最終決戦へ
リレー小説第22話です。
担当 :靉靆
代表作:枯れゆく時に思ふこととは(http://ncode.syosetu.com/n6322bi/)
どんよりとした雲は分厚く、低く垂れ下がっている。風はなく、どこか不吉な様子を思わせる景色が部屋の窓から広がっていた。
いつもと変わらない景色のはずなのに、いつもとどこか違う物を感じさせる。
そんな景色が広がる窓辺に一人の少女が佇んでいた。少女は両手を指を絡めるようにして胸の前で合わせ、何かを必死に祈っている。その表情には不安に駆られた様子がありありと浮かんでおり、誰かが近くで見ていたとしても決して話しかける事はできなかっただろう。
しばらく何かを祈り続けていた少女だったが、固く閉じられた目に光を感じてゆっくりと目を開いた。同時に、少女の目に飛び込んできた景色はなんとも幻想的とも言える景色だった。
分厚く垂れ下がっていた雲が割れ、黄金の輝きが空から降り注いでいた。日の光は少女の佇む窓辺にも降り注ぎ、彼女の綺麗な茶色の髪をとても美しく彩っていた。
この時の少女、メルを見ていたエド村の住人は、後にこの時のメルの事を若い女神が舞い降りてきたかのようだったと語っていた。
「みんな……早く無事に……」
メルの口からは切実な思いが零れ落ちた。
その後、日が落ちて辺りが暗くなり始めてきた頃に村が騒がしくなったのに気が付いたメルは勢いよく家を飛び出した。
そして、その目に飛び込んできたのはフーリィの救出へと赴いていた面々と、救出されたフーリィの姿だった。
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月日は怒濤の勢いで流れ、未来が原因不明の転移をしてから数年が経過していた。
フーリィが攫われたあの日、フーリィに目覚めたヴィカラーラと名乗る人格。それは、『神原幸治科学武器』の秘密を話していた。
しかし、伝わっていたおとぎ話や未来の知る日本。『神原幸治科学武器』等の至る所に矛盾を感じた未来は、全ての謎を解かなければ本当の脅威は去らず、自分も元の世界には絶対に戻れないのではないかと考えた。また、ヴィカラーラと名乗る人格が存在する以上フーリィもこのままにはしておけなかった。
メル達は図らずとも同じことを考えたようで、世界を回りながら全ての科学武器の回収と、情報収集を主とした謎の解明を進めることにした。
そこからはあまりにもめまぐるしく事件や謎、出会いと別れが降りかかり、時折挫折しそうになりながらもなんとか全ての謎を一本の線で結ぶことができた。
「ははっ、まさかこんなことってあるのかよ……」
それは未来が全てを知った時に漏らした言葉だ。
未来達は謎を紐解く鍵は『本当の姿のおとぎ話』にあると踏んで情報収集を行った。
最終的にその推測は正しく、おとぎ話には勇者、ジーコ・ラーバンカが魔女を打ち倒し、後に何かしらの王が召喚された時の為の備えが行われたことが根幹として存在している。
それらを彩っていたのは、各地に点在していたおとぎ話である。
おとぎ話を集めている途中、ジーコ・ラーバンカや魔女等のおとぎ話に出てきていたキーワードはほぼすべてが何かから置きかえられていたことがわかった。これは初めから予測されていたことでもあり、物語であればよくある話なのでそれ自体は問題がなかった。
しかし、それらのキーワードは一体何を置き換えていた単語なのか。また、数多あるおとぎ話の中ではどれが正しく伝承されているのか。さらに、中には忘れ去られてしまい、推測で埋めるしかない部分もある等、様々な要素を見極めると言う無理難題が問題として浮かび上がってきたのである。
途方に暮れかけた未来達だったが、『神原幸治科学武器』と情報を集める事を優先した結果、この無理難題を撃ち破る鍵が見つかった。
それが『神原幸治科学武器No.EX』だった。
どうやら『神原幸治科学武器No.EX』は、神原幸治が後々に世界が様々な謎や問題に見舞われることを予測して作られた物だったらしい。それは、最後の『神原幸治科学武器』シリーズとして作られ、七億年以上も誰の目にも触れられずに隠されていたものだった。
