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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
14/31

遥か昔からのプレゼント

リレー小説第14話です。


担当 :ルパソ酸性

代表作:TRPG MMO 白紙の世界(http://ncode.syosetu.com/n2043bk/)

 あの凄まじい戦いの後、未来は二人のところに来ていた。もちろん、神原孝治科学武器とバットを見るために。


「ほー。このメイスっていざってときにはこう使うのか?」

「そうそう。ちゃんと掛け声は……」

「ほーむらーん! だったか?」

「うん。でも慣れないやり方で怪我したら元も子もないから気をつけてね」


 メルが信頼している二人なら大丈夫だろうと考えて、未来は二人にコージェンが読めると話し、何か解るかもしれないと持ちかけた。未来はとにかくシーカのアジュラが見てみたかったのだが、アルタルがグイグイ来たため『狭い室内で振らないで下さい』と書かれた注意書を適当に変え、振り方が書かれていたと教えた上でイチローのような素振りをやらして厄介払いしたのだった。


 だがアルタルの振るバット……もといアイギナのメイスは正しいフォームが合わさったことで凄まじい速度になり振っている手元しか見えなくなっていた。


「そのうち魔法も打ち返せそうだな……アイギナって人も魔法打ち返してたのかな……?」

「ねぇ、アジュラには何か書いてないの?」

「あ、ええと」


 未来が中を見ようとした瞬間、それは起きた。


 ベリッ。


「「あ」」


 それは未来が何気なく開いた表紙の上っ面だけ剥がれた音だった。


「ちょ、ちょっと!? どんだけ強い力で捲ったのよ!?」

「そんなに力入れてないよ! お、落ち着けボク。こんなときは見なかったことにすれば……」

「遅いわよ! 私が見てんだから!」


 二人して対処を考えて慌てていた時に、剥がれた表紙の隙間から透明な小さな袋に入った何かが滑り出てきた。


 未来が手に取ってみてみるとそれは薬屋等でもらえる錠剤のようだった。シーカがじっと見ているが未来は気にせず袋から錠剤を取り出す。


 すると、シーカが何も言っていないにも関わらずアジュラからページが一枚未来の顔に飛んで張り付いた。


「モガッ!? フガッフガ……! ンー! ンンー!」

「何? 今度は何!?」

ハバヒヘフヘはがしてくれ!」

「えっ? は、はがせばいいのね! えい!」

「ぶはっ! な、なんだ急に?」


 はがれた紙は他のページとは色が違い、また書かれている字も手書きのようでお世辞にもきれいとは言えない。


「あ、そのページだけ他のと違ってたから後から書かれたんだろうけど……読める?」

「……うん」

「へえ! ねえねえ何て書いてあるの? すんごい魔法でも書いてある?」


 嬉々として聞いてくるシーカと反対に、未来は読み進める度に全く違う方向の内容が出てくるためシーカになんと言うか悩んでしまった。


「あのね、ボクが間違っていなければこのアジュラは……」




 * * * * *




 つかつかつか。


 ぺちぺちぺち。


 未来の落ち着きのない足音に合わせ、フーリィが前足で未来の額を叩く。メルが落ち着いたらどうだという顔で見ているが、未来は気にしなかった。と、言うより気にする余裕もなかった。


 どうせ自分は強くはないさ。


 魔法も今のところ使えない。


 武器を使ってもいっぱいいっぱい。


 いくら平静を装っても、行動に出てしまうところまで来ると隠せない。いや、隠す必要なんて無いじゃないか。不安を抱えて潰れるよりはマシだ。


 不安とは自分のこれからのことに他ならない。アルタルとシーカの二人が持ってきたあの自分のいた時代のバットと本。おまけに片方はあの神原孝治科学武器で、六番と書かれていた。つまり最低でも6つ以上あることが確定している。足元もろくに見えない今、出てきた手がかりは別の謎を連れてくる。コージェンが正しく読めない彼らでは、おそらく更に時間はかかるだろう。それまでただただ待って悪戯に時間を浪費するのか?


