見る神・聞く神・話す神
リレー小説第24話です。
担当 :雷
代表作:未知びきっ!(http://ncode.syosetu.com/n0688bh/)
「――恒久の日輪は地上を照らし、同時に黒き闇を陰に落とす――」
アイリーンは上空から黒に埋め尽くされたすり鉢状の窪地を見下ろしながら、囁くような静かな口調で広域殲滅魔法の術式を紡いでいた。
ザワ……ザワ……。
無数の思考が、頭の中でさざめき響く。
殺セ――。
滅ボセ――。
打チ毀セ――。
鏖セ――。
喰ラエ――。
引キ裂ケ――。
『魔の者』の中でも程度の低い個体の群れは、喧しく騒ぎ立てるように攻撃感情を撒き散らしている。
常に何かを思っていられるほどの頭がないのか、意識が波のように浮き沈みし、頭の中に響いてくる思考も消えたり現れたり支離滅裂なものがほとんどだった。まるで命令されたことをそのまま反復しているみたいだ、とアイリーンは案外的を射た感想を覚える。
恒常的に重なって響いてくるどす黒い感情にのみ支配されたノイズのような無数の意識に辟易しつつも、アイリーンはひたすらに言の葉を紡ぎ術式を構成するだけの単純な作業を続ける。
そんなアイリーンに有翼のガーゴイル型の『魔の者』が迫った。
「妨害を咎めはしないけれど気をつけるといい――」
詠唱を休止したアイリーンは大きく一度羽搏き――――次の一瞬でその『魔の者』に肉薄する。
「――空は私の領域だ」
スッと鋭利な刃物のように目尻を尖らせたアイリーンの、玉色の鱗に覆われた尻尾が殺気を伴って鞭のように跳ね、その先端の尾爪が『魔の者』の腹を一息に刺し貫く。
ぐじゅる――と、嫌な音がした。
「ギ、ザマ……竜カッ……」(ナンダ、コノ力ハ……ッ)
串刺しにされて、血のようなどす黒いものを口から吐き出しつつも尚、アイリーンを黒い宝石のような目で睨みつけた『魔の者』は、濁ったような声で叫ぶ。
「少し喋れる程度の頭はあるようだけれど、残念、その答えは誤りでなくとも正しくはない。少なくとも私のこの人格は、竜として生まれたものではないからね――」
そして、そう思うのが随分と遅いな――と、アイリーンは思わず笑みを溢す。
ブチブチッ――と、肉が裂けるような音が響いた。
「――私は神だよ」
キラキラと、風になびく白銀の絹髪から光の粒子が舞い散る。
そう、未来の聞いたおとぎ話の神の名と、彼女の名前の一致は偶然ではない。アイリーンは三神の一柱――――“見る神”リッカ=アイリーンそのものだった。
「ギザ、マァァァァァァァーッ!!」(コンナ所デ死ヌナンテ――)
喉が潰れたような断末魔を上げた『魔の者』の身体は、横薙ぎに振るわれた尻尾から慣性に従ってずるりと抜け、重力に従い地上へと落下していく。
(――死ニタクナイィッ!)
