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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
19/31

救出作戦

リレー小説第19話です。


担当 :キトP

代表作:ブックス・オブ・パンドラ(http://ncode.syosetu.com/n9339bi/)











 という夢を見た。











 なんて甘い話があるはずもなく――。


「……う」


 未来の口から微かにうめき声がこぼれる。うっすらと開いた目に、柔らかい光が舞い降りた。


「――未来さん!」


 すぐ側から聞こえてきたのはメルの声。かなり切迫している様子だ。


「よかった、目が覚めたんですね! 本当に、よかった……」


 どこか安堵感の混じった声を聞き、靄がかかったような未来の思考は急速に晴れていく。


 セルスとの模擬戦を終えた未来は、フーリィのおにぎりを食べ損ね、空腹を紛らわすためにいじけたようにその場で寝た。


 そして夢を見た。椿が出てきた夢、あれは何を意味しているのだろうか。


 そのうち未来は叩き起こされた。セルスの口からフーリィがさらわれたと聞いて――。


 全ての記憶が蘇った瞬間、未来は飛び起きる。


「そうだ! フーリ――痛っ!?」


 否、飛び起きようとしたが、同時に全身を電流のように走った激痛によって阻まれた。


「無理をしないでください!」


 心配するようにメルが叫んだ。


「今の未来さんは、簡単に動ける状態じゃありません」

「……どういうこと? 一体、何が?」

「それを聞きたいのは私の方です。セルスさんは血まみれで未来さんを背負って帰ってくるし、未来さんは暴走しかけた反動でボロボロになったとも聞きました。それに……フーリィは? 本当に、何があったんですか?」


 メルの表情は不安で歪み、まさしく今にも泣き出しそうな顔をしている。


 当然かもしれない。一切の状況が分からず、不安であるのは未来も同じなのだから。


「……分からない」


 そうとしか答えようがなかった。


 敵が誰で、フーリィがさらわれた目的は何なのか。そして、自分が暴走しかけたとはどういうことなのか。たくさんのクエスチョンマークが未来の頭に浮かび、フォークダンスを踊っていた。