『神原幸治科学武器』は世界に散らばっており、様々な場所で守られ、隠され、利用されていた。そんな『神原幸治科学武器』の最後の一つだけが、何故七億年以上もの間誰の目にも触れなかったのか。
最初から存在が知られ、全ての謎を解く鍵だとわかっていれば最初から入手しようと頑張っていたものであるが、現実はそう甘くはないと言うことだった。
では、何故その存在も知られておらず、誰の目にも触れたことがなかった『神原幸治科学武器No.EX』を未来達が手に入れる事ができたのか。それは奇跡であり、必然であった。『神原幸治科学武器No.EX』は全ての『神原幸治科学武器』が揃った時に『神原幸治科学武器No.3』の中に隠されたもう一つの封印が解かれることで見つかるように作られていた。
全ての『神原幸治科学武器』は、武器であると同時に『神原幸治科学武器No.EX』の封印を解く鍵だったのである。
ことの顛末は次の通りだった。
『神原幸治科学武器No.1』から『神原幸治科学武器No.16』の十六種類の科学武器を未来達が全て集め終えたのは、ヴィカラーラの事件から三年が過ぎてのことだった。
全ての『神原幸治科学武器』を回収してから数日後、ある出来事があった。
それは、未来がベッドに転がりながら首から外した十字架の首飾り、『神原幸治科学武器No.3』を眺めていた時だった。
「フーリィにも見せて♪」
そう言って首飾りにフーリィが手を伸ばそうとすると、十字架の首飾りが虹色に輝き出したのである。
同時に、エド村に集められた『神原幸治科学武器』が次々と強烈な光を放ち、首飾りの元へ吸い寄せられるように集まって来た。
それを見たメル達を含めた未来の仲間が、一斉に未来の部屋への前へと集まった。
「あの、未来さん……これは何でしょうか?」
続々と集まった仲間達を代表してメルが未来に問いかけた。
「えっと、さすがに俺にもわからないかな……急に」
「ねぇ……未来、フーリィの様子がおかしいわよ……?」
メルの質問に対する回答を得ていない未来は経緯を伝えようとしたが、途中でシーカが割り込んでフーリィの異変を伝えた。
「え!?」
シーカの言葉に驚いた未来は、フーリィを見た。そこではフーリィが頭を前後にフラフラとさせ、今にも倒れそうになっていた。
それだけではなく、身体を微かな虹色の光が膜のように覆っている。
「フーリィ……? な、お、おい……どうした!?」
「封印開放プログラム『パンドラの希望』を起動します」
未来の問いかけに対して聞こえてきたのはフーリィのフーリィとは思えない声だった。
「セルス、『パンドラの希望』って何かわかる?」
フーリィの言葉を聞いたフィーは隣に立っていたセルスへと疑問を投げかけた。
「『パンドラの希望』……? 一体なんだろうね」
「やっぱりセルスにもわからないのか」
「アルタル! あんた達は何を落ち着き払っているのよ!?」
「シーカ。何が起きているのか、何が起きるのか、何ができるのか。突然の変化で何もわからないのだから仕方ないでしょ?」
シーカの声をアイリーンが宥めた瞬間、変化が訪れた。
「第一の鍵、第二の鍵を起動。真実の眼を開放します」
フーリィの声が響くと、『神原幸治科学武器』の『No.1』と『No.2』が浮き上がり、虹色の光をさらに強めた。
あまりの光の強さに未来達は目を閉じたが、次第に光が弱まるとそれぞれが赤い色で輝いていた。
「未来さん……」
メルは少し不安げな声を出しながら未来を見つめた。未来はそれに気がついたが、何もすることができなかった。しかし、何となく大丈夫だと直感で感じた未来は、メルを安心させるために一度頷いてからフーリィの様子を窺った。
「第三の鍵を起動。湧き出る器を開放します」
今度は『No.3』が『No.1』や『No.2』と同じように強く輝き出し、やがて青い光へと収束していった。
その後もフーリィの言葉と共に、『神原幸治科学武器』が次々と輝き出した。
「第四の鍵、第五の鍵を起動。調和の言葉を開放します」
『No.4』と『No.5』は黄色に輝き出した。
「第六の鍵を起動。解き放つ文字を開放します」
『No.6』は緑色に輝いた。
「第七の鍵、第八の鍵、第九の鍵、第十の鍵を起動。忘れえぬ記憶を開放します」