「死にたくないと思うのなら、他者を手にかけようとするものじゃないよ」
玉色の翼肢と純白の翼膜とで構成された翼を力強く羽搏かせ、アイリーンは『魔の者』の心の叫びに対して、手向け代わりにそんな言葉を返す。
彼女の本当の名前は――アイリーン。
そして“見る神”という神性に由来する『禍を監視して律する』“律禍”と、“太陽を司る神”という神性に由来する『太陽を司り火を率いる』“率火”の二重の意味を持つ呼び名――リッカ。
おとぎ話に残った『リッカ』と言うのは名前ではなく彼女を表す記号のようなもので、口伝で伝えられていく内に名前と統合されてしまったのだ。
「――唯一つ影を持たない光は自らを槍へと変え、暗き闇を刺し穿ち刺し貫く――」
アイリーンは後続の魔の者が来ないのを確認して、詠唱を再開する。
「――陽光は……」
しかし、すぐに詠唱が止まった。憶えているはずの文言が出てこないのだ。
(今は目の前に専念しなきゃいけないのに……)
実のところさっきから――――集中が、乱れてしまっていた。
その原因は、地上を蠢く『魔の者』たちではない。
そもそも敵の妨害だけならアイリーンにとっては苦戦というほどでもない。少なくとも人間が――――シンザックやメルトゥース程度の実力者で相手取れる程度の魔の者は、地球限定とはいえ一介の神である彼女にとって倒せないというほどの敵ではないのだから。
この原因は、アイリーン自身の犯したちょっとした失敗にあった。
(……此の期に及んで、未来君に力を返し忘れるなんてね……。役に立つかどうかは彼と状況次第だけれど、彼女がそばにいる以上、無駄になることはないだろうし……)
彼の力と言うよりは、今は彼の中に溶け込んでひとつになっている“聞く神”ラカワミ=ライの力だけれど――――と、アイリーンは思い直した。
七億八千年前――――神原幸治が今回の『魔の者』の襲撃を予期し、そして『神原幸治科学武器』というカタチで備えたように、彼女を含めた三神(“見る神”リッカ=アイリーン・“話す神”メルクリウス・“聞く神”ラカワミ=ライ)もそれに備えて、動き出していたのだった。
寿命のある人間では不可能な長いスパンで構えた彼女は、まず八千年前に偶然見つけた魔力操作の潜在能力が高い――魔法の才能を持った少年、セルス=クライリストに最終決戦を見越して不老を与えた。
不老不死を与えなかったのは、不死にしてはせっかくの才能が潰えてしまう可能性があったからだ。ちなみに、彼が視力を失った際、千里眼の魔眼――――つまり『見る力』を与えたのも『見る神』だった。
さらに、未来を七億八千年前の日本からこの世界に召喚したのは彼らの一柱“聞く神”ラカワミ=ライ。しかし、これだけの長期間のタイムスリップに費やした力は大きく、激しく消耗したラカワミ=ライは、同時に未来と融合して彼の中に身を潜めた。彼は、数少ない“聞く神”が同調できる素体の中で最も近い時代にいたからだった。耳がいいのはその素質がある証拠である。
そしてその時、『魔の者』から未来の存在を隠蔽するため、アイリーンはラカワミ=ライの持つ神性“人の心を聞く力”――つまり読心能力を預かったのだ。
そうでなければ、“見る神”であるアイリーンが本来“聞く神”の能力を持っているのも変な話だろう。
そして、最終決戦の数年前、召喚した彼をメル――メルクリウス=ゼ=ティリエントワールと引き合わせたのも、彼女たち三神の思惑だった。
この時代に生まれていたメルという名前の少女。
彼女は、おとぎ話に残っているように人間との間に子を生した“話す神”メルクリウスの直系の子孫だった。そして“話す神”は子孫の体内に宿って力を蓄えながら時を超えた。
おとぎ話に残っている『月の巫女』とはこの子孫のことを指している。“月を司る神”としての形質を持つメルクリウスは満月の日に力を増す。その時に『月の巫女』は身体の何処かに『月の紋章』と呼ばれる模様が浮かび上がるのだった。
彼女は彼女と同じ名を持つ神の一柱の加護を受けている。しかし、未来と違って“話す神”の神性を宿したままの彼女は、『魔の者』に狙われやすかったのだった。
そしてラカワミ=ライとメルクリウスとは別の人格を持つ、神と同調できる二人を人知れず守り、見守るのが“見る神”アイリーンの仕事だった。
