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第一章『トラック島の囚人部隊』

初めての小説です。妄想(架空)戦記なんですが、当分の間なぜそんな妄想をしてるかという話が続くと思います。いつになったら戦記が始まるの?とつっこまれたらとにかくあやまります。意外で緻密な歴史改変や迫力満点の艦隊戦を期待される方にはおすすめ度低いです。すいません

この物語は妄想戦記である。

ある人間の頭の中での50年にわたる『妄想の艦隊』のはげしくそして悲しい記録になる…はずである。



第一章『トラック島の囚人部隊』


彼が物心ついたのは昭和30年代の初め頃、第二次世界大戦の終結から10年…

『もはや戦後ではない』といわれ始めた時代である。

とはいえ、戦争を含めた歴史の影は色濃く残っていた。『秘密基地』として入りびったったほら穴は

大人たちには『防空壕』とよばれ、なかば崩れたレンガ塀に囲まれた『焼け跡』と称する空き地の存在も

めずらしいものではなかった。

繁華街や駅前、寺社の門前などには白衣に略帽、義手や義足をつけた『傷痍軍人』がならんでいた。

アコーデオンから流れる『ここは御国を何百里〜』の物悲しい音をバックにうずくまる彼らの姿は

もし持っていたならば、子供たちが5円、10円の金を白い箱に投げ込むにじゅうぶんなインパクトがあった。

40年代にはほとんど見ることのなくなった彼らはどこにいったのだろう。

まだ存命の人もいるだろう。日本が彼らに『こ…き』をさせなくてすむ国になったということか…


少年は日本全体がまだ貧しかった当時のレベルでもかなり貧しい家庭に育った。

まわりから『ちょーせんぶらく』と呼ばれる一画に住んでいた。

東京のS区の外れ、坂の下、すぐどぶ川があふれる…文字通りどん底。

彼にはまだ理解が及ばなかったが、おそらくなんらかの差別も受けていたことだろう。

ここには半島の人だけがいた訳ではなく、少年の一家も日本人であった。

少年の父は廃品回収業者…くず屋をしており、半島の人がやってる『仕切り場』という換金所に属していた。

部屋も借りていた。立場の弱さ、少年自体の特性…気が弱く運動神経もあまり発達してない…から

よくいじめられた。もちろんまわりの日本人からも。

職業の貴賎、貧富の差…たてまえはともかく少年にとり呪わしいヤな時代であったことは間違いない。


毎夕近所の家に買いにいかされるどぶろく…密造だろうなあ…をがぶ飲みする父親は

ほぼ一週間に一度の割合で家族に暴力を振るう準酒乱で、後に肝硬変で死ぬ。

父親のふたりの兄弟も脳溢血とアル中で死亡とじつにヤな家系なのである。


この父親は大戦中応召兵として戦地にいっていた。飲んで暴れない夜に語るひとつばなしに

『トラック島の囚人部隊』という演目があった。

…そこが大日本帝国海軍の一大根拠地だったことを知るのはずっとあとのこと…

土木作業などのために囚人で編成された部隊が送り込まれたという。

トラック基地は米軍のはげしい空襲にさらされるのだが、囚人たちは防空壕に入れないというのだ。

自分は足が速かったので常に真っ先に壕に入ったと話す父親を『ころぶかなんかすればよかったのに』と

心の中でにらみ据える少年。『きじゅうそうしゃ』とかでくたばっていれば、僕はこんなひどい境遇にいないのに…

それだと『僕』は生まれていないのだが…

おそらくそれが…妄想戦記『三丁目の艦隊』の記念すべき?第一章だったのだろう。



つづく


作中に現代では人によって不快を感じる表現があるかもしれませんが、当時の雰囲気を出すためのものです。

ご理解いただくようお願いいたします。






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