 突然、部屋の扉が開く。


「よう、どうだ? 未来の様子は」


 顔を出したのはアルタルだった。メルが振り返って答える。


「まだ身体は動かせないですけど、目は覚ましました」

「そうか。まあ、目が覚めればひとまずは安心か」

「そちらはどうですか?」

「ああ、セルスか。こっちは帰ってくるなり倒れてからそのままだな」

「そうですか……」


 心配そうに落ち込むメルをアルタルは励ます。


「大丈夫さ、そんなに弱い奴でもないんだろ? 少なくともシーカを子供扱いできる奴なんて、そうそういないさ」

「……だといいのですけれど」

「とはいえ、迂闊だった。俺達もあの場を離れずに残っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに」

「それこそ、今さらです」


 メルの返答にアルタルはふっと笑った。


「……だな。それより、あいつらを呼んでもいいか? 未来が話せる状況なら、だけど」

「ええと……、ちょっとだけなら。今はまだ、薬で身体を回復させてる途中ですので」

「よし! まだ一刻を争う状況であることには変わりないからな。未来には悪いが、多少は無理してもらう」


 部屋を出ていったアルタルは、すぐに戻ってきた。今度は他にも二つの人影がある。


「ちょっと、アル! こんなことして許されると思ってるの? さっさとあたし達を解放しなさい!」


 同時にやかましい叫び声も入ってきて、部屋中に響いた。


「仕方ないよ、シーカ。いきなり飛び出そうとした私達だって悪いんだし」

「あら、随分と大人な口をきくようになったわね。フィーは落ち着いていられるの、今の状況を?」

「落ち着いてなんかいられないよ! 私だって、すぐにもフーリィを助けに行きたいもん!」

「だったら――」

「少し静かにしてください。病人もいるんですよ!」


 メルの叱責が割り込んで、ピタリと言い合いが止まった。


 未来は部屋の入口へと目を向ける。アルタルのすぐ側で並ぶように立っていたのは、何故かぐるぐる巻きに縛られたシーカとフィーだった。


「……これは何かのプレイかな?」


 未来が率直な感想を述べると、シーカが怒ったように口を開いた。


「冗談じゃないわよ! このバカがいきなり――」

「バカはお前だ。少しは頭を冷やせ」


 シーカにバカ呼ばわりされたアルタルが言い返す。


「油断があったにせよ、あのセルスがやられた。相手が一筋縄ではいかないことぐらい簡単に分かる」

「そんなの自業自得でしょ。いつもヘラヘラしてる方が悪いのよ。あたしはそんな失態なんか犯さない」

「そのヘラヘラしているあいつに勝てなかったのはどこのどいつだ?」


 ぴしゃりとアルタルに指摘され、シーカは口をつぐんだ。


 タイミングを見計らい、すかさずメルが未来の方を見る。


「未来さん、話せますか?」

「えっと、話すくらいなら……」


 問題はない。ただ、未来とて知ってることは少なくて、むしろ現状の説明してもらいたい方である。


 未来の分かっている範囲で構わない、というメルの言葉を受け、目を覚ました時のセルスとのやり取りと、その直後に起きた自分の内なる変化を簡単に説明した。


「――なるほどな。正直、未来の暴走ということに関しては様子がよく分からないけど、ただの盗賊ではなさそうだいうのは確かだな」


 未来の説明を聞き終えて、アルタルが呟いた。未来自身も自分の変化に関してはよく分からなかったので、そちらの方は保留とした。もしかしたら、セルスが目を覚ましたら説明してくれるかもしれない。