先の大戦(七億八千年前)で消耗し、長い眠りに付いていた彼女は、覚醒すると同時に素体を使わずにこの世界に顕現した。その時に顕れた形質が、この時代の地球における最高位の生命体である竜の姿である。つまり三神の中で最高位に位置する彼女の形質を具現化したもの、ということだ。
彼女の素体となりうる人物もいるにはいたのだが、その人物は未来が再三見ていた夢の中で登場していた七億八千年前の日本にいる彼の親友、立花愛莉だった。
しかし、未来一人を召喚するだけで(一緒にフーリィというエゾモモンガが巻き込まれていたせいもあるのだが)大量の力を消費し、三神の一柱を消耗してしまっている。
その上彼女まで、というのは無理だった。
しかし元を正せば、彼女の夢を未来に見せていたのはアイリーンであり、最初にその夢を見せた時はルーク(ルーカス=ド=アルアンタ)の姿を借りた『魔の者』との接触直後に慌てて見せたため、かなり無茶のある夢になってしまったのだった。その目的は未来が真実に気づかないよう、彼の無意識にフィルターをかけることである。
そしてアイリーンは、来るべき戦いに備えて二人を鍛えるため、満を持してこの時代に姿を現したのだ。
そこで話は戻り、アイリーンの犯した失敗である。
彼女は、この最終決戦の時には読心能力を――つまりは“聞く神”の神性を未来に、延いては彼の中にいるラカワミ=ライに返すつもりだった。
そこで忘却の彼方である。
(我ながらここまで抜けていたとは……)
彼らが『神原幸治科学武器』を携えている以上、結果的に神である彼女たちの力を借りずとも『魔の者の王』に勝ってしまう可能性は十分にある。しかし、そうでない可能性もないわけではないのだ。
しかしこのままでは、彼ら――未来とメルは神の力を持っていることすら知らずに敗れてしまうかもしれない。
(『神原幸治科学武器』を信じていないわけじゃないけれど……。『魔の者』にも科学に匹敵する力がないとも言えない以上は可能性は増やしておいた方がいい……)
彼らが神の力を使うためには、どうしたってこの“聞く力”が必要だった。
未来にこの力を返せば、彼の中の“聞く神”が目覚め、同時に“話す神”との意思疏通が可能になる。
『見る』『聞く』『話す』
この三神の中でも唯一他者に干渉することができる神性を持つ“話す神”メルクリウスは、おそらく『魔の者』に対しても切り札になりえるのだ。
そして陽を司る太陽神であり光の形質を持つアイリーンと陰を司る月の神であり闇の形質を持つメルクリウス。
その正と負の二神に対して地球の神であり生命と調和の形質を持つラカワミ=ライも、彼らの助けになるはずだった。
(……今から追いつければ御の字だね)
アイリーンは、地上を見下ろす。
シンザックが、メルトゥースが、サミールが、パークが、セルスが、アルタルが、フィーが、カーリンが、フィガットが――
そして塔の中でも、メルが、フーリィが、アムールが、シーカが、キートが、サンスが、未来が――
――戦っている。
肉体的にはアイリーンよりも圧倒的に脆弱な彼らこの地球の生物が。
「私の役目は、希望の陽光を照らしてやること、だろうね」
返し忘れたなら、すぐに追いかけて返せばいい。
そして、すぐに追いかけたいなら――
「悪いね。私は確かに神だけれど、『魔の者』を創った憶えはない。私の、管轄外だよ」
アイリーンを包み込むように顕れた火が、轟々と唸りを上げながら、瞬く――。
「――陽光は影を裂き、陽炎は禍を払う。天に瞬く、我が光の源よ。断罪の火柱を以て魔を囁く者に鉄槌を下せ――」
キュィイッ――と、火が集束した。
「――――神炎の裁きッ!」
ドンッ!
三本の巨大な火柱が、アイリーンの周囲に浮かんだ火球から地上に打ち下ろされた。
すり鉢状の窪地の外縁付近に降りた直径五メートルの円柱状の神炎の鉄槌は、直撃した下級魔物たちを一瞬で焼き尽くし、さらにアイリーンの回転に伴って地上を動き始める。
直径数十キロという巨大なクレーターのような地形だからこそ、外縁付近は味方に誤射することもあり得ないのだ。
「自然淘汰は神の仕事だからね」
言い訳でもするかのように呟き、アイリーンは外縁付近の全ての『魔の者』を焼き尽くし、さらに二手に分かれて戦う他の四人の位置を確認し、三本の炎柱を操作してその他の場所にいる敵を片付けていく。
しかし――
(マズいな……)
急激に弱まってきた火柱を見て、アイリーンはふと上を見上げた。
太陽が雲に隠れて日が翳り始めてしまい、力が弱まっているのだ。
(ん……?)
