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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
7/31

誇りと聖者の十字架

リレー小説第7話です。


担当 :長谷川 レン

代表作:ヒスティマ(http://ncode.syosetu.com/n6895bd/)

「で、未来はメルに殺されそうになったんだ」

「そうなんだよ。でも、すぐに誤解は解けたし、良い人だってわかったからね。じゃなかったら今頃森で彷徨(さまよ)ってるよ」

「あははは! 迷っていたら近いうちに私が森で見つけてあげるよ!」


 外はすっかり暗くなり、村の家々に明かりが灯る時間。


 未来はメルの作った夕食を口に運びながらフィーと話す。


 先ほどのフィーが持って帰ってきた猪なる動物(?)の四分の一ほどを使って、鍋にした。


 猪を取りだした所を見たが、未来の知っている猪とは姿、形が似てこそいるものの、牙はマンモスのように長く(折れて袋の中に一緒に入っていた)毛皮は針のように尖っていて、角のような物もあった。


 唯一、顔や鼻が変わっていなかったので、猪だと感じたが、もはや誰もが知っている猪とはほど遠い姿だった。


 フィーが「まだ子供だった」と言って渡してきたので親はどんなに大きいのだろうと考えたが、恐竜のような大きさを考えてしまってさすがに無いだろうと、鼻で笑ったりしたものだ。


