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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
17/31

右手に絹人形、左手に絹人形

リレー小説第17話です。


担当 :コンフェクト

代表作:東京タワーの神様と、スカイツリーの神様が、毎日我が家でケンカをします(http://ncode.syosetu.com/n8945bj/)

「では、現状をまとめたいと思います……」


 未来、フーリィ、フィー、シーカ、アルタルにセルスというメンバーが腰掛ける一室の中。

 メルは代表するように前に立ち、こほんと息をついた。


「神原孝治科学武器№6・アジュラによって封印されていた一つの錠剤により――フーリィはエゾモモンガから女の子へと変貌を遂げてしまいました。……未来さんの監督不行届により」


 本を朗読するように抑揚ある声で語り、終いにじろっと怖い目で睨むメル。

 今にダガーが飛んできてもおかしくないような恐ろしい表情に、未来は体を縮こまらせて反省するようにしている。


「こうなってしまったのも未来さんに責任があります。ですから、今後のフーリィも今まで通り未来さんにお任せします――と言いたいところですが」

「……ですが?」

「フーリィは今のところ女の子です、人間です。人間の生活に色々と戸惑うこともあるでしょう。ですので、村の皆でお世話します。……いいですね?」


 メルの言葉に一同は喜んで賛成の意志を告げる。

 周りの反応を見るに、むしろ進んで世話をしたがっているように見えるのは、気のせいだろうか。


「村の皆で、おしゃわします」

「うん、フーリィ。『お世話します』を『おじゃまします』風に言う必要は、今は全くないからね?」

「やだなあ未来くん。私がこんなんなっちゃったのは未来くんの責任なのに」

「どっちかというとキミ自身の責任だよね!?」


 フーリィはあどけない顔でにこりと微笑む。彼女の面容は小動物的な可愛さを持つというに相応しい。……元々小動物なので当たり前とも言えるのであるが。


「しかしこれはこれで……なかなかに抱き心地が良さそうだね」

「うわぁっ、フィー、強いよぅ」


 目をきらりと輝かせたフィーはそのままフーリィに背後から近づき、強く抱きしめる。フーリィの体に所々生えた体毛がフィーの体を撫で、もふもふ感を味わうには最高の素材である。

 その一連の姿に、シーカは目が点になったようにぼーっと見惚れていた。


「フーリィ、次はあたしの番よ」


 ある意味、獲物を狙うような目つきに変貌したシーカ。自分の両手を開き、それぞれの指をわきわきと動かす。口からはよだれが垂れていてもおかしくない形相で、彼女はにじり寄る。


「シーカは嫌だ。怖いもん」

「そ、そんな……。この格差は一体何……」


 その場に崩れるシーカ。フーリィの一言は彼女の心臓を砕くのに充分な破壊力を持っていた。


「しかし、どこが強くなったんだ? とてもそうは見えないが」

「えーと……」 


 首を傾げるアルタルを見て、未来は神原孝治の残した文面をもう一度読み上げる。


『この錠剤はあまりに危険な為、私、神原孝治の科学武器から外した諸刃の道具だ。こんなものを使わなくてはならなくなっているときには、すでに戦いは敗けが確定しているだろう。


 だが、もしこれから先、あの忌々しい戦いが終わった後の世で使わねばならない事態が訪れた時のために、一つだけ残しておく。


 使い方は飲むだけでいい。細胞から強靭にし、骨格、外見に至るまで変化させるもので、開発当初はもはや原型を留めないほどの異形になってしまう最悪のものだった。私はこれを改良、いや改悪した。変化の度合いをさらに強め一定パターンに収めることで、変化の先に人の姿に変わるようにした。とはいえ外見は元の姿とは大きく変わり、別人となることを常に忘れないでほしい