「とにかく、フーリィをほっとくことはできない」


 現状、一番の気がかりはそれだ。身体さえ自由に動けば、と未来は思う。


 再びシーカが口を開く。


「だから言ってるでしょ。あたしがフーリィを助け出してくるんだから、さっさと解放しなさいよ」

「フーリィがどこへ連れてかれたのかも分かっていないのにか? それに、これが罠って可能性もあるんだぞ」

「罠?」


 シーカが聞き返すとアルタルは頷く。


「フーリィの狙われた理由だよ」

「そんなの、薬で姿を変えたフーリィを調べるためよ。きっと嫌がるフーリィを縛り付けて、あちこち触って、あたしだってしたいけど我慢していることを堂々とやるんだわ」

「この状況で指摘するのもあれだけど、欲望が漏れてるよ、シーカ……」


 同じく縛られた状態のフィーが、ジト目で隣に立つシーカを見ていた。


 アルタルは続ける。


「それなら、まだ平和な方さ。可能性は少ないけどな」

「何よ! だったら――」


 しかし、アルタルはシーカの言葉を遮る。


「そもそも、相手がフーリィの変化を知ってる可能性自体が低い。むしろ、これが俺達をおびき出す罠と考える方が自然だ。正確には、未来か、あるいは――」


 アルタルはわずかに言葉を詰まらせ、ちらりとメルの方を見た。だが、すぐに続きを口にする。


「とにかく、罠という可能性は考慮に入れる必要がある。罠となれば、フーリィは敵にとっても切り札だ。簡単に危害は加えられない」

「違ってたらどうするのよ? 今にもフーリィが危険な目に遭っていたら?」

「――私も、これが罠という意見に同意かな」


 突然、静かな声が割って入った。


「セルスさん!」


 驚いたようにメルが声を上げる。いつしかセルスが部屋の入口に立っていた。


「大丈夫なんですか?」

「万全、とは言えないけどね」


 覇気が戻ってはいないものの、それでもセルスは笑顔を見せた。


「大丈夫。薬もあるわけだし、私の見立てでは明朝には未来君も万全に回復できる」

「明朝まで待てっていうこと?」


 不服そうな素振りを見せるシーカ。彼女をなだめるようにセルスは続ける。


「『神原幸治科学武器』が絡んでいるなら、余計に慎重は期すべきだよ。特に――魔の者達が絡んでいるかもしれないからね」

「魔の者……」


 未来の口から呟きが漏れる。セルスはたしなめるような言葉を、今度は未来に向けた。


「焦る気持ちは分かる。けど、未来君もあまり無理をしてはいけない。今夜だけは安静にしていないと」

「未来は大人しく休んでいればいいの。あたしがフーリィを助ければ、それで終わりじゃない」

「だからっ! シーカはフーリィがどこに連れていかれたのか分かっているのかよ」


 アルタルが指摘するが、その横でセルスがクスリと笑った。


「もちろん、このまま手をこまねいているつもりはない」

「何か案でもあるんですか?」


 メルが尋ねると、セルスは満足そうに肯定した。


「既に手は打ってある。もうすぐのはずさ。――ほら」

「みゃう」


 同時に、どこからか鳴き声がした。セルスの足下にいつのまにか姿を現したのは純白の猫。


「ありがとう、アムール。突き止めたんだね」

「みぃ」


 セルスが覗き込むように屈み、アムールも答えるようにもう一声鳴いた。

 やがて、セルスは再び部屋の皆を見回すように言う。


「アムールの導きと、それからこの千里眼。これで連れてかれたフーリィを追うことができる。――ああ、安心していいよ。どうやら今のところ、フーリィは無事らしい」

「……その言葉、信じてもいいんでしょうね?」


 シーカは疑うような視線を向ける。セルスが笑った。


「信用ないなぁ」

「悪いけど、あなたの得体だってまだまだ知れないのよ」


 まあまあ、とアルタルが割って入った。


「セルスの正体については、また後からでも聞けばいい。とりあえず今は、これで方針が決まったな。俺だって、フーリィを見捨てるつもりなんて最初からないわけだし」

「ええ、準備は一番慣れてるアルさんにお任せします。――それと、シーカちゃんにも」

「えっ?」


 メルに指名され、シーカは意外そうな顔をする。散々にわがままを並べ、それでも仕事を任されるとは思ってもみなかったらしい。


「一人の力では限界もあります。ですから、みんなで力を合わせるのでしょう。違うかしら、シーカちゃん?」

「……うぅ、メル~」

「シーカちゃん、よろしくお願いしますね」


 うるうると瞳を潤ませたシーカにメルは微笑みを向けた。


「それじゃあ、シーカと俺は準備。未来とセルスはしっかりと身体を回復させる。それでいいんだな」

「ちょっと! 私はずっと縛られっぱなしなのかな?」


 アルタルが確認を取っていると、フィーが文句を言った。彼女に答えたのはメルである。


「フィーは私のお手伝いをお願いね」


 すると、フィーもぱぁっと顔を明るくして強く頷いたのだった。

 まだ満足に身体の自由が利かない。それを未来は歯痒く思いつつも、無理をしてはいけないというセルスの意見ももっともだと理解できる。

 自分は弱い、と未来は思う。強くなりたいと思う気持ちもある。けれど、一人の力に限界があるのは、もしかしたら未来に限った話でもないのかもしれない。

 一歩ずつ、と未来は自分に言い聞かせる。今はまだ、皆の支えが頼もしい。その中で一歩ずつ、自分も立ち上がっていくしかないのだ。


「――待ってろよ、フーリィ。すぐに助けてやるからな」


 未来は静かに呟いた。

 どうも~、キトPです。お久しぶりでございます。


 ここまでに張られてきた数々の伏線を……拾えるかっ! ムリ!

 というわけで、ほとんどスルー。触れることすらできやしない……^^;

 というか、シーカのキャラが崩れたような……!? そして、アルタルがこんなに理知的でいいんでしょうか……!?


 完全なつなぎ回になったかもですが、どうか後の人はよろしくです。三河悟さんのカラーが存分に押し出された展開を期待して……え、余計なことはけしかけなくてよろしい?

 ……なんか、天の声が聞こえた気もするので、今回はこれにて失礼します。


 またの機会を~ノシ



キトP

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