『No.7』と『No.8』、『No.9』『No.10』はそれぞれ紫色に輝いた。
「第十一の鍵、第十二の鍵、第十三の鍵、第十四の鍵、第十五の鍵を起動。集いし意思を開放します」
『No.11』『No.12』『No.13』『No.14』『No.15』はそれぞれ藍色に輝いた。
「第七の鍵を起動。切れぬ絆を開放します」
最後に『No.16』が橙色に輝いた。そして、全部で十六種類ある『神原幸治科学武器』はそれぞれの色の輝きを保ったままフーリィの前で輪を描きながら回転し始めた。しばらくすると、青く輝いた『神原幸治科学武器No.3』が輪を離れて両手を前に差し出したフーリィの目の前に移動した。
「封印……?」
未来は過去、椿に話してもらった事を思い出した。
『神原幸治科学武器』には一つ一つ役割があり、『神原幸治科学武器No.3』は封印具であることを。
未来が椿の話を思い出していると、『No.3』へ向けて十五種類の科学武器から光の帯が伸び始めた。
光は光としてありえないほどゆっくりと伸びて行き、何とも言えない幻想的な光景が部屋の中を埋め尽くしていた。やがて全ての光が『No.3』に集まると、そこから同じようにゆっくりとした白い光が未来の胸元に向かって伸びてきた。
「封印開放プログラム『パンドラの希望』は正常に実行されました。『神原幸治科学武器No.EX』を開放します」
「!?」
フーリィの言葉に未来達は驚きを隠せなかった。
『神原幸治科学武器』は全部で十六種類あり、それ以上も以下もないはずだった。
しかし、誰もの耳に届いたのは『No.EX』と言う聞いたことのない通番であり、確かに『神原幸治科学武器』と言っていたのである。
驚きが落ち着くこともないまま未来の胸元に伸びてきた光の中に球体の物体が浮かび上がってきた。
未来は戸惑いながらも球体の下に手を添えると同時に球体は完全に具現化した。その球体は黄金の光を称えており、まさに宝玉とも表現できる物だった。
「封印開放プログラム『パンドラの希望』を終了します」
フーリィのその言葉と共に全ての『神原幸治科学武器』の光は弱まり、フーリィが倒れそうになった。
「フーリィ!?」
一番最初に駆け出したのはメルだった。
メルがフーリィの身体を倒れないように抱きとめるのを確認すると、未来達はフーリィが倒れなかった事に少しだけほっとしたのだった。
「フーリィは大丈夫そう?」
フーリィを抱きかかえたメルに未来は問いかけた。
「眠ってしまったようですね。でも、状態が状態なので少し心配です」
「うん。とりあえず動かさないように僕のベッドに寝かせよう」
「はい」
メルはフーリィを未来のベッドへ寝かせると、向き直って口を開いた。
「未来さんが受け取った『神原幸治科学武器No.EX』って何でしょうね……?」
それは誰もが気になっていた事であり、それと同時に誰にもわからないことでもある。
「それは私が説明しましょう」
未来がどう答えてよいかわからずに困っていると、どこからか聞きなれない声が聞こえてきた。
「誰っ!?」
フィーがどこにいるかもわからない声の主に向かって鋭い言葉を放つ。
同時にその場にいた全員が周囲を警戒するが、自分達以外の気配を感じることはできなかった。
「そんなに警戒しなくても良いですよ」
聞きなれない声は穏やかにそう告げたが、急に声だけが響いた上に気配もない。そんな人物の言うことをすんなり受け入れられるはずもない。
警戒心を解かないまま周囲の気配を探っていると、未来はふと自分の手の中の『神原幸治科学武器No.EX』の変化に気がついた。
「未来君。正解だよ」
「え?」
穏やかな声に未来は間抜けな声を出した。
その直後に『No.EX』が輝き始めて未来の手から浮かび上がった。すると、輝いた『No.EX』が膜を作りこむ様に人物像が浮かび上がった。
「こんにちは、皆さん。そして、始めまして」
浮かび上がった人物像が丁寧に挨拶をした。
「お前は誰だ?」
「アルタルさん。そう警戒心をむき出しにしないでください。今から自己紹介をしますから」
「それもそうだな」
「何で得たいの知れない人物の言う事を素直に聞いているのよ」
