4 〜もう、ゾッコン〜
連投です。
ディンが教会に着いたのは、お昼を過ぎた頃だった。彼が海岸で発見した身寄りの無い少女は、怪我が癒えるまでここにお世話になっている。
「あんな子でも、奴隷なのか」
ロイドの現実感に乏しい感想が頭の中に甦る。
サンテでも確かに奴隷制はあったがそれは過去の話で、ディンが産まれるもうずっと前に廃止されている。今では完全に非常識な制度という認識だが、そうではない国も存在するのが現実だ。その証拠が、今回沈んだ奴隷運搬船であり、溺死した乗組員の大半を占める奴隷達だった。
「おや、ディン。今日も来てくれたかの」
なんとなく淀んだ思考に陥っていたディンに声をかけてきたのは、白髪のおじいさん。まとった雰囲気まで温和なこの人が、サンテ教会のワトソン神父だ。
「すみません、毎日押し掛けてしまって」
「いや、誰か話し相手がいた方が、彼女にとってもいいはずだのう。シスター達はすっかり相手にされていないようだからのう……」
溜め息をつく神父は、本当に困っているようにしか見えない。
この様子だと、彼女の心境が変わったというような事も無いようだ。
「昨日から、シスター・メイをノエルの担当にしたよ」
「メイ?あの元気娘ですか」
いつも全力でドタバタと走り回っている若いシスターの姿を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれてくるようだ。
「あの有り余るパワーが、ノエルにいい影響を与えてくれるといいんだがのう」
「きっと大丈夫です。僕にも少しずつ、話してくれるようにはなってきてますから……多分」
苦笑い。
ここに来てから三日経った。あっという間と言えばあっという間、長かったと言えばだいぶ長い三日。つまり私は、それで何か感じるほどの感情を持ち合わせていない。でも多分、あの人は今日も来る。
ご精読ありがとうございました☆