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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
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無騒(むそう)の男

リレー小説第25話です。


担当 :稲葉凸

代表作:東京タワーの神様と、スカイツリーの神様が、毎日我が家でケンカをします(http://ncode.syosetu.com/n8945bj/)

 煌めく黒色のドラゴンはアイリーンをぎろりと視界の中に映すと、人を飲み込むことなど容易いほどの大きさをしたその口を開ける。同時に全身を大きく小刻みに震わせている。

 その挙動を見てアイリーンは思考読みなど使う必要も無く(使ったところで読めないのだが)、次のドラゴンの動きが解った。


「……私に炎を吐くつもりか。笑わせる」


 アイリーンの顔に失笑が浮かんだ。鋭利な視線がドラゴンを睨み付ける。


「――陽光は影を裂き、陽炎は禍を払う。天に瞬く、我が光の源よ。断罪の火柱を以て魔を囁く者に鉄槌を下せ――神炎の裁き(プロミネンス)ッ!」


 アイリーンの手によって放たれた火柱がドラゴンの体に燃え移り、更に下界の魔の者を食らいつくしてゆく。いかに敵が大勢であろうと、この力は反則の領域である。神炎の裁き(プロミネンス)によって一方的な戦闘が繰り広げられていった。

 まさかドラゴンも、自分自身が逆に炎に制されるとは思わなんだろう。


(心底、アイリーンさんが居てくれて良かった……)


 魔法で周囲の群がる魔の物を蹴散らすパークも、心の中で安堵していた。

 呼応するようにアイリーンの口元には笑みが浮かぶ。


 圧倒的なアイリーンの力を基軸とし、戦闘を行い続けた結果――魔の者達の数は著しく減っていった。

 飛翔を続け、空からの強大な力を縦横無尽に扱うその姿はまさに神と呼ぶに相応しい。余裕なまま戦い続けるアイリーンだったが突如、彼女の瞳に一層妖しげな集団が映る。


「あれは……」


 空から見下ろすアイリーンの視界が捉えたものは、黒い人型の魔物の軍勢であった。その数……数千といったところだろうか。そのどれもが神官のような法衣を身に纏い、足取りを揃えて近寄ってくる。

 魔法の力により敵へ攻撃を仕掛ける集団であろう――そう思ったときだった。


「――ァラメキ――オルイラン――ルラレル――オンコクォゥ――ルキフデニオ」

「っ!?」


 その軍勢は表現のしようがない言語を揃えて口にした。一人一人の声が他の者の声と重なり、数珠つなぎのように反復を続けて大きくなった呪文がアイリーンの耳へと突き刺さっていった。

 するとたちまち、アイリーンの様子に異変が現れる。

 空を自由に飛翔していたアイリーンが、よろよろと地に舞い降りてきた。その姿は神というに及ばず、まるで勢いを無くした羽虫のようであった。


「アイリーンさん!? どうしました!?」

「これは……まさか……!」


 アイリーンはたまらず地に降りた。様子のおかしいアイリーンの元へ、パークがすぐさま駆け寄る。

 アイリーンは鋭い目をさらに尖らせ、目前の残党を険しい顔で睨み付ける。その顔には焦りの色が見られた。


「あいつらくらい、僕の魔法でやってやりますよ!」


 パークは得意の魔法を繰り出そうと両腕を大きく掲げて魔法の準備をする――が、その手にはまるで魔の力が降り注ごうとはしなかった。


「……あれ?」

「無駄だ、パーク。あれは対象の魔法の力を無に帰す術式詠唱……そして、神を陥落させるための、呪える術式だ――!」


 アイリーンの見識は正しかった。魔の者達が唱えるその術式により、アイリーンの本来の力は明らかに弱まっていた。そして魔法を得意とするパークの力も封じられる。例の術により、彼らの戦力の大半を奪うことに、成功していた。