返しで地上を見下ろすと、シンザックとメルトゥースが目に入る。
危なげなその様子に即座に神炎を納めたアイリーンは、純白の翼を羽搏かせて急降下する。
しかし、神炎が止んでアイリーンを脅威と見做したのか、残っていた有翼の『魔の者』たちが一斉に空に飛び上がってきた。
「――光冠纏いし神の衣は、あらゆる邪悪を阻み拒む――」
冷えた視線をその黒の群れに向けたアイリーンの体表面を覆うように、ぼんやりと光る膜のようなものが現れる。
「殺セッ!」
その中からそんな叫び声が聞こえ、一斉に加速した『魔の者』たちが雄叫びを上げながら、ほぼ同時にアイリーンに迫る。
「近付かない方が身のためだよ――」
アイリーンは翼を一振りし、『魔の者』の群れの中に身を躍らせた。
しかし、次の瞬間――無数の『魔の者』の姿が明るい光を放って瞬いた。
「――私の光冠は百万度。近付くだけで燃え始めるよ。長くは続かないのが欠点だけれど」
アイリーンが急降下で有翼の『魔の者』の群れを通過すると、燃え尽きた黒っぽい残骸が風に流されて落ちてくる。
その時、ちょうどコロナが切れた。
(日が隠れている時はこんなものか……とはいえ有翼の『魔の者』の大半はこれで片付いただろう。神炎は……あと十秒ほどは使えるようだ)
アイリーンは自身の掌を見つめながら、静かに高度を下げていく。白銀色の髪からは光の粒子が風に散り、その存在を大気に知らしめる。
そして、まさに危ないところというシンザックとメルトゥースを見下ろした。
(何だ、コイツ……)
(竜……ではなさそうだけど、まぁいいかァ。殺しちゃえば同じことだし)
二人の目の前には眼鏡をかけた将クラスの女が二人立っている。不穏なことを考えているのはその内の一人だ。
(指揮官が前に大したことはなさそうだけれど、無為に神炎は使わない方が良さそうかな)
「特別難題とは思わなかったから、大方油断していたんだろう、シンザック。人には死ぬな死ぬなと言っておいて少し情けない姿だな」
二人の眼鏡女から視線を逸らし、シンザックに声をかける。
「アイ……リーンか……ガフッ……」
シンザックが血を吐く。
「後は私に任せて下がっててもいいよ。前半は上々、中盤戦のタイトルはこの私の殲滅戦だ。消し飛ぶ覚悟ができた者から同時にかかってくるといい。少し事情が変わってね。できれば私は未来君に追い付きたいんだ」
威嚇するように大きく翼を広げながら、アイリーンはチラリと眼鏡女二人に流すような視線を送る。
その時、多少冷静そうな一人がハッとしたように目を見開き、アイリーンの頭の中に驚きの感情が伝わってくる。
(どういうことだ、陣形が乱れて……ッ)
「人海戦術に陣形も何も関係ないだろう? それに、何だ。今気づいたのかい? 確かに見えないようにはしていたけれど、敵ながら少しお粗末だね」
(コイツ、心をッ!?)
