終章『愛と青春は無いけど…旅立ち』
終章『愛と青春は無いけど…旅立ち』
宴が終わり、皆が帰った後の一人の部屋。レイとミサが整えてくれた
寝酒セットをちびちび飲みながら…まだ飲むのか、はさておき。
椿は次の旅へと思いを馳せる。
『どこへ行くか』
ここで気がついたことは…というより、ずっと前から気がついてはいたのだが、
面倒くさいので深く考えないようにして来たことだ。
『この先の歴史は俺が知っているものとは違っているだろう』
もしかするとほとんど変わらないのかもしれないが、昭和十七年六月…
ミッドウェー海戦直前…直後でもいいが、戦艦大和艦上…という定番の舞台に
行けるとは限らないのだ。
何回か途中下車して、様子を見るという訳にもいかない。
なぜなら、ミッションコンプと引き換えに得られるのは、『この世界』の未来のどこかに
タイムスリップする能力であり過去には行けない。または元の平成の…椿にとっては
腐った現代に戻るという選択肢があるだけである。なんでこんな選択肢があるんじゃとも思うが、
ゲームにはほとんど使わない魔法とかカード…桃太郎…鉄の『焼きみそカード』とかが
つきものである。何かの伏線になっているのか…といっても妄想を垂れ流しているだけの
椿に思い当たる節は無い。
一旦タイムスリップしてしまえば、その時点でのミッションを設定して、それをクリア
するまで頑張るしかない。その手を選ぶのも確かに一策ではある。例えば、起こる可能性大の
第一次世界大戦やシベリア出兵に干渉するとか…
だが、つまらん!…繰り返すようだが、椿の目的は『より良い日本』を創ろうなんて
ものでは決して無いのである。『自分が楽しむため』にこの世界もその歴史も存在するのだ。
ただその過程として『よりましな日本』が必要だと考えられれば、そのように仕向けるよう
手を打ったにすぎない。
ちまちまと微調整をしていって、もしも万が一にでも…戦争無しで、あの現代と
同様の未来に直結するようなことになったりしたら…嗚呼、つまらん。
さあ考えよう、どう設定すれば一番楽しいか…
椿は声に出さず笑った。一人の部屋…酒を飲みながら、しびれ始めた頭で考える妄想戦記…
そうだ、これはもう何十年も繰り返しやって来たことじゃないか。
おわり
途中…三十章ぐらいのときにこのラストの形は浮かんでいたのですが、思い入れが強い分だけ苦労してしまいました。やっぱり垂れ流してるときが楽というか無責任に楽しいですね。ともかくここまで長い間おつきあい頂いて本当に有り難うございました。