「シーカ。お前も気がついているだろう? こいつは姿が見えているのに気配は何もないんだ」
「うぐ……」
「まぁ、喧嘩はしないでくださいね。改めまして私の自己紹介をしましょう」
人物像は動揺することもなく言葉を紡いだ。
「私の名前は神原幸治です。正確に言えば神原幸治そのものではありませんが……」
その場にいる誰しもが大きく目を見開いていた。
「……どう言う事……ですか?」
未来が神原幸治を名乗る人物像に恐る恐る問いかけた。
「私は神原幸治をモデルにした自己学習型の人工頭脳のような物です」
そう言って神原幸治は説明を始めた。
曰く人物像は『No.EX』の機能で投影されており、その人格と姿は神原幸治ほぼその物だと言う。さらに『No.EX』は自己学習型のプログラムが組み込まれており、現在ではおよそ七億年以上もの期間分の自己学習が行われている。
『No.EX』における自己学習とは、世界各地に散らばっていた『神原幸治科学武器』の周囲で起きた事象等の記憶がメインである。また、それらの各『神原幸治科学武器』から集められた情報は『No.EX』の機能補完に利用されているとのことらしい。
「……と言うことはお前は作られてから今に至るまでの間に何が起きたのか、これから何をしなければならないのか。それらの答えを持っていると言うことか?」
「これからの事は確実ではありませんが過去のことについてはほぼ確実な情報を持ち合わせています」
『No.EX』は長ったらしい説明をばっさりと切ったアルタルの発言にも嫌な顔はせずに答えを返した。直後、『No.EX』が出した言葉はこの場の面々を驚かせた。
「私がもっている情報を全て提供し、皆様からの質問にもわかる範囲で説明をしたい所ですが如何せんそれができません」
「どういう事ですか?」
「結論から言わせていただきますと時間がないのです」
『No.EX』はそう言って簡単にまとめられた話を語りだした。
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世界は何事もなく平和な時を刻んでいた。
科学の発展は人々を豊かにし、新たな技術は未知なるものを見つけ出しては解明させてきた。
そんな進歩の目覚ましい平和な世界で、とある団体が決して見つけてはならないはずだった物を見つける。
その団体は後におとぎ話の中で『魔女』と呼ばれる存在であり、その実は全世界にネットワークを持つオカルト組織だった。
元々はただの趣味人が集まった小さなサークルのような組織だったが、たった数年で組織として急成長を遂げて全世界にまで広がった。
最終的にこの組織は数多の宗教や人種の枠を飛び越えて構成され、あらゆる世界のオカルト現象を追い求めていったのである。このように確実に組織が存在する一方で、組織はあまりにも大きくなりすぎたが故に地球規模の都市伝説だと思われてしまっていた。
そんな組織が見つけてしまった決してみつけてはならないはずだったもの。それは本来地球では見つかる事のない生物の死体だった。
当時、その死体の正体を知る者はオカルト組織は元より全世界を探してもいなかった。
その死体は生物の突然変異かとも言われたが、最終的には地球外生命体であると結論づけられた。
それからのオカルト組織の行動はとても早かった。
地球外に生命体がいるのならば是非直接会わねばならない。
それが彼らの主張だった。
このような大発見とも取れる事件が発生したにも関わらず、この事を知る人は世界では比較的小割合だった。世界規模で都市伝説だと扱われたオカルト組織の活動は一般に知られる事がなく、明確なブレーキをかけられないまま世界のありとあらゆる場所で地球外生命体の招致行動が行われていくのだった。
もちろんそんな事はそう簡単に成功するはずがないのだが、とある場所で成功してしまった。
それは未来の住む国の未来の住む地域での事であり、未来がおよそ七億年後の世界へと降り立つ直接の原因になった出来事である。
それからの世界情勢の動きは凄まじいの一言に尽きる。
地球規模の大戦争へと発展したのである。
しかし、技術力の差は圧倒的だった。その為、地球連合軍は為す術なく敗戦を繰り返すことになる。