 願わくはこの錠剤が奴等に渡らぬことを願う。


 H25 神原孝治』



「確かに細胞、骨格、外見は見事に強靱になったな……」

「エゾモモンガに比べて、ね。むちゃくちゃ強くなるなんて、どこにも書いてないじゃない」

「いや、確か強くなるって解釈したのはシーカさんだったはずだけど……」


 アルタル、シーカ、未来がそれぞれ告げる。

 フーリィはただの女の子になってしまったようにしか、見えないのである。何か強力な特技でも手に入れていれば、別なのだが。


「ま、外見も見事に強靱になって良かったねぇ、主に可愛さ的な意味でさ。ああ、元の方が可愛かったのかも知れないけれど」


 そんな未来達を見て微笑むセルス。その表情は女の子に見えてしまうくらいに女性的だ。見事な濡れ羽色の髪がカラスの羽のように煌めいている。

 そんなセルスの姿に、アルタルやフィーなどは特異の目線を向けていた。


「私の名はセルス=クライリスト。そしてこっちの子はアムール」


 セルスは胸元のまばゆいほどに真っ白な猫を撫でながら呟いた。


「未来君と同じ、日本人さ。もう八千年くらい生きてるけどね」


 とんでもないことを当たり前のように言うセルス。一同が驚きを隠せない中、メルは気になったことを聞いてみる。


「そんな、過去にも日本から来た人が……?」

「いや、といっても私が産まれたのはエド村なんだ。私は日本と呼ばれる時代に住んでいたんだけれど、気づいたらこの村の赤ん坊になっていてね。不思議なことに、私は今の姿まで成長してから、全く外見に変化が現れないんだ。こっちの猫、アムールも一週間ほど前に旅先で拾ったんだけれど、出会った時からまったく毛並みが乱れることも汚れることもない、不思議な猫でね。私の状態と何か関係があるんじゃないかと思って、連れているんだ」


 言いながらアムールのあごの下を優しく撫でてやるセルス。

 シーカは一瞬、羨ましそうな表情をするがすぐに真面目な顔へと戻る。


「私は結局、人里を離れて過ごすことにしてね。賢者なんて呼ばれながらも、のらりくらりと、ここまで生きてきたわけさ」

「……それがまた、どうしてこちらに出て来られたんですか?」

「契約さ、未来君を強くするというね」


 未来は驚きの表情を見せる。

 確かに未来自身は強くなりたいという願望を強く抱いていたが――契約などという話はまるでしていない。周りの反応を見ても、誰も勝手に契約を結んでなどいないようだ。


「さて、強くなるには実戦が一番だ。魔の者と戦うためにも、それなりの力をつけなくちゃいけない。守られてばっかりは嫌だろう?」


 未来の心の内を見透かすように、セルスは言い放つ。未来としてもそこは譲れないところである。強くなりたい――それが未来が今一番望むことだった。


「前にも言ったけど、私が稽古を付けてあげるよ。未来君がその気ならだけどね」

「……ああ、ボクはやるよ。だから頼む、ボクに力を貸してくれ」


 未来の決心は固かった。少しでも前進する道を選びたかった彼は、セルスの提案をすぐさま飲み込む。反対の意思は見られなかった。


「しかし賢者が来るだの、フーリィが人間になるだの……未来が来てから愉快なことばっかり起きるな」

「ぜんぜん愉快じゃないわよ!」


 豪快に笑うアルタルに、シーカが怒号を放つ。

 シーカにとっては自分より遙かに強い魔法の使い手であり、かつ結果的にとはいえ未来を傷つけた張本人であるセルスに対し、良い感情を抱いていないようだ。





「ごめんね未来くん。フーリィがあの薬を飲まないで未来くんに飲ませていたら……未来くんは特訓しなくて良かったかも知れないのにね」


 翌日の朝、未来が特訓に向けて体の調整を行っていると、フーリィが沈んだ顔でやってきた。そんなフーリィを見て未来はくすりと笑う。


「いや、大丈夫だよ。ボクは頑張って強くなるから。魔の者に対して力を振るえるよう、自分自身を鍛え上げるつもりでいる。だから心配はいらないよ」

「あはは、さすがは未来くん。頼もしいね」


 沈んでいたフーリィの表情も、未来の言葉でぱぁっと明るい笑顔になる。フーリィは笑っている方が良いと未来は思った。


「そんな未来くんが頑張れるように、今朝はおにぎりを作ったんだよ」

「おにぎり?」


 フーリィは手に持っていた物を見せつけるように取り出す。

 メルに教わったのか、彼女の手には不器用に握られた白米の塊があった。


「おおっ、これは」

「特訓が終わったらこれがあるから、頑張ってね。未来くん」

「フーリィ……ありがとう!」


 フーリィが用意したサプライズに未来は感動する。未来の心には俄然、やる気が燃え始めた。





 エド村の中でも特に広く、人のあまり訪れない敷地に未来とセルスは対峙する。

 その傍らにはフーリィ、メル、フィー、シーカ、アルタル……いわゆるいつもの面子が顔を揃えていた。


「さて、準備は良いかな? 今日これからやってもらうのは、私の『神原幸治科学武器№16』……シルク・ストリングで操った人形を相手してもらうことだ」


 彼は真っ白な一枚のマフラーのようなものを取り出し、広げる。広げられたマフラーの一部がちぎれるように切れ、地面に落ちたかと思うと――まるで生き物のように動き出した。それは徐々に形を変えながら大きくなっていき、次第に未来を見下ろすくらいに大きな、人形に変貌を遂げた。

