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第十一章『びんぼうたまなし』

第十一章『びんぼうたまなし』


日露戦争の経過はざっと以下の通りである。


1904(明治37)年2月開戦

陸軍満州野戦軍…第1、2、4軍は朝鮮半島および遼東半島に逐次上陸、

戦略的に遅滞防御をとるロシア軍を追って北上。

8月遼陽の会戦、10月沙河の会戦、翌1905年1月黒溝台、

2月奉天の会戦と続いた陸戦で常に辛勝ながらも『優勢』の形を保ち続けた。

しかし、兵力、砲火力、弾薬などの不足に悩みロシア軍の

壊滅という大目的は果たせなかった。


当初陸軍の構想に無かったのが遼東半島先端の旅順要塞陥落攻略戦である。

兵站のための制海権確保は海軍の役割だが、ロシア太平洋艦隊が

要塞内で保全主義をとったため陸上からの攻撃が必要になった。

近代的要塞攻撃のノウハウも物資も不足していたため攻撃を担当した

乃木大将指揮する第3軍は半年をかけ、死傷6万という大損害の後

ようやく攻略に成功。ロシア艦隊も陸上からの砲撃で壊滅させる。


海軍…連合艦隊は開戦早々、朝鮮半島のロシア分遣艦隊こそ撃滅に成功するが、

旅順要塞に立てこもる主力とウラジオストックの有力な巡洋艦隊の

通商破壊戦に手を焼くこととなる。

ロシア本国の艦隊が極東に回航され、二倍の敵と対することになれば

制海権確保は絶望的になってしまう。


8月に起きた黄海海戦およびウルサン沖海戦で旅順の主力艦隊を撃破し、

ウラジオ艦隊を壊滅させたが気を抜くことはできなかった。

港湾の封鎖という艦にも人にも多大の労苦のかかる作戦行動は陸上からの攻撃で

旅順艦隊の壊滅が確認されてようやく終わる。


艦隊の整備と乗組員の訓練に十分なときを得た連合艦隊は翌年5月

ようやく回航されてきたロシア第二、第三艦隊…いわゆるバルチック艦隊を

対馬沖に迎え撃ち海戦史上に残る大勝利をあげる。


この『日本海海戦』の結果を受け、アメリカによる講和仲介が本格化する。

戦力を含む国力が枯渇しきっている日本も

相次ぐ敗報と国内の革命勢力の広がりに悩むロシアも

交渉のテーブルにつくことを了承する。


アメリカのポーツマスで結ばれた講和条約は満州におけるロシアの

勢力圏の後退、鉄道などいくつかの権益の譲渡、南樺太の割譲

そして朝鮮半島での日本の指導権確認などの内容で結ばれた。

しかし多大な犠牲を払ったにもかかわらず、賠償金を獲得できなかったことに

多くの国民は不満を持ち暴動にまで発展した。


『愚民どもめ』と思う傍ら、浅はかなりに国家にもの申す当時の国民に

頼もしさも感じる少年であった。


さて、いよいよ歴史改変の旅に出なくてはならない。

海軍はとりあえず放っておくことにする。史実通りに推移すればそれほど問題はない。

『バタフライ効果』で日本海海戦があれほどの完勝にならなくてもよい。


敵にあとが無い以上、自らの半分が沈んでも敵を全滅させればよい…からだ。

その方が『百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る』などという

数理を超越した迷言が後世に残らないかもしれないし。


ただ、日本帝国の闇の帝王として影響力を行使できるようになったら

その後の建艦計画については指導しておくべきであろう。


日本海軍は旅順口封鎖作戦のおり、六隻しか無い戦艦のうち

『初瀬』『八島』の二隻をロシア軍の機雷によって失った。

その代艦の獲得が急がれた訳だが、結果的にいずれも戦争には間に合わなかった。

そして、それらの艦は誕生と同時に旧式艦となる運命だった。


1906年に出現する英国のドレッドノート型戦艦、1908年の

インヴィンシブル型巡洋戦艦はそれまでの戦艦の二倍の砲火力と高速力で

世界を驚愕させることになる。


急遽英国に注文した『鹿島級』戦艦二隻はもう仕方ない。

『筑波級』大型装甲巡洋艦も日本が初めて建造する大型艦ということで

スキルアップのためには有効だろう。


だが、ド級誕生以降も計画、建造され即二線級化して十五年足らずで姿を消す

『薩摩』『河内』などの前ド級艦,準ド級艦は国富の乱費にしかならないから

入れ知恵をする必要があるだろう。


陸軍…をどうするか?

人間真に困ったときでないと助言や援助はありがたみを感じない。

史実でそれは、開戦半年後…1904年8月にやってくる。


遼陽の開戦に辛勝したものの砲弾は枯渇、外国マスコミへの対応のまずさから

会戦の結果に疑問符をつけられ、戦費に頼む外債の募集に露骨に

悪影響が出た頃。

乃木第三軍の第一回旅順要塞総攻撃が死傷16000という大損害をだして

失敗した頃…


『食うに食無く、撃つに弾無し』


『だめかもしれない』…国家と軍を預かる人々の頭にこの言葉が浮かびだしたとき…


少年はゆく!自らの楽しみのためだけに!


つづく



よくここまでお付き合いくださいました。有り難うございます。しかし、戦記が始まるまでもうちょっとかかります。主人公の少年は自分が楽しむためにはやらねばならないことが、まだあると考えているからです。次回はきっと『ルール設定そのに』になる…と思います。末永くよろしくお願いいたします。

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