「な、なんでそんな物をあいつらが!?」

「さあな。自分たちで編み出したのか……それとも、例のオカルト集団の奴らから継承し、代々伝えてきたのかも知れんな……」


 力を満足に振るえないアイリーンとパークに魔の者達は詠唱の手を緩めようとはしなかった。

 すると、魔の者達の何割かが別の詠唱をし始める。攻撃部隊、そう呼べそうな集団だった。彼らの術式は次第に黒き塊を生み出していった。それらが収束するように彼らの頭上へと集まっていく。アイリーンやパークを軽々と飲み込めそうなほどに大きくなったその球体の塊は、徐々に禍々しい雰囲気を放ち始める。

 二人はその実態が読めていた。魔法弾。強力なエネルギーを秘めて対象にぶつけるだけの術式だ。だがその威力は力を失った二人を吹き飛ばすには、十分な破壊力のはずだ。


「くそっ!」


 パークは盾になるように体を広げ、満足に立つことも出来ないアイリーンを庇おうとする。


「何をやっているパーク! 早くこの場から離れろ! 木っ端微塵になるぞ!」

「残念ですけど、神様を放って逃げられるほど罰当たりじゃないんですよ!」


 術式の力により、その場から動くことが出来ないにもかかわらず檄を飛ばすアイリーン。アイリーンの言うとおり、パークには魔法弾を防ぐ力は無い。かといってこれといった秘策があったわけでもない。彼の頭にあるのはどうにかしなくてはいけないということであったが、現状何も良い手など浮かばなかった。悩んだ末に出たのが、考え無しの仁王立ち。ただ単に受け止めることしか考えていなかった。しかし、受け止めるなどという芸当の出来るほど弱い術式であるはずもない。


「くそっ、こんなことで……」


 アイリーン脳裏に浮かんだのは、絶望の感覚であった。まさか、先ほどまであれだけ優勢に立っていた自分がこうも簡単に追い詰められようとは、思うはずも無かった。

 強大な威力が集約された弾が、魔の者達から放たれる。徐々に自分たちへと近づいてくる黒の魔弾は、例えようのない闇が飲み込んでくるようだった。


 ここで終わり――――そう思ったアイリーンとパークであった、が。


 目の前でその球体は、綺麗に縦一直線に割れた。右と左に別れた半円が二人の外側へと飛び交い、遠い後ろの彼方で爆発する。

 その一瞬の出来事に、二人は驚きを隠せなかった。


「――――サミール!?」

「……」


 二人は声を重ねて驚いた。

 そう、二人の目の前にはもう一人の仲間であるサミールが立っていた。

 全身を黒ずくめの衣装に纏い、深き夜のような外套を纏った男、サミールだ。その姿は今、魔の者達の返り血によって凄まじい姿となっていた。

 彼は二人の目の前に突如として一陣の風のように駆け付け、あの球体を――斬った。そんな凄まじい芸当を、彼は右手に構えた得物一本によって行ったのだった。

 フトンハタキ刀。神原孝治科学武器の一つである。

 銀色に輝くその得物の形状はなんとも不思議な物である。全体が薄っぺらく、異様に細長い持ち手。そして先端はハートマークの様な形状になっている。中抜きされたその形状は大きさの割に軽く、外周部には鋭利な刃がこしらえてある。彼はその鋭利な刃によってあの魔法弾を一刀両断したのだ。

 余談だがこの武器は斬るだけでなく、先端のハートマーク形状の部分を用いて叩くように使うことによって、大岩をも叩き割ることを可能とする。斬撃としても、打撃としても有効であるのだ。


「神が……希望を失っては……いけない」


 普段ほとんど喋らないサミールの口から、低く重い声が響いた。


「神は……常に……我々……人間に希望を与える者……」


 フトンハタキ刀を空へと振りかざしながら語るサミール。

 外套に隠れたその顔からはみ出した口がふっと、軽い笑みを浮かべた。

 その姿を見て呆気にとられていたアイリーンとパークにも、少しずつ明るい表情が戻る。


「そうだな、どうやら……少々奴らを見くびっていたようだ」


 面白い、と言わんばかりに笑うアイリーン。しかし依然としてその体に力は戻っていない。

 見てみると魔の者達は第二陣の魔弾を構えていた。禍々と暖められた魔弾は攻撃の手を緩めない。次の弾がアイリーン達へと接近を続けていた。


「……」


 その球体を前に、フトンハタキ刀を強く握りしめて待ち構えるサミール。

 フトンハタキ刀。この武器は実に強い……ように思えるが、実際の所はそうでもない。斬ることに関しては椿やアンフィスバエナほどの斬れ味を持たず、殴ることに関してはアイギナのメイスには今一歩劣るのだ。つまり、この武器は手を広くしてある分、能力的には最高位ではない――が、この武器の強さは別にある。