「にしてもこの料理はおいしいね」

「あったり前でしょ! メルの作る料理は一級品なんだから!」


 確かにこれは一級品と言ってもいいかもしれない。


 今まで食べたことのない味で、何と表現すればいいのか、とにかく柔らかく、それでいて歯応えがあり、香ばしい味がして、ご飯が進む。


「フィー。私の料理よりもっとおいしい物を作れる人なんてたくさんいますからね?」

「んもう。またそんな謙虚に言っちゃって」


 そう言ってメルは猪の肉を食べていく。


 一番食べているのはフィーだが、それに劣らずメルも作っていた遅れを取り戻すべく速いスピードで食べていく。


 未来はそこまで食べるほうでないので、その様子を半ば呆れながら見ていた。


 その中で、フーリィはメルの肩で猪の新鮮な生肉を捕食中。


 こちらもメルとフィーに遅れないようにガツガツと食べていた。


 そういえばと未来は思いだし、フーリィは未来が起きてからと言うもの、何も口にしていなかったような気がする。


 よほどお腹が減っていたのだろう。


 すぐに鍋の中身は消え失せ、メルが食器を持っていき、手際よく片付けていった。


 その間にフィーは未来にしかこれまで懐かなかったはずのフーリィを両手に乗せてモフモフと触っている。


 フーリィは気持ちよさそうにしていて今にも寝てしまいそうだった。


 夜行性なハズなのに夜に寝るエゾモモンガ。


 一体全体どうしてフーリィはこうも珍しいのか……。


 エゾモモンガとは夜行性だが、たまに日中に動くものもいる。


 それでいてフーリィはまるで人語を理解しているようにしている素振りで、未来はフーリィが本当は人間なんじゃないかとか面白く考えたりしている。


「未来がなんとなくウチの住人になるのはわかった。でも未来に何させるの? メル」

「そうだね……」

「できればボクにできる事で……」


 こちらが、条件やら何やらを出せる立場で無いのがわかっているが、自分にできないことをやれと言われても、できないものはできないのだ。


「とりあえず給仕をさせようか? 制服着せて」

「男に給仕なんてされたくないと思うのは私だけなのかな? フィー。事故だとは言え、一度見られてるんだけど……」


 メルの視線が未来の目を捉える。


 未来はその視線から逃げるようにして、視線を逸らす。


「見せちゃえ」

「見せるかぁ!」


 口調が崩れるメル。無理もないだろう。


「ま、それは別として……」


 そういうフィーは席を立ち、すぐ近くの戸から制服とやらをとりだす。


 それは黒を貴重としていてその上に白いエプロンのような――


「――ってそれメイド服!?」

「「へ?」」


 未来の驚きがメルとフィーの疑問をさそう。


 未来が見たその制服とやらは、どう考えてもメイド服。


 黒いワンピースに白いエプロン、レース付きカチューシャと、一式がそろっていた。


「「めいど服?」」

「えっと……。なんて説明したらいいか……。メイド服って言葉で一セットなんだ。ボクのいた日本じゃ、えっと……そう! 観賞用! 観賞用で使われていたんだ!」


 こんなものを着せられるのはシャレにならないと考える未来。


 先ほどの衣装よりは幾分かはマシだが、男である自分がこんなものを着たら、それこそ黒歴史として記憶の奥底に刻み込まれるだろう。


 実質、女の人が来ているのを観賞するために喫茶店に行く人が多数だろう。


 フーリィにメルの肩から疑いの瞳を向けられるが嘘は言っていない。


「そうなんですか? にほんでは観賞用だったんですね。だったら私たちも無理に着せる訳には……」


 この調子でいけば着ることは無くなると思い、もう一つ付け加える。


「それでいて、これは女性用だから、ボクには着ることはできないんだ」

「着れないことは無いと思うけど……。だって未来さんって少し化粧すればきっと可愛らしい女の子の姿に……」

「やめてくれ。ボクにそんな趣味は無い」


 逆効果だったらしい。


 未来は一歩後ろに足を引く。


 こんな所で黒歴史は作りたくはない。


 ただその意志だけが強く残り、目の前に迫ってくるような感じがするメルから遠ざかろうとゆっくり後退する。


 別にメルは無理に着せるつもりは無いし、迫ってもいなかったのだが、未来の目にはメルが迫ってくるような錯覚を見ている。


 そんな空気を破ったのは――


「にほん?」


 まだ未来の素性を詳しく聞いてないフィーであった。


 未来は好機だと思い、すぐさまメルとの話からフィーとの話に切り替える。


「そ、そう! ボクは日本から来てね――」

「それってただのおとぎ話でしょ?」

「へ?」


 未来はフィーの言葉にメルが話した時とは違う意味を読みとる。


「おとぎ話なんかの世界から来たって言うの? もしかして記憶がこんがらがっちゃっているんじゃない?」


 今ではおとぎ話とメルから聞いていたが、メルはここまで拒否反応を示してはいなかった。


 むしろこちらの話を興味深そうに聞いていた所から、未来はメルの反応が正しいと思ってしまった。


 だが実際にはフィーが正しいのか、メルが正しいのか、わからなくなってしまった。


「メルから何度も聞いているけど、そんなのは作り話よ。だってそんな国、あるはず無いもの。証明だってできないしね」

「証明ならあのけ――」

「あれだって信憑性を高めようとして作った偽物にきまってるじゃない」


 全く信じようとしないフィー。


 確かに信憑性を高めようとして作った物と考えられるかもしれない。


 だけど未来は、それは無いだろうと考える。


 剣に書かれていた文字は古代文字などではなく、正真正銘、日本語でしかもしっかりとバス停に似るように、詳細が書かれているのだ。


 あれは本物だ。嘘じゃない。


「メルと親父さんはそれで通るかも知れないけど、私や村のみんなはそうもいかないよ。そんなおとぎ話を信じてるのはメルと親父さんだけよ。メルが信憑性がどうとか言ったのかもしれないけど、子供に面白く聞かせるために作られた物に決まってるでしょ」


 フィーは席を立ち、もう話す事は無いとでも言うように部屋の扉を開けて出て行った。


「えっと……その……。フィーはココノ村からは来ていなくて、森で気を失っているのを見て連れて来たんです」

「気を失って?」

「はい。父と私が村から出てきて初めて会ったんですけど……。彼女、昔の記憶がないみたいで……」

「記憶が……?」


 自分の出で立ちを信じてもらえなかったのに怒りを少し感じてしまった未来だが、記憶がないと知って、そこまで怒る気にもなれなかった。


「名前だけは覚えていたみたいで、フィエルテ・クロワと名乗ったんです」

「へぇ。ちなみにその意味はわかる?」

「意味……ですか?」

「誇りと聖者の十字架」

「え?」


 メルが未来の言っている意味がわからないと言うように聞き返す。


「フィエルテもクロワもフランス語で日本語にするとフィエルテは『誇り』、クロワは『キリスト教の十字架』になるんだ。キリスト教は聖者とも置き換えられる。だからフィーの名前は誇りと聖者の十字架を背負っているんだよ」


 これがファンタジー漫画や小説ならフィーは何かを知っていて、それを隠しているのかも知れないと言う展開になりそうだが、残念現実。まず無いだろう。


「誇りと……聖者の十字架ですか……」


 思わせぶりな顔をしたメルを置いて、未来は自分に割り振られた部屋に向かう。


 外を見ると、あったはずの家々の灯りはもうすでに数か所になり、ほとんどの家の灯りは消えている。


 フィーとメルがお風呂を上がったとメルから聞き、未来は案内されてお風呂のお湯につかった。


(そういえばどうしてメイド服なんかがこの家にあったのだろう? あれは七億八千年前からずっと使われてきたのだろうか? それだけじゃない。フランス語だって同じはずだ。七億八千年もたって、こんなにも変わってしまった世界にフランスなんてあるのだろうか? 言葉だけ伝えられているという可能性もある。だけど一番気になったのは……)



――魔法



 あんな言葉を聞いた後だが、未来は明日、フィーの狩りに同行させて貰う約束をしにフィー自身に同行を願いに行った。


 幸い、フィーは何事も無かったかのように了承してくれたので未来は小さくガッツポーズを取る。


 未来は部屋に戻り、サバイバルナイフの具合を確かめる。


 魔法を確認するためとはいえ、狩りを見るだけだと怒られるだろう。


 だからサバイバルナイフを確認するのだが、ナイフはこの世界に入った時のままを保っており、切れ味も十分だ。


「よし」


 未来は久々に自分の所に戻ってきたフーリィにおやすみをすると、部屋の灯りを消して明日の狩りに向けて、ベットに横になる。


 体はかなり疲れていたようで、ふかふかとまではいかない簡素なベッドだったが、瞬く間に睡魔に襲われ、深い眠りについた。

初めましての方は初めまして! お久しぶりの方はお久しぶり!


長谷川レンです!


う~んと、何となく書いてみた的なノリで書いてしまいました!


ごめんなさい、嘘です。割と本気に書きました。


本当は面白可笑しく書こうとしたのですが……。

なんででしょうね! シリアス展開みたくなっちゃいました♪


物語の中の時間帯の問題でしょうね♪(オイ



次回はコンフェクトさん!


チャンネルはそのままで!(そんなに早く更新はされないよ!?)



元気が取り柄の長谷川レンでした!(自分で言うか)



長谷川 レン

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