「そう、私は本質が視える。少なくともこの辺りの連中は、既に粗方片付けた」
“見る神”アイリーン。
見ることができ見せることができるなら、同様に見ないことも見せないことも可能なのだった。
(自分の姿を見せないようにもできればよかったのだけれどね――)
そうすればアイリーンだけで塔の中に侵入し、王を殺すことができたかもしれない。しかし、神の発する存在感は、隠すには少し大きすぎた。
アイリーンはゆっくりと羽搏き、地面に足を下ろす。
(思ったよりも日が悪かったかな……運否天賦とは言ったものだけれど、その神の私には笑えない冗談だよ)
((今だ……ッ))
太陽を隠してしまっている大きな雲を仰ぎ見て、アイリーンは左右に分かれて挟撃しようと肉薄していた眼鏡女二人に視線を戻した。
「そうだね。すぐに終わらせよう」
尾爪一閃――。
一瞬の交錯で二人とすれ違ったアイリーンは、両手を前方に向けて大きく広げる。
((…………。))
二人の思考は沈黙していた。
そして、アイリーンの広げた手元に火花が散ったちょうどその瞬間、ぐしゃりと小さな音が響いて二人分の人影はそれぞれ上下で分かれ、計四つのパーツが地面に落ちる。
そして、神炎が噴く。
「――這い跳ねる神炎――」
轟ッ、と炎が空気を吸い込む音がその場に響き、三本のプロミネンスを束ねた直径八・六五メートルの巨大な炎柱が一本、傾斜の激しいアーチ状に噴き上がり、そして眼鏡女たちの後続として控えていた地上の『魔の者』の群隊に向かって、蛇のように打ち下ろされた。
直撃を受けた個体は一瞬で原型を留めない黒い何かに変化し、その周囲にいた個体も激しい輻射熱でブスブスと黒煙を上げて動かなくなる。
さらに地上にぶつかった巨大な炎柱は再び三本に分かれて放射状に広がり、蛇のようにうねりながら大量の群隊を丸ごと喰らい尽くしていく。
背後で呆然とアイリーンの挙動を眺めているシンザックとメルトゥースからしても、頼もしく思う以前に『お前、そんなに強かったのかよ』と言いたくなる光景だった。
(この程度の弱い敵ならいくらでも喰ってやれるのだけれど――)
実際、先の大戦(七億八千年前)でも、今この窪地の外縁付近に犇めいている程度の連中なら、アイリーン一人でも五億体ほどは簡単に手折って――倒している。
問題は今、さらに内側の層に――延いては塔の中にいる大型・上位種なのだ。だからこそアイリーンは今、外縁部の『魔の者』を全て殲滅し、できれば内側の層に加勢に行きたいと考えているのだから。
(時間切れ、のようだね)
広域殲滅魔法の効果が切れ、制御下に置いていた神炎は形が崩れ、幾つもの炎塊となった残り火が地上に降り注ぐ。
「シンザック、メルトゥース。君たちはまだ戦えるのかい?」
後ろに振り返り、シンザックとメルトゥースの方にゆっくりと歩きながら、二人にそう問いかける。
「俺は大丈夫ッスけどシンザックが……」(コイツが敵だったら負け認めて土下座してたぞ、俺)
「私も残った左腕を世界のために捧げよう」(この女、最初からマトモじゃないオーラを発してはいたが、正真正銘の化け物だったようだな……)
聞こえてきたメルトゥースとシンザックの素直な心葉に、アイリーンのこめかみがわずかに引き攣り、口角がにこーっと釣り上がった。
「うん、いらないよ♪」
「「え゛っ」」
二人が気がつくとシンザックとメルトゥースの身体は、アイリーンの翼の一振りで発生したあり得ない力の爆風じみた暴風で空中に巻き上げられていた。
「「え゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェ――――ッ!?」」
「メルトゥース、シンザックを頼んだよーっ。また余裕ができたら戻ってきてくれてもいいけれど、足手纏いと思うなら諦めるんだねーっ!」
珍しく声を張り上げたアイリーンは、空気を掴んで翼をもう一振り。突風はシンザックとメルトゥースの身体をまたふわりと持ち上げ、窪地の外側にあった森に墜ちて――もとい落ちていった。
「着地はメルトゥースに任せよう。彼ならきっとできるはずだから」
うまく着地できなくとも、小枝の多い高い木とその下に繁茂する巨大なマッシュルーム群があるから大した怪我にはならないだろうし――――と即座に思考を切り替えたアイリーンは、再び集まり始めた外縁部の『魔の者』たちに流し目を送る。
