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リレー小説:重なる世界の物語  作者: リレー小説ALLプロジェクトメンバー Ver.1.3
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プロローグとここはどこ?

リレー小説第1話です。


担当 :靉靆

代表作:枯れゆく時に思ふこととは(http://ncode.syosetu.com/n6322bi/)

 世界は一つだけではない。


 幾重にも重なるように存在し、隣り合う一つ一つは微妙に異なる。遠く離れた世界は文字通りの別世界である。


 世界の架け橋は存在しない。


 幾重にも重なるように存在していても、その距離は物理的な証明等できない。隣り合う世界ですら辿り着く事はできない。


 世界を知ることはできない。


 幾重にも重なる世界は存在を感じる事すらできない。信じる事はできても感じることはできないのだから知ることもできない。


 世界を作り上げるのは誰なのか。


 きっと誰でもない。自分自身で立ち上がり、時には繋がり、時には引き継ぐ事で作り上げあられる。世界は常に自分と共にある。


 世界が混ざるとどうなるのか。


 そもそも世界を最初に作り上げたのは誰なのか。どのような存在なのか。それすらもわからない。そんな世界という物が混ざり合わさるとどんな事が起こり、どこへ向かっていくのか。その答えは誰にも知ることができない。



===================



 強い日差しが生い茂る木々により柔らかく落ち、爽やかな風が木々の葉を揺らして音が鳴る。そんな大自然の生命を感じられる森の中で一人の少年が目を覚ました。


「ん……あれ……寝てた?」


 少年はいつの間にか眠っていたらしい。


 ぼーっとする頭に手をやり、なぜこんな森の中で眠ってしまったのかを考えようとしたその時、肩の辺りで何かが蠢いていたのに気がついた。


 驚いて飛び起きるように上体を起こすと、肩の辺りで蠢いていたソレは振り落とされまいと少年の服にしがみついているようだった。


 少年がふと思い出すように肩に手をやると、ソレは手の上に移動してきた。そうすることでやっと少年はソレの正体を把握し、一安心することができた。


「なんだ、フーリィだったのか。驚かせてごめんな」


 少年は手に乗せたフーリィに向かって謝った。当のフーリィの方は特に気にした様子もなく、少年の掌の上で毛繕いをしている。


 フーリィは毛繕いを終えると少年の掌から胸に飛び移り、そのまま少年の体をよじ登って胸ポケットに入りこんでしまった。


 少年は苦笑すると、ポケットから顔だけ出しているフーリィの頭を軽く撫でた。


「ここまで懐くのって珍しいどころの話じゃないよなぁ……」


 フーリィはエゾモモンガの子供である。本来エゾモモンガはとても警戒心が強く、人に懐く事はない。また、飼育が禁じられていることも相まって、少年がフーリィに懐かれたのは奇跡と言っても過言ではない程である。


 ちなみにフーリィは生まれてからおよそ4カ月程の女の子らしい。その割にとても賢く、少年は人間の言葉を理解しているのではないかとすら思った事がある。また、警戒心がない訳ではないようであり、少年以外の人間が来ても姿を現さないのであった。


 少年はポケットの中で眠ってしまったフーリィを起こさないように木に腰掛けると、自分が何故森のど真ん中で眠っていたのかを考え始めた。


 少年が森の中に入ったのは間違いなく、少し開けた場所にやってくるとフーリィがいつものように飛んできた。少年がフーリィを見つけたのは1ヶ月前なのでいつもと言えるのかは疑わしいが。


 少年はさらに続きを思い出そうと、さらに記憶を引っ張り出した。


 しばらくはフーリィを肩に乗せたまま森の中を散歩していた。すると、急に地面が揺れたような感覚に襲われ、視界が徐々に暗くなっていった。


 非常に単純で短いが、どうやら少年の記憶はそこで途切れているようだ。


「地震……で気を失った?」


 少年はボソリと口にしたが、首を振って即座に否定した。少年は曲がりなりにもそんなにデリケートではない。


 では、どうして気を失ったのだろうか。


 よくわからない思考の渦に飲み込まれそうになった少年は、気分転換に少し散歩してから帰ることにした。


 歩き出そうとしたところで、少年はフーリィがポケットの中で眠ってしまっていることを思い出した。しかし、すぐにいつも森の出口付近で別れる事を思い出し、それまでには起きるだろうと判断して歩き出した。


 三十分ほど歩くと、森の出口が見えてきた。


 フーリィはまだ起きておらず、少年は起こすかどうかを少しだけ迷った。直後、少年は森の出口の方に違和感を覚えた。


 森の出口がいつもと違う。


 なんとなくそう感じた少年は、フーリィを起こすのをやめて森の出口へ走った。


 結果として少年は固まった。背中に鉄骨でも入っているのではないかと思える勢いで直立不動になった。


 森を抜けた先に広がる世界は一面に広がる大草原だった。


 森の近くに草原が広がっているのは普通はあり得ないことではない。しかし、少年は森の周囲の地形をしっかりと理解しており、その少年の記憶ではこんな大草原は存在しないはずだった。


「ここ……どこだよ」


 見覚えのない景色に迷い込んだ少年は、どうするべきか頭を捻らせた。


「とりあえず……何が起こってるのかわからないのにフーリィを置いてく訳にはいかんな」


 少年は状況がつかめるまではフーリィを一緒に連れていく事に決め、森の周囲を歩き始めた。いつのまにやら目覚めていたフーリィは、ポケットから顔だけだしていた。


「お? フーリィ起きたのか。どう思う? この草原……」


 少年は落ち着くための気分転換にフーリィに話しかけてみた。そこでふと記憶が途切れる直前の地震のような感覚を思い出す。


「もしかしたらあの時の地震が影響してるのかもしれない……。フーリィ。とりあえず何かわかるまでは一緒に来てくれる?」


 少年は言葉を理解しているのではないかと思った事があるが、本気で伝わるとは思っていない。それでもフーリィに話しかけることで、己の気を引き締めた。ポケットから顔だけ出したフーリィは何故か片手を空に向けて突き出している。


 本当に人間の言葉が理解できるのだろうか……。どうやらフーリィは何かしらのやる気に満ち溢れているようだ。

リレー小説を勝手に企画して始めちゃいました。

企画の靉靆です。


とうとう始まったリレー小説の第1話を書かせていただきました。

今後は参加者の作者様が順次おもしろおかしく繋げてくれると思いますので、今後の進行を楽しみにしていただければと思います。


参加者の皆さんが喜ぶと思いますので、感想等お待ちしております。


靉靆

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