出会った二人
『カサリア王国第一王女リーナ様、ご入場!!」
その高々と響く声に緊張した面持ちで中へと入る
すでに、数多くの貴族や王妃決めに参加した姫たちが会場内にいた
時刻は17時45分、どうやら私たちは遅く来たみたいだ
ソフィアに、ドレスを着せてもらって化粧やら爪の手入れやらを髪のセットやらを丁寧にソフィアがやったものだから時間がギリギリになってしまった
今回の歓迎パーティーは、侍女も付き添いが許可されていたのでソフィアも私の後ろにドレス姿でついてきている
どちらかというとソフィアの方がお姫様っぽいので微妙な気持ちの私であった
それだけ、ソフィアが美人さんだと言うことだけどさっきから変な視線があたっていて気持ち悪い
会場は広く、テーブルが何台も置かれていて食べ物やワイン・お酒などが置かれていた
だが、大人数のためガヤガヤとうるさい、耳を塞ぎたい気分だ
そんな中、異様に黄色い悲鳴が聞こえてきた
何事かとソフィアと私は悲鳴がしたほうを見ると、若いお嬢さん方が一人の男性を取り囲んでいた
「すごいわね」
「ええ、思っていたよりもすごい」
私がソフィアに確認すると肯定の返事が帰ってきた
やっぱりそうだったんだね
アレが、あの美少女姫様たちに囲まれてキャーキャ言われているのが、アデイル帝国第一皇子ヴェザイン様
銀色の髪が目立つ、とても顔立ちの整ったかっこいいの部類の顔立ちの人だった
ただし、その表情がどうもいまいちわからない
まったく、あれだけの美少女軍団にキャーキャー言われているのに、本人はまるっきり喜んでいる表情を見せない
というか、本当に無表情なのだ
逆にあれだけ表情が出ないと、すこし怖くもあると思う
「あれが【無表情皇子】か、ピッタリじゃない」
「ですねぇ」
とりあえず、皇子の元には行かなければならないが、今のハーレム状態では行けそうにないので四大公爵家の方々から挨拶に行こうと決めた
このパーティーでは、事前にソフィアから皇子と帝国に影響力の強い四大公爵家の方々に挨拶をしなければならないと聞かされた
「ソフィア、悪いんだけれど公爵様の顔とかしってる? 私分からないから見つけてほしいのだけれど」
「はい、かしこまりました」
パーティーとは本当に面倒なものだな
~SIDE ヴェザイン~
俺が緊張した面持ちでパーティー会場に足を運んだのは17時20分ほどで、行ってすぐにどこかの姫につかまり10分もしない間に何十人という美少女姫に囲まれてしまった
彼女たちは、本当に綺麗でとても美しかったけれど、なぜかそれだけでもあった
普通の男なら泣いて喜ぶ場面なのだろうか?
俺ってやっぱりすこしおかしいのだろうか?
彼女たちに話しかけているのに、そんな自分の事ばかり考えているのは失礼だとは思うが悩まずにはいられなかった
つい最近しったのだが、どうやら俺は貴族の間で男色家という意味不明な疑惑をもたれている
否定したい気持ちもあるのに、いざこのような美しい姫君を前にしてもドキドキしない、興奮しない
だんだんと不安になってきた
俺は女性が好きなはずだ、だからドキドキしてくれよ
『カサリア王国第一王女リーナ様、ご入場』
丁度40人目の姫が会場入りしたらしい
俺に声をかけてくれる姫たちを無視することもできず、顔はそっちに向けて目でその姫を見た
なんてかわいらしい方なんだ
その時、俺は始めて胸の高鳴りを感じた
黒に統一されたドレスが、同じ黒髪とピッタリあって今まで出会った誰よりも美しい女性だとかわいらしい女性だと思った
多分、これは恋? いやまさか、俺に限ってそんなことはまずないだろう
感情をうまくだすことが出来ない俺が恋だなんて、それも一目惚れだなんてあるはずがない
しかし、彼女が俺の視界から見えなくなったあとも、この胸の高鳴りは消えることはなかった
これが、彼の彼女との最初の言葉を交わすことがない出会いであった
~SIDE リーナ~
ようやく四大公爵の内三人の公爵様に挨拶を終えた
四大公爵、北を担当するサードレアス家、南を担当するカンザイル家、東を担当するエルイス家、西を担当するカタール家である
そのうちのたった今、北・南・東の公爵の挨拶は終わり最後は西のカタール公爵様だけだ
しかし、どの公爵様も何度も何度も自慢話ばかりで聞いている方は滅入るというか疲れた
数分で一人済ませるはずだった挨拶が、三人だけでも50分はかかっている
挨拶だけでもなんだかつかれたので早く帰りたいっていうのが今の私の本音だ
すでにお腹も空いていて、早くご飯が食べたいけれど挨拶も無にテーブルのご飯に手をつけてしまうとマナー違反なので食べることはできない
ソフィアからこっそりともらった一枚のビスケットを口に運びこっそりと食べて最後の公爵様の挨拶へと向かった
「リーナ嬢、お久しぶりです。 覚えていらっしゃいますか?」
西の公爵様であるカタール家の方にご挨拶をすると向こうの方がお久しぶりと言ったので首を傾げた
私はこの国の貴族の方とは一度もお会いしたことがないからだ
「いや、覚えていらっしゃらないのも無理はない、そうですねあなたが4歳の時に誘拐犯からあなたを救ったおじさんと言えばよろしいでしょうか?」
「!? そうでしたか、それはそれはありがとうございます」
そこで、ようやくある一点だけ思い出した
私が誘拐された時に助けてくれたのが、アデイル帝国の人間だったと父様から聞いたことあった
私が誘拐されたことは極秘とされているので、知っているのは捜索に加わった人か助けた人しか知らないはず
つまり、多分本当にこの人は私を救ってくれた恩人だということだろう
「いえいえ、なんともまぁ可愛らしくなって、あの時は恐怖のあまり泣き顔しか見れませんでしたからなぁ」
「いえいえ、お恥ずかしい限りです」
出来れば忘れてほしい限りです
「おっと、いけないけない、挨拶が途中でしたね。 アデイル帝国四大公爵家、西の財政担当をしているカタール家当主でございます、何卒よろしく」
「よろしくおねがいします」
私は覚えていないけれど、向こうは私を知っているそうで何かと話しやすい方であった
恩人だとはしらなかったけど
「貴方様のご活躍はかねがねわたしの耳にも届いております、なんでも数年前にスパイスと呼ばれる料理の道具をお作りなさったとか、国の男を何百人もふったとか興味深い話からおもしろいお話まで」
「そうですか、いったいどこからそんな情報を?」
「そちらの友人からですね、それからなんでもおもしろい別名でも親しまれているだとか」
「それは黒歴史です!!」
今も続いているから歴史ではないけど
でも一体だれよ!!【悲劇の王女】なんてひどい名前をつけるなんて!!
「ははは、リーナ嬢も大変そうですな! 一度しかお会いしませんでしたが元気そうでなによりです。 もしなにかあれば、私に頼っていただいても構いませんからなんでも相談に来てください」
「わかりました、ありがとうございます」
最後のカタール家のご当主様はなんともやさしい方で、小さいころに一度しか会っていないはずの私を覚えていてくれる、そして心配していてくれたほどに面倒見がよい方みたいです
なによりも、この国の四大公爵家のカタールご当主から頼ってもいいと言われたのはうれしいことだ
頼りになる方が一人でも多くいたほうが今後とも助かることになるだろうから