そこに現れたのがおとぎ話で伝説になっている神原幸治達であった。
神原幸治を始めとする八人の科学者が、ついに地球外生命体と戦えるだけの武器を生み出した。
その武器こそが『神原幸治科学武器』の始まりである。
なんとかつくられた『神原幸治科学武器』は最終的に全部で十六種類だった。
もちろんこの数字には椿やアンフィスバエナは入っていない。
とは言え椿やアンフィスバエナは『神原幸治科学武器』とは無関係ではない。もちろん『神原幸治科学武器No.3』に封印されていたのには理由があった。
それは、『神原幸治科学武器』は『妖刀・紅椿』『魔剣・アンフィスバエナ』を参考につくられた武器だからだ。
この時はまだ「椿」と「キュアノエイデス・アンフィスバエナ」の人格は宿っておらず、よくわからない力が宿った刀と剣でしかなかった。
それから数年、地球の文明のほとんどは壊れてしまい、地球外生命体は数が多いが為に根絶させることはできなかった物の、地球連合軍はなんとか勝利を収めた。
この時の地球外生命体は使役されていたペットのような扱いなのか、知性は謎の死体の種族よりも低かった。この生き残りは後の「魔の者」と呼ばれる存在の原型である。
戦争終結後、神原幸治は地球外生命体について調べた際にとんでもないことがわかった。
およそ七億年後、彼らの仲間が再び地球を襲来する可能性があると言うことである。
それには特別な儀式を再度行う必要があるのだが、不幸は重なる物である。オカルト組織はこの事件を引き起こしておきながら七億年後の為の儀式の準備を世界各地で行ってしまったのである。
「私達はあの方達を迎えて会談を申し込むのだ。例え我らが滅びようとも全ての準備は整っている。我々のような志を持つ物が少し手を加えればあの方達は再び来て下さる」
と。
それを聞きつけた神原幸治は全ての『神原幸治科学武器』を集め、グレードアップを行った。
それが後の世界で知られる『神原幸治科学武器』シリーズとなる。
また、この歴史は七億年後には忘れ去られる事を懸念した神原幸治は『神原幸治科学武器No.EX』の研究を始める。その後、それが完成したのは数年後だった。
完成後、神原幸治は全てを明かす者は強い心と強い力を持っているべきだと考えた。
そうでなければ負ける事が確定的だからである。
その為、全ての『神原幸治科学武器』に試練の種を蒔き、様々な偽の情報等を流した。
およそ七億年後に人類が再び勝利する為に。
それが、全ての真実であり、この計画の影響を一番受ける事になったのが未来だと言う事もまた、真実である。
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「と言う事で全てはあなた達への試練として用意された物であり、おとぎ話の九割はおとぎ話でしかないと言うことなのです」
未来達は『No.EX』の話を聞いて唖然としていた。
特に未来においてはこの時代にやってきてから振り回された事件や事故のほとんどが意図的に組まれた物だったのである。
「ははっ、まさかこんなことってあるのかよ……」
その言葉は安堵や呆れ等、様々な感情が綯い交ぜにされて吐き出されていた。
「とは言え未来さん。落胆されてしまっては困ります。あくまでも今までのは試練でしかありませんから」
そう言った『No.EX』の目は鋭さを増した。
「確かにこのままではまたっ世界を巻き込んだ大戦争になってしまうね」
「はい。セルスさんのおっしゃる通りです。それに『神原幸治科学武器』から流れ込んできた情報によるとどうやら再来は一年後のようです」
「は!? ちょっと待ちなさいよ!!」
「シーカよ。少しは落ち着け」
「落ち着いてるわよ!!」
「あの……神原幸治さん。その地球外生命体と言う物の再来は防げないのですか?」
戸惑いを隠せないシーカをアルタルが宥めている中、メルが『No.EX』へと質問を投げかけた。
その質問の答えは何よりも重要な鍵になる。
未来達は全員その答えを静かに待った。
「回避できる確率はもう残されていない」
それが『No.EX』から得られた答えだった。
その場にいる全員の顔が暗くなっていく中、未来は『No.EX』の顔が沈んでいない事に疑問を抱いた。