「おっと、マズいのがいる……」
外縁部にも数匹配置されていたのか、大型のドラゴンタイプの『魔の者』が数体、アイリーンの視界に映った。七億八千年前にもあの連中には苦戦した覚えがあるなぁ……と遠い目をしたアイリーンに、金属質の鱗を持った巨大な黒い『魔の者』が睨むような視線を向ける。
宝石のような黒い光沢を持った眼球が、ぎょろりと動く。
「アイリーンさん」
ふと横から投げ掛けられた声に視線を送ると、そこにはパークが立っていた。
さっき一度別れた時と同じ余裕を感じさせる調子で左手でメガネを上げるパークの後ろには、パークとは逆に『魔の者』の血を全身に浴びたサミールが立っている。
「怪我人を返したんですね。つまり後は僕たちだけでここを?」
「その通りだけれど、ところでパーク。君はどうして返り血のひとつもついていないのはどういうわけかな?」
「……。」(サミールさんが色々勝手に動くから後ろで護身だけして見てたとは言えないよね……)
無言で答えるパーク。しかし、その心葉は思いっきり秘密を暴露している。
(さすがにこれでは、心を覗いても罪悪感は湧くべくもないかな……)
「ここからはちゃんと働いてもらうよ。何もせずに空を舞いたくはないだろうからね」
「よく飛んでましたねぇ。やっぱり一番外の面子が面白そうだ。そうは思いませんか、サミールさん」
「……。」(……。)
サミールは本気で何も考えていなかった。
返事がないサミールに、パークはあははと苦笑して見せる。
「しかしこんなことをしていても無駄ですし、とっとと始めちゃいましょうか」
準備運動をするかのように手首を回したパークが、入口に近づいてくる『魔の者』たちの方を視線で示してみせる。
「なに、始めるまでもないだろう。私たちの仕事はこの入り口を守ること。この辺りの連中こそ殲滅はしたけれど、まだ大半は残っている。待っていれば向こうから勝手にやってくるさ」
「大半とはよく言いますね。一番外側のこの区画にあと何割残ってるって言うんです?」
「三割程度だろう」
実際のところも、シンザックとメルトゥースが一割、アイリーンの二回分の神炎の裁きだけで四割、サミールの働きでさらに二割、計七割で、またもそれなりに的を射た予測を立てたアイリーンは、再び翼を広げてふわりと浮かび上がった。
「パーク、サミール。君たちは小型の連中を頼んだよ」
「アイリーンさんは?」(強いのを任せておけば片付けてくれそうだ……)
「ちなみに聞こえているけれど、私は大型をやった方がいいだろう? できれば早く片付けたいから、遊びはなしでお願いするよ」
「あはは……」(読心って友達なくしそうだ……)
彼はケンカを売っているわけではなく、至極当然の感想を覚えているだけ――――と、アイリーンは心の中で自分に言い聞かせる。
そして、地響きを轟かせながら近づいてくる黒一色のドラゴンタイプの『魔の者』に向かって、スーッと冷めた視線を送る。その表情を傍から見たパークは、身震いした。
「終盤戦は残党狩りかな」
「残党というには数が多すぎると僕は思いますけどねぇ?」
「心配はないよ。所詮多くとも数十万だろうからね」
(数十万を少ないと思うのは貴女だけでしょうね……)
「思わなければやってられない数だと思うといい」
アイリーンが人差し指を立ててそう言うと、パークは「あぁ、なるほど」と思った。
参加以降担当回は二回目、雷と書いてカミナ、そしてメルトっす!(`・ω・´)ゞ
はい、今回色々やらかしたっすw
とりあえず三神とか未来くんの召喚の謎、未来くんの見た夢とかメルの背中の紋章とか、最終話までまだまだすばらしい作者さんたちがいるというのにこんな序盤から大量消費orz
でも後悔はしてないっすよε≡≡ヘ( ´Д`)ノ
だって思いついちゃったんだもの(ノ´・ω・`)ノ
というわけでこのあとの残党狩りは稲葉凸先生にお任せするっす!
アイリーン無双から一点、どうなるのか!
そして、アイリーンは未来くんに追いついて神の力“聞く神”の読心能力を渡すことができるのかっ! それは後の作者様方の采配次第で (*゜∀゜)はっはっは
というわけでこんなですけど、後は任せましたーっ!
雷




