


「他に部員とかいないんですか?」

「いるよ。といっても俺を含めて5人しかいないけど」


ミステリー研究部ではなく、ミステリー研究会という名前からして同好会だろうとは思っていたが、やっぱり少ないんだな、と式は思った。


「たしか、部への昇格は10人以上でしたよね?」

「そうだよ。でも、俺はにぎやかなのはあまり好きではなくてね。部に昇格しなくてもいいって思ってるんだ」


にぎやかなのは好きじゃない、という気持ちには式も同感だ。


「まあとにかく、座ってくれよ。合宿についていろいろ話しておきたいこともあるしさ」


そういって男は式と榊を椅子に座らせた。


「ところで、私たちはまだあなたの名前を知らないのですが……」

「まだいってなかったっけ?俺の名前は神藤圭介。ミステリー研究会の会長で三年だよ」


と神藤は軽く自己紹介をした。


「さて、合宿の詳細だが、まず宿についてだ。宿は山奥にあるいわくつきで有名なんだ。なんでも、人が相次いで死んでいったらしい」

「そんなところに俺たちは泊まるんですか……」

「そうだぞ。ミステリーファンなら一度は泊まってみたいと思わないか?」


そういいながら神藤は一枚の紙を出した。


「次に合宿の一連の流れだが、これを見てほしい」


その紙には、一日の流れが大まかに書かれていた。合宿は一泊二日で、朝7時に学校集合、そこから顧問の先生の車に乗って合宿場まで行くことになっている。


「顧問の先生って、誰なんですか?」

「佐倉先生だよ。先生もミステリーが好きみたいでね。顧問を引き受けてくれたんだ」


佐倉先生は30代前半の女性教師だ。科目は日本史と世界史を担当している。下の名前は司という。


「へー。意外ですね」

「佐倉先生の車に、私たち全員入るのですか?」


合宿に行くのはミステリー研究会のメンバーと式、榊、先生の計8人だ。


「心配いらないよ。先生はワゴン車を持っているから」

「それなら大丈夫そうですね」


榊は少しほっとした。自分たちが乗って迷惑にならないだろうか、と思ってたみたいだ。


「で、その紙を見ればわかると思うが、当日についても話しておく。服装は自由で持ち物は特になし。ただし、着替えは持ってきてくれ」

「わかりました」

「そして一番重要な話だが、この合宿の目的についてだ」


目的なんてあったのか、と式は驚く。


「この合宿の最大の目的は、他学年との交流だ。上級生、下級生とミステリーについていろいろ語り合い、仲良くなってほしいというわけだ」

「……」

「これで以上だ。他に知りたいことがあったら、アドレスを渡すからメールしてくれ」


しばらく待っても他の部員が来なかったので、今日はお開きとなった。

榊は合宿が楽しみという感じだが、式は先ほどから俯いたままだ。

他学年との交流。

その言葉をきいて、式は不安になっていた。クラスでの友達もできない自分が、他学年の生徒と親しくなれるのだろうか。


「心配ご無用ですよ、式くん」


その様子を見てか、榊が話かけてくる。


「確かに初めて会う人と話をするのは少し緊張するかもしれません。でも、勇気をだしてください。最初の一歩を踏み出してしまえば、後は簡単です」

「榊さん……」

「あなたは他人とコミュニケーションをとるのが苦手、というわけではないのでしょう?」

「人と会話するのは平気なんだ。でも、プライベートとかの話は苦手なんだよ。どこまで踏み込んでいいのかがわからないんだ」


人は皆誰にも触れてほしくない領域をもっている。その領域に無意識に踏み込んでしまい、取り返しのつかないことになってしまうのが怖い、と式は語った。


「榊さんは、人と話すときどうしてるの?」

「どうしてるといわれましても……そのようなことは考えたこともありませんし」

「え……?」

「式くんは、考えすぎだと思いますよ。確かに触れてほしくない領域は誰にでもあります。しかし、仮に触れてしまった場合でも、きっと大丈夫ですよ」

「どうしてそう思うの?」

「人は誰しも良心をもっていますからね。怒らせてしまっても、心から謝罪して、誠意を見せればいいのですよ。本当に悪いことをした、という気持ちが相手に伝われば、相手もきっと許してくれるでしょう」


その言葉をきいて、式はようやく気付いた。


「榊さんが言いたいことがわかったよ」

「そうですか」

「榊さんの話を参考にして、俺は俺のやり方で人とコミュニケ―ションをとってみるよ」

「頑張ってくださいね。ではさようなら」

「うん。さようなら」


そういって、式と榊は別れた。

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