その理由はすぐに『No.EX』から告げられた。
「大丈夫です。私の用意した七億年以上も誰も乗り越えられなかった全ての試練を皆様は乗り切ったのです。そんな皆様が協力してくだされば次の戦いにも負ける事はないでしょう。それに、私が皆様を負けさせません」
『No.EX』はそう言うと、目を閉じ何かを祈り始めた。
すると、全ての『神原幸治科学武器』が『No.EX』の封印を解除した時のように強く輝きだした。
「全ての『神原幸治科学武器』のリミッターを解除。プログラム『パンドラの輝き』起動」
『No.EX』がそう唱えると、カメラのフラッシュのような閃光が『神原幸治科学武器』から放たれた。
輝いたのは一瞬だったらしく、すぐに目を開けると『No.EX』がにこやかに立っていた。
「『神原幸治科学武器』にかけておいたリミッターを解除しました。今までは本来の一割程度しか出力を出せていませんでしたが、これで全力で扱えるようになります。もちろん、椿とアンフィスバエナのリミッターも解除されています。危険な力だから封印していましたがその必要もなさそうですから」
そう言って『No.EX』は来る一年後に向けて未来とその仲間にさらに強くなれるよう修行のサポートを申し出た。
「他にも聞きたいことはあるとは思いますが今は時間が足りません。全てが終わった後に何か聞きたい事があれば答えさせて頂きます」
こうして、一年後の最終決戦を目標に未来達は修行へ挑むのだった。
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今、未来達の目の前にはとても壮観とも言えよう光景が広がっていた。
「あれいったいどれくらいの数いるんだよ……」
未来は呆れながら声を発する。
今、未来達は直径が数十キロもある大きなすり鉢状の地形の縁に立っている。
そこから見えるのはとてつもない数の『魔の者』だった。
中央付近には螺旋状の塔のような何かが突き刺さっている。
「神原さん。あそこですか?」
メルはその螺旋状の塔のような何かを指差しながら『No.EX』に聞いた。
「おそらくそうでしょう。この戦いは奴らと私達の総力戦にも等しいです。最も強大な力を持つ王があそこにいるはずでしょう」
その言葉を聞いた未来達は気を引き締めた。
「さて、どうやって切り崩していきますかね」
未来が考えを巡らせようとした時、アルタルが言った。
「まずは奴らの陣形と流れを考えよう」
そう言ってすり鉢状の地形を指差した。
「奴らの陣形は単純な二重構造で城壁のような何かで区切られている。それに、どうやらあちらさんはこの周囲の情報を逐一手に入れているようだな。既にこちら側に向かって隊列が組まれている。どうやら結界もあるみたいだな」
アルタルの説明を聞きながらすり鉢状の地形の中を見るとこちらに向けて隊列が組まれ始めていた。
「一番外側は小物だが圧倒的に数が多い。突破をできてもその内側になだれ込まれたら致命的だ。その内側は少し大きめの奴らだな。おそらく一体一体の力も強いだろう。魔法を使ってくる可能性もある。最後、塔の中。ここだけは全くわからん」
簡単かつ的確に整理された考えをアルタルは説明すると、作戦の考えを述べた。
まずは未来達を三つのチームに分けること。
一つは小物との圧倒的力の差をひたすら振りかざし続ける殲滅戦。ある意味では持久戦とも取れる。
もう一つはその内側の層、何体かの大物相手だ。一つ一つが強力であることが目に見えているので苦戦を強いられるかもしれない。
最後の一つは塔への突破組だ。何があるかわからない塔の中。そして、魔の者の『王』が鎮座する玉座。まさしく最終決戦の場として相応しい所だろう。
全体の動きは単純。
各層との区切りは結界が張られており、転移魔法を使っても各層を移動するための入口くらいまでしか移動ができない。
それを踏まえて各層の移動可能な入口へ転移し、その層を担当するチームが入口を守りつつその層の魔物を撃破していこうと言う物だ。
これには下手に作戦を立てるよりも、正面突破した方が「王」と戦う仲間が消耗しないからと言う考えが含まれている。
「問題はチーム分けか」