 その手の広さこそ、この武器において最強の力を誇る。類い希な汎用性を持っているのだ。


 サミールはフトンハタキ刀を前にかざすように持つと、先端のハートマーク形状でなんと魔弾を受け止めた。

 すると、黒の魔弾はシャボン玉のようにフトンハタキ刀の肉抜き部へと吸われていく。フトンハタキ刀を軸にぷくりと膨れあがった魔弾は勢いを失ったかと思うと――そのまま反転し、物凄い勢いで魔の者達の方へと帰って行った。


『!?』


 魔の者達が驚愕する。自分たちの放った魔弾は一直線に自分たちの元へと戻って来た。その威力は元々の物より幾分も強力な一撃となり、大地ごと魔の者達数千を飲み込み、吹き飛ばす。

 あまりの衝撃に地面には大きなクレーターを残し、残党は見る影も無くなってしまった。


「す、すごい……」

「あんな物を食らうはずだったのか――助かったぞ、サミール」

「……」(……)


 労いの言葉を掛けるアイリーンだったが、またしてもサミールは何も考えていなかった。実に読めない男……しかし、本当に頼りになる男であった。


「サミール、腕から血が」

「……」


 安堵の表情を浮かばせるパークであったが、その瞳の先は袖から血を流すサミールへ向けられていた。余裕で勝ったように思えたサミールの戦闘だったが、彼は魔弾を受け止める際に大きくダメージを負っていたのである。なのにその素振りすら見せず、彼はなんでもないように振る舞おうとしていた。


「パーク、お前はサミールをここで守っていろ。私は中に行く必要がある。未来に会わなくてはならない」


 魔の者達の術式が解け、ようやく体に力が戻って来たアイリーンは立ち上がるとパークに声を掛ける。その瞳には今までのような慢心ぶりは微塵も見られなかった。魔の者達に不意を突かれたことを反省している意味でもあるのだろう。


「……ええ。わかりました、後は任せてください」

「……すまない」


 異論は無いといった風に答えるパーク。サミールは心底申し訳なさそうにしていた。彼の功績ぶりを考えればそんなに肩を落とす必要も無いのだが、彼は至極謙虚である。

 敵の気配はもうほとんどない。サミールが反転させた魔弾によって最後の残党は吹き飛んでしまった模様であった。

 粗方殲滅の終わった荒れ果てた大地を見据えたアイリーンは、未来の元へと向かってその白き翼を大きく広げ、飛翔していった。その姿は次第に豆のように小さくなっていく、そんな光景をパークとサミールは見つめていた。


「アイリーンさん、御武運を。……そういえば、飛んでいったシンザックとメルトゥースは大丈夫かな?」

「……」


 静かになった荒野にぽつんと、座り込むパークとサミールだった。

おはようございます、もしくはこんにちは。それともこんばんは。

稲葉凸です。


皆様方の文章力を見ていると自分の坦々とした描写はなんなんだろうと思うときもあるのですが、それはそれで自分の持ち味として錯覚(?)するようにしています。

上手い下手だけで創作という物を語ってはぁ、いけないのですよ! きっと創作というものは見えない何かの部分が重要なんですよ! だからとにかく自分の思ったとおりに作るのが重要なんですよ! そう言い続けてなんとか自分を保つのですよ!!


……えっとすみません、うるさくて。

今回大活躍の彼と違って私は実に騒々しいです。

サミールファンよ、増えろ! そう願い続けて次の方の更新を楽しみに致します、ありがとうございました^^

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