 絹紐が幾重にも編まれたようなその姿は一つの個体として存在するようだった。


「これは……」

「ははっ、驚いたかい? まあ、泥人形(ゴーレム)みたいなものだよ。さあ、武器を構えてごらん」

「わかった。椿」

「うむ。ゆくぞ、主よ」


 言うままに未来は紅の妖刀、椿を手に出現させた。紅葉を思わせるような、微かな赤い光を帯びている日本刀である。未来が現状、満足に扱えるのはこちらの椿のみだ。対となる魔剣、キュアノエイデス・アンフィスバエナを顕現させることは出来ていない。


「主よ、これは模擬戦闘じゃが――真剣勝負のつもりで、望むがよいぞ」

「うん、わかってるよ。決して気は抜かないつもりだ」


 未来はくっと顔を引き締め、両腕に力を込めた。

 椿を胸の位置で構え、人形へと対峙する。


「よし、特訓開始だ」


 セルスがパチンと指を鳴らす。すると今まで大人しく静止していた人形が、大きく後ろに右腕を振りかぶった。そのまま叩きつけるような一撃を未来の頭へと振り下ろす。


「――っ!」

「下がるんじゃ!」


 椿の声を受けて、後ろに飛び退く未来。間一髪で人形の一撃を避けることに成功した。

 その後も人形は距離を詰めるように走り、未来へ向かって拳を突き出す。今度は突き出されたその拳を上手く刀身で受け止める。本来、刀というものは物を受け止めることに適していないが、妖刀椿はそんなにヤワな武器ではない。流石は神原孝治が残した物というべきか。

 未来は反撃の攻勢に出た。刀で拳を押し返した後、力強く人形の腕を斬りつける。斬りつけた際の感触は絹で編まれたとはお世辞でも言いたくないほど硬く感じた。


「やるね、その調子だよ」


 未来と人形の激しく戦う様子をセルスは涼しい顔で見ている。彼は腕の中に収めた猫を撫でながら見物という、余裕綽々の態度だ。


「未来さん、頑張ってください!」

「未来、頑張れ!」

「未来君、ファイト!」


 女性陣の応援が未来の耳に届く。それを聞いて力が出たのか、未来は人形の腕とのつばぜりあいを再度押し返すと、人形の胴体に向かって全力で斬りつけた。人形はその一撃に大きく体をのけぞらせ、地面に膝を付いて倒れる。その姿は息の上がった人間のようだ。


「おおすごいすごい。未来君、今のはとても良かったよ。じゃあもう少しレベルアップしてみようか」


 まるで自分のことのように嬉しそうに微笑むセルス。そんな彼はまたもや指を打ち鳴らす。すると、またもマフラーは末端を一部切り離し、地面に落ちる――と、二体目の人形が姿を現した。


「――!」

「さて、行ってこい」


 人形は未来の元へと駆け出す。跳躍を賭して打ち込まれた拳は絶大な威力で未来に迫る。その攻撃を未来は刀で防御しようとするが――


「あっ!?」


 人形の攻撃は想像以上に強力で、未来の手元から妖刀――椿をはじき飛ばした。飛ばされた刀はそのまま地面をからからと転がる。

 そして人形の第二撃が未来を襲った。


「ぐっ!」


 人形の拳を胴体に受け、未来も先ほどの剣のように吹き飛ばされる。地面へと投げ出された未来は受け身を取ることも出来ず、強く体を打ち付けた。


「くそおっ……」

「主! 無事か!?」

「派手にやられたけど、大したことないよ。椿こそ、大丈夫?」

「そうか。妾も問題ない!」


 地面に置かれた刀を再度握りしめ、立ち上がる未来。周りの皆はそれぞれが沈痛な面持ちで見つめている。


「大丈夫? もうやめる?」

「続ける。そんな心配はいらないよ」


 セルスの嫌味のような言葉に未来は少しムッとした顔で告げる。


「さて、レベルアップといったよね。今度は二体同時に相手だ」

「えっ!?」


 未来は前を見る。すると、先ほどの膝を崩していた一体目の人形が復活していた。

 二体の人形はお互いを確認するように向き合うと、体を翻し、未来へと左右それぞれから襲いかかる。

 右の人形の攻撃、左の人形の攻撃。

 怒濤の攻撃の連打に未来はなんとか対応を試みるが、二体相手ではとてもじゃないが、体の動作が追いつかない。


「あはは、さすがに二体じゃ厳しいかな?」

「大丈夫だ!」


 虚勢を張るように未来は大声を上げ、刀を振り回す。二体のコンビネーションが絶妙なタイミングで襲いかかってくるため、人形に致命傷を与えようにも隙が無い。未来は防戦一方に回るしか無かった。