そこまで説明すると、自分の仕事はここまでと言わんばかりにアルタルは未来を見た。
「そうですね。ではどうしましょうか?」
未来は誰がどこへ行っても勝てると思っていた。それだけ仲間の事を信頼しているのだ。
「では第一層目は私に任せてもらおうかな」
そう言って一歩進みでたのはアイリーンだった。
「こう見えても私は広範囲の敵を相手にする方が得意なのでね」
くすくすと笑いながら獲物に狙いを定めたかのような視線を魔の者達に向けていた。
「それでは私もご一緒させていただけますかね?」
黒いマントを羽織った謎の紳士。片目は白く輝くモノクルのせいで常に隠されているシンザック・カー・キートンが一歩前へ進み出た。
相変わらず何を考えているのかわからない所が怪しい紳士だ。
「なら俺も先陣切らせていただくッスよ」
白い八重歯を輝かせながらメルトゥース・ライ・カミーナンが一歩出た。
いつにもなくワクワクに目を輝かせているように感じる。
「……」
無言のまま一人が前へ出た。
「第一陣に行ってくれるのか?」
その男に未来が問いかけると首を縦に振った。
全身黒ずくめで誰よりも深い黒に包まれた男、サミール・ワット・カーンズが申し出た。
「うん、何やら面白そうな面子が集まるなら僕も行かせてもらおうかな?」
パーク・コンプ・リーフェクトが左手でメガネを上げながら一歩前へ踏み出た。
「僕達五人が居れば外は大丈夫。未来君。任せてよ」
パークの申し出に、未来は素直に頷いた。
「中層なら私が行かせてもらうよ」
セルスがにこやかに申し出た。
相変わらず着込んだローブが風に揺れ、長い年月を生きている事を納得させられる。
「俺も中層で暴れさせてもらう」
そう言って前へ出たのはアルタルだった。
拳を鳴らしながらすり鉢状の地形の中を見下ろしている。なんとも頼もしい姿だった。
「私も一緒に行く」
そう申し出たのはフィーだった。
「私も強くなったんだから、絶対に負けない」
目からは強い意志が伝わってくるようだ。
「僕も中層での戦いに協力させていただく」
背筋を真っ直ぐに伸ばしたカーリン・アッカー・ヤワンが一歩進み出た。
気合は十分と言わんばかりに精神を統一させ始めた。
「そじゃオレも行かせてもらいますかねぇ」
フィガット・フーティン・ブラックが多少気だるげに、しかし、隙は感じさせない足取りで前へ進み出る。
「こっちも五人いれば大丈夫かな。未来君。後は任せたよ。」
セルスの申し出に頷いた未来は残ったメンバーを見つめた。
「頑張りましょう」
メルが未来の手を握って強く頷く。
「フーリィも邪魔しない様についていくよ」
そう言うと変異の術でエゾモモンガの姿に戻って未来の頭の上に乗った。
未来としてもこっちの姿のフーリィの方が落ち着く。
「みぃ」
未だに謎のままの白い猫、アムールが未来の足元へと移動してきた。
もしかしたらこの中で一番気配を感じさせない存在かもしれない。
アムールに気がつくと、フーリィは未来の頭の上からアムールの背中へと移動した。
その様子に未来達はすごく癒された。
「はぁぁぁぁ……すごく癒される。これなら百人力よ」
シーカがその様子に目を輝かせながら気を充実させていく。
「僕達も行くんだから忘れないでくれよ?」
キート・エルース・ピーバックが苦笑しながら未来へと近寄った。
「忘れてなんていないですよ」
未来はキートと握手を交わした。
「本当ナンデスカネー? 怪しいぞ……」
訝しげな目線を未来に向けたままサンス・イパール・ソーセンが近寄って来る。
「本当ですよ。よろしくお願いします」
サンスとも握手を交わした未来は、全員の方へ向き直る。
「皆さん、これが最後の戦いです。勝って、みんなで戻りましょう!」
全員で気合を入れた未来達は、最後の戦いへと臨むのだった。
ものすごく間が空きましたが紆余曲折を経て最終決戦の場へと突入します。
本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
色々なばらまかれたままの伏線を回収する為に多少強引な手を使っていますが、それでも回収なんてしきれませんでした。
残りおよそ10話程ですが、お楽しみいただければと思います。
靉靆