 ――冗談じゃない。


 帰らねばならない。帰れないなら知らねばならない。自分がこの時代に来た理由を。いなくなった後に何が起こったのかを。


 未来自身、今後の身の振り方を決めていないわけではなく、既に方針は固まっている。いつまでも村に閉じ籠っていたところで状況は好転しない。なら自分がやるべきことは、最大の手がかりを探すこと。また、以前のようにコージェンが読める事を知った何者かが未来を襲ってこない保証などなく、その時に村の人に被害が及ばない保証もまた無いからには待っていてはいけない。外に出る以外に今の状況を変える術はないのだから。そして少し前の自分では危険でできなかったが今の自分には最大の手がかり――神原孝治科学武器という指針も、外に行けるであろうツテもある。


「ね、ねえ、メル……」

「なんですか?」

「……あの二人について行って調査……しに行っちゃ駄目かな? ……もう一度、外に出ちゃ駄目……かな?」


 メルはその言葉にあわてて未来を見る。


「そ、それは危険です! あの二人はあくまでも用心棒や傭兵で、調査はついでなんですよ!? それに……」

「コージェンが読めるボクが、襲われる可能性は覚悟してる」

「……! そ、それでも……」

「心配してくれるのはありがたいけど、でも知りたいんだ……日本に起こったことを。勇者が、その手がかりを握っている気がするんだ」


 未来は自分がかなり最低なことをしているような気がして罪悪感を少し感じていた。世話になるだけなって大した恩も返さないまま出ていこうと言うのだから自覚はある。しかしそれでも――


「……行きます」

「え?」

「私も行きます!!」

「はいいぃぃぃ!?」

「やっとコージェンが読める人が見つかって研究も進むと思ったら外に出て自分で調査するなんてそんなうらやましいこと許しませんよ! 自分だけ行ったって帰ってくるのは大分先になるんですからその間何も読めない私は一人村で頭にガタが来てる老人の付き合いしていてそんな時に未来さんは新しい発見とかもしてワクワクするんでしょう!? 私も一緒に行ってドキドキワクワクのコージェン解読とか太古の遺跡やら道具やら見つけたいんですー!」

「そんなこと言ったって村は……」

「アルタルとシーカが次に村から出発するまでまだありますしいくらでも方法はあります! ぜーったいに私も行きますからね、何を置いてもぜーったいです! 足にしがみついてでも背中にダガーを突き刺してでもついていきますからね!?」


 ヤバい、地雷踏んだ。


 メルが解読とか遺跡やらになるとまさかこんなに性格が変わるとは思っていなかった未来はあまりの剣幕に反論できず、その後根負けした未来がメルも一緒にという条件を飲まされるまであまり時間はかからなかった。


「……どうしよ」


 頭に乗っていたフーリィに聞いても答えは返って来ないとわかっている。だが、言わねばやっていられなかった未来だった。




 * * * * *




 夜。


 皆が寝静まった時間に人目につかない村の隅に一人と一匹の影が動く。


 未来とフーリィだ。


「……やっぱり、行くまでの間に強くなるためにはこれしかないか……」


 その手には、アジュラの中から出てきたあの錠剤が。


「君それ飲むの? あんまりオススメしないけどなぁ……」

「うひゃあ!?」


 突然のよく通る声、だが聞いたことがあるその声がした方向を見ると未来の右斜め後ろに青い鎧を着た短髪の青年――キュアノエイデス・アンフィスバエナが立っていた。


 椿といいこいつといい、もう少し出るなら「出るよ」くらい言ってから出てきてはくれないのだろうか……


「それは無理だねぇ、椿を見ててもわかるでしょ」

「ボク主なんだよね?」

「そんなことよりそれ、ホントに飲むの? こう言っちゃなんだけど、僕と椿はこれでも魔剣と妖刀なんだよ? それを数億年に渡って封印する物を造ったやつが作った物なんてろくなものじゃないって」

「……流されたのはもうこの際いいや。でもこれがもし書いてあった通りなら――」


================


「シーカ、そのアジュラは、この錠剤を守るために作られた本らしい」

「じょうざい? って……その白いちっこい塊?」

「うん」

「……ふーん。てことは、それはアジュラよりすごいのかな?」


 凄いなんて物じゃない。生命体を根本から作り替えるような物なのだから。


 飛び出してきたページに書かれていたのはこの錠剤についての説明文……というよりは神原孝治の手紙だった。


『この錠剤はあまりに危険な為、私、神原孝治の科学武器から外した諸刃の道具だ。こんなものを使わなくてはならなくなっているときには、すでに戦いは敗けが確定しているだろう。


 だが、もしこれから先、あの忌々しい戦いが終わった後の世で使わねばならない事態が訪れた時のために、一つだけ残しておく。


 使い方は飲むだけでいい。細胞から強靭にし、骨格、外見に至るまで変化させるもので、開発当初はもはや原型を留めないほどの異形になってしまう最悪のものだった。私はこれを改良、いや改悪した。変化の度合いをさらに強め一定パターンに収めることで、変化の先に人の姿に変わるようにした。とはいえ外見は元の姿とは大きく変わり、別人となることを常に忘れないでほしい


