第八章『ルール設定そのいち』
第八章『ルール設定そのイチ』
舞台は日露戦争…
目的は短期的には陸戦でもう少し大きく勝たせる。
長期的にはそのこと(日本帝国に恩を着せること)により
闇の帝王として国の進路に影響力を持つ。
つまりプレイヤー(少年)がタイムスリップして歴史改変を行うのだ。
ただし多少の歴史知識を持ったところで、当時の日本とロシアの
国力差を考えると大勝はむずかしい。
だいいち、何の力も持たない中年親父のいうことが通るとも思えない。
『露探』扱いされて捕まりかねない。明治時代…に限らないが…警察とは
あまりお付き合いしたくない。
ここはどうしても少年に特別な力を持ってもらわねば。
アラビアンナイトにはサルタンとか大金持ちが街の『こ…き』に
大金を与えてどうなるかこっそり観察して楽しむという非常に
趣味のよいお話が出てくる。この方式でいこう!
宇宙を旅する高度な意識の集合体…小松左京の短編にそんなの出てきたな…が
たまたま地球を通りかかり、たまたま少年の妄想に接触する。
『まあ、やってみな』一瞬で契約は成立する。契約というほど大仰なものじゃない。
意識体にすれば気まぐれの投げ銭にすぎない。
ルールは以下の通り。
十億ポイント(当時の円)分の能力を使える。
日露戦争で日本が使った戦費は十七億円ほどらしい。
そのうち十四億円が公債という名の借金。
さらにその中の八億円が外国で売った外債。
ちなみに当時の日本帝国の歳入は二億五千万。
貨幣の裏付けとなる金の保有は約一億三千万円分…
一年半ほどで七年分の歳入をぶっ込んだ訳だ。
負けてロシアの属国になるよりはましだっただろうけど
貧乏を加速させたことも間違いない。
貧乏が性格を歪ませることは人も国も変わらない。
少なくとも少年には当てはまることはたしかだ。
十億…歳入の四年分…外債を完済しても二億余る金でなにができるか。
史実通りの日露戦争の戦後に行って、産業の育成や福祉などに能力…金を投入
日本に別の進路をたどらせるというのは戦記にならないので今回はパス。
また能力に上限なしというのも考えたが、やはりパス。
圧倒的な戦力…一千万の軍勢と百隻の戦艦で向かうところ敵なし。
ロシアの大地を踏みにじり、ペテルブルグで城下の盟を誓わせ
中国東北部…以下『満州』はもとよりバイカル湖以東…ウラル以東でもいいが…を
日本民族の生存権として獲得し、将来の世界制覇への基礎とする。
…設定の段階でいきなり終わってしまうからつまらない。
とはいえ、少年にはけなげな抵抗を押しつぶし、思う様蹂躙することを好む嗜好も
あるので経過をじっくり描くのならそれなりに楽しめそうだが。
十億『ポイント』としたのはタイムスリップ先の世界で買い物をしようという
わけではないからだ、まあ、買うこともできるが…
少年は消費するポイントに応じて武器、弾薬から兵士まで任意のものを
…もちろん後に述べる制約の中でだがあらゆる理屈と時空を超えて
明治時代の日本に出現させることができる。
武器、兵器など装備については1930年までの日本軍のものを使える
…と一応決めたのは、日本陸軍の装備は日露戦争のころから基本的に
ほとんど進歩していないので大きな違和感を抱かせないだろうからだ。
ただし戦車や航空機はのぞく。
非力な戦車や航空機でも明治時代なら確かに心強いがだろうが
おそらく消費するポイントが膨大になるだろう。全体の能力ポイントに
限界がある以上、あまりに時代から飛躍したものは使いにくい。
大日本帝国がまるっきり生産できない…補充が聞かないものはだめだ。
それにそんなものが戦場に現れたら欧米列強の不審と警戒を招くだけになる。
従って妥当な線としては、史実の日露戦争直後に登場した火砲の類い、
そして鉄かぶとなどの小物が未来兵器ということになるだろう。
さて、ポイントをどう使うか?そのためには人や物を出現させるのに
どれだけのポイントを使うかという設定をしなくてはならない。
さらに史実のどの時点で介入するかによって能力ポイントの配分も
自ずと変わってくる。
これ以上の詳細な設定をつめる前に史実の日露戦争の概略をまとめ、
方針を検討することにしよう。
つづく
あいかわらず『艦隊』どころか戦記が始まってません。ましてや何やら日露戦争の、しかも、陸戦に話が向いている様子…何しろ頭の中の練りすぎて発酵…腐敗?し始めた妄想を思いつくまま垂れ流しているものですから。あきらめておつきあいください。