プロローグ
私が17の誕生日を迎えてひと月が立ったとき王の執務室から大声が響き渡った
「婚姻届けだとぉ!?」
「違います、大国の后妃決めです、何人もの姫を集めてそこから選定するのです」
「同じだろう!! 儂のかわいいかわいいリーナが嫁に行くかも知れんのだぞ!!」
「はいはい、でもリーナ殿下なら行くとおっしゃると思いますけどね」
机を叩いて嘆いているのは今年50歳となった、ある国の国王様
ある国とは想像し難いことだろう、ある国の名をカサリア王国
賢王と名高い事で知られているこの国王は、それ以外にも親バカでも知られている
「過保護もたいがいにしないと、他の二方の子にも嫌われますぞ」
「それではまるで、儂がリーナに嫌われている見たいではないか!!」
「嫌われてはいないと思われますが・・・・ウザがられていると思いますよ」
その言葉に少なからずショックを受ける国王
しかし、この話はこんなおじさんが主人公!! の話ではない
この物語の主人公は、カサリア王国の第一王女、名前をリーナ=カサリア
豊かなこの国の人気者にして別名【悲劇の王女】で知られている王女だ
リーナ王女の人柄、それを一言で表すなら平凡と言っていいだろう
やさしいと言えば人並みにやさしく、賢いと言えば人並みに賢い
運動神経がいいといえば平均的で、美人と言えば人並みに平凡な顔立ちだ
しかし、何故彼女が王女でありながら悲劇と呼ばれるまで至ったかそれには彼女の性格とこれまで歩んできた人生が深く関係していた
彼女は、生まれた当初に体が健康的で無く三歳ほどになるまでうまく言葉すらはっせなかった
四歳になると、普通の同年代の子供と同じように体力もついたが丁度その時に誘拐されてしまった
無事に保護されたが、翌年の五歳には流行病で半年間昏睡状態に陥った
六歳になるころには精神的にも肉体的にも大きく成長していて、よく城から抜け出して城下町に出かける事が増えたという
なにより、最大に悲劇と呼ばれるようになったのは他でもない彼女が15歳の時だった
彼女が始めて闘技場とよばれる場所で大会があった時のことだった
三年に一度の大会で、王女は優勝者に記念品のトロフィーを送る役割だった
そして、その時の優勝者が、カサリア王国の国軍大将サークス=ワットス33歳であった
若くして大将へと上りつめた彼は顔も良し性格良し家柄良しの優良物件であったが色恋沙汰は無く噂では男色家とも言われるほどの人物
しかし、この優勝トロフィー贈呈の時に彼はやってしまった
なんと、リーナにプロポーズを大勢の観衆が見守る中やったのであった
しかし彼はまだ女性に大してうまく告白したことがなかったことで、ある失敗を犯してしまった
「えっと、質問してみましょう、国軍大将のサークス殿、やはり大将ともなる方ですから戦うという行為が好きなんでしょうか?」
「・・・・・」
「大将さん?」
「・・・・す」
「お~い、大将さん?」
「・・です」
「す・き・な・んですか?」
「すきです!!」
「やっぱり!! 私も好きな方なんですよ」
「ほ、本当でありますか!?」
「ええ、でもなかなか見れないんですけどね」
「いえ!! あなたのためならばいつでも会いに!!」
「戦うっていうか、男のたたかい? なんか燃えますよね?」
「・・・・え?」
次の日には、大将の自宅にたくさんのお悔やみの品が届けられたとか
リーナは平凡で、どこにでもいそうな普通の女の子
しかし、彼女の人を寄せ付けるオーラを放っているためかこの大将のプロポーズ以降おみやいやらプロポーズやらが押し寄せてくる
それもすべて本気だからやりきれない
しかし、そのすべてをお断りした彼女リーナは、巷では男を絶望に導く【悲劇の王女】だと、不名誉な名をつけられる事となった
そんな彼女に届いたのは一つの招待状
隣の大国であるアデイル帝国からだった
そしてそのないようとは、各国から姫を集い王妃を決める事としたために是非ともリーナ王女に出てもらいたいという招待状
緊急会議の末に、リーナ本人から自分は行くことにするとの申し出をだし、それから四日後にアデイル帝国の帝都へと向かうこととなった
これは、一人の王女と一人の皇子の面倒くさい恋愛事情である