 人形二体がそれぞれ未来の前と後ろに位置を取り、息を合わせるように殴りかかる。人形の怒濤の攻撃に、未来は活路を見い出すことが出来ない。


(なんとか……反撃出来ないのか……!?)


 未来は強く願う。

 自分にもっと力があれば、強くあれば、この人形達を倒すことが出来るのに――と。

 魔法でもいい。剣術でもいい。

 何か絶対的な力があれば、自分はもっと強固な存在となれるのに――。



 その時、未来の背後から一際大きな音が聞こえた。

 後ろの人形が右側――恐らく、右手を大きく振り回し、攻めてくるその音を。

 まずい、防御しなくては――そう思った未来は右後方に振り向く、が。


「あれ?」


 しかし、後ろにいた人形は何もしていなかった。

 ただ未来を見据えるように、戦闘の構えを取っていた人形がそこにいただけだ。

 そして、次の瞬間……人形は突如、右手を大きく振り回した。水平に薙ぐように、叩きつけるように――攻撃が舞った。


「っ、そこだ!」


 未来はその攻撃を解っていたようにしゃがむことで回避し、同時に刀を人形の腹へと突き立てる。突然の行動に虚を突かれた人形はその攻撃を回避するすべも無く――未来の攻撃を受けるしか無かった。まともに攻撃を食らってしまった人形はその場に滑り落ち、先ほどのように崩れ落ちる。


「よし、いいぞ主よ!」

「もう一体……!」


 未来は残りの人形に体を向ける。同時に、今度は“下から突き上げるように拳を放つ音”が未来の耳に届いた。

 人形は一呼吸の後、右手を大きく後ろに引くと、下段から上段へ打ち上げるように拳を走らせる。未来はそれを上手く横に飛ぶことで回避し――


「くらえっ!」


 人形の脳天を割るように、上空から刀の一閃をブチ当てる。

 強力な一撃を見舞った人形はぐらぐらと体を揺さぶった後、大往生するように前へ倒れ落ちた。

 

「はぁ、はぁっ……」

「すごい、すごいよ未来君! まさかこんなに早く二体の人形を倒すなんて!」

「まあね。さあ、どんどん来なよっ」


 乱れた息を収めながら、未来は妖刀をセルスへと突き付ける。

 一体、先ほどの現象は何だったのか……?

 未来は頭に疑問を残しつつも、人形を交えた特訓は続くのだった。









「ああ疲れた、お腹すいた……。フーリィ、ボクのために作ってくれたおにぎりをちょうだい」


 激しい特訓も休憩を迎え、水をたっぷりと補給した未来はさっき自分のために作ってくれたというおにぎりを所望する。それに対しフーリィはぽりぽりと頭を掻きながら、一言。


「ごめんね未来くん。とっても美味しそうだったから我慢出来なくて食べちゃった」

「食べるなよ!?」


 フーリィの口元にはご飯粒がくっついていた。

どうも、8話以来ですね。お久しぶりです、二回目のコンフェクトです。

前回は一日で更新し、今回は目一杯期間を使いました。がちゃがちゃだー!



この前、会社の帰りに電車を間違えて乗ってしまい、帰宅が無駄に三十分も遅くなってしまうという出来事がありました。

くそうと思ったのですが、その時なんと……考えて唸るだけでは絶対に思いつかないような小説のネタが頭にきゅぴーんと閃きました!

日常生活の回り道も、創作活動においては近道になるかも知れません!



リレー小説を書いていると気づくことがたくさんあります。参加させてもらうことで色々と解ることがありました。今後の創作活動に役立てたいですね!

ますます盛り上がりを見せるリレー小説にこうご期待ください!


というわけで私はルースさんにバトンを回すのです、受け取り拒否は受け付けておりません!w


それではまたの機会にお会い致しましょう( ̄ー ̄)ノシ



コンフェクト

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