 願わくはこの錠剤が奴等に渡らぬことを願う。


 H25 神原孝治』


「……で、それ結局外見がどうにかなっちゃう代わりにむちゃくちゃ強くなる物なのね?」

「あ、うん。だいたいそんな感じ」

「んじゃそれあんたにあげるわ。私はアジュラがあればいいし」

「へ?」


 未来はこの言葉に心底驚いてシーカにまた聞き直してしまった。


「いいの!?」

「いいって。だって外見ってもしかしたら性別変わりかねないんでしょ? まだ結婚もしてないのにオカマとか嫌よ」


 ――それはボクも嫌だな……


================


「女の子になっても君は君だよ、僕らが離れていくことはないさ……むしろぜひ体は女の子になってもらえないかな?」

「ボクは絶対にやだよこの変態魔剣」


 だが、外見がどうなろうと強くなれるならば代償として諦めもつく。それに魔法がある世界なのだから外見くらいいじる方法はあるだろうとも未来は楽観的に考えていた。


「単純に強くなるだけなら椿と僕が鍛えてあげるのに……主なんだし拒否したりしないよ?」

「……最初はボクもそれを考えたんだけど、いかんせん時間がかかる。二人が村を出るまで時間はあるようで無いし、そのうえ鍛えている間にボクが襲われたら回りの人がいないと間違いなく危険だ。いつも皆から離れないようにはしていられないでしょ、それこそボクが強くなるまではさ。だから鍛えてもらうにしてもある程度最初のスペックを上げたいんだ」

「ん、まあ決めたなら構わないけどね。修行はしたほうが間違いなくいいし」

「で、そういうわけだから今から……あれ?」


 急に体をくまなく探し始めたキュアノエイデスが「どうした?」と聞くが未来は慌てているままあちこちをキョロキョロと見回すだけ。


 数十秒くらいだろうか。半分泣きそうな顔をした未来が口を開いた。


「……無い」

「……何が?」

「錠剤と……フーリィが……」

「あれ? さっき向こうの茂みに飛んでったけど……」


 顔を見合せ、二人は茂みに全力で突っ込んだ。だが、確かにフーリィはそこにいたが、様子がおかしい。丸まったまま震えていて、動こうとしない。


「フーリィ!」


 駆け寄った未来がフーリィを抱えると、僅かな違和感が。


「……なんだか大きくなってないかい?」


 キュアノエイデスの言う通り、今こうして抱えている間にも大きく……というより体の造りが変わっている!


「錠剤を飲んだのか!」


 体の変化が始まってしまったからには、もう吐かせたところで止まらないだろうと思い至った未来とキュアノエイデスはただ無事を願うしかなかった。



 * * * * *



「……ら……くん」

「ん……」

「……未来くん」

「……うーん」


 ぺちぺちぺち。


 本日二度目の聞き慣れた音が聞こえてくる。


 そこで未来の目に光が戻った。迂闊にも途中で寝てしまっていた未来は顔を上げ、フーリィを探す。


「あ、あれ? さっきの叩き方は間違いなくフーリィなのに……」


 どこにもそのフーリィが居ないことに次第に焦りが出てくる。が、その焦りは次の一言ですぐにどうでもよくなった。


「やだなあ未来くん、さっきからここにいるじゃないの」


 ゆっくりと声がした方を見る。毛艶はいいがボサボサの髪に体を所々これまた毛艶のいい体毛で覆われた幼さが残る少女がそこにいた。目の前の事象を飲み込めず、背後にいたキュアノエイデスの顔を見やる。


「モモンガ」


 ぼそっとキュアノエイデスが答える。「数分前」単語だけを言葉にする。「女子化」完全に笑いをこらえていた。


 ビクリと未来の全身が震える。目の前の外見小学生の毛だるま少女の話を聞いたらまずい、耳を塞ごうとした。


 遅かったが。


「あはは、こんなんなっちゃったけどフーリィだよ、未来くん?」


「あー――」


 未来が口を開いた。


「えええええぇぇぇぇ――――――!!?」


 未来は村中に響いた声で飛び起きたメル達にこのあと小一時間説教をくらうのだった。

後書きです。

どうもやらかしましたルパソ酸性です。

私の個人的欲望の賜物です!

文句なんてうけつけませーん!

モフモフできるくらいには体毛はありますし毛艶もいいんですよ!


今回は今後の未来の方向性を示しながら、フーリィがフーリィちゃんに。


私はこれで爆弾残してスペランカー先生のように逃亡します!

それでは!



ルパソ酸性

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