悪役令嬢の先手必勝:婚約破棄される直前に国家反逆罪を着せましたわ
華やかな夜会。シャンデリアが輝く中、第一王子・アルフレッドは冷酷な笑みを浮かべて、わたくし、ロザリアへと歩み寄ってきました。その隣には、守ってあげたくなるような可憐さを装った庶民の娘、マリアが寄り添っています。
「お前に言いたいことがある」
王子の声が響いた瞬間、わたくしの脳内クロックは限界まで加速しました。
(きましたわ!――これよ、これだわ!巷で流行りの「婚約破棄」ね!?マリアが流した「わたくしがいじめた」というデタラメを信じ込んで、ここでわたくしを貶めるつもりね!見てなさい、あのマリアの顔。俯きながら口角がピクピク動いていますわ。計画通りで楽しくて仕方ないのでしょうね……。
……ふざけないで!
わたくしはプライドの高い悪役令嬢ですのよ?身に覚えのない泥を塗られて「はい、左様でございますか」なんて引き下がるわけがないでしょう。やられる前に、殺る。冤罪を着せられるなら、先にそちらを「真実のクズ」に仕立て上げて差し上げますわ!(ここまで0.3秒))
「お前……」
王子が断罪の言葉を紡ごうとした、その刹那!
「待ってくださいませ!わたくしも、王子には言いたいことが御座いますの!」
わたくしは扇を力強く広げ、王子の言葉を物理的に遮る勢いで一歩踏み出しました。
「な、なん……」
口をぱくぱくさせる王子。おだまりなさい!
言い淀みましたわね!わたくしの勝ちですわ!王子の勝ちの目は、ここしかなかったと言うのに、あとから気づいてももう終わりです!
ここからはわたくしのオンステージですわ!
「殿下!わたくしという婚約者がいながら、公衆の面前でその女とべたべたと!節操という言葉をご存知なくて!?先日は、わたくしとの約束を破って、その娘と下町の甘味処で『あーん』をしていたという目撃情報もございますわ!」(適当に言ってますわ)
「そ、れは視察の――」
「黙らっしゃい!さらに、わたくしが用意した誕生日の贈り物を、あろうことか質に入れてその娘への貢ぎ物に変えたとか!?」(なお適当に言ってますわ)
「バカな!そんな事実は――」
「事実がどうかなんて、一目瞭然ですわ! 皆様、ご覧になって!この殿下の狼狽えよう!やましいことがあるからこそ、そうやって顔を真っ赤にして反論されるのですわね!あぁ、嘆かわしい!王室の矜持はどこへ消えたのですか!この浮気者!税金泥棒!愛の狩人(笑)!」(……なんかだんだん楽しくなって来ましたわ!)
「おま、それ……っ、言い掛かりだ!」
「言い掛かりですって? 泣きたいのはわたくしの方ですわ!婚約者の不実を嘆き、夜も眠れず、枕を涙で濡らして……見てください、この目の下のクマを!(昨夜、徹夜で新作の女性向け小説を読み耽っていてよかったですわ!)」(適当に言うって楽しいですわー!!)
周囲の貴族たちがヒソヒソと囁き始めます。「王子、ひどい……」「あんなに淑やかなロザリア様をそこまで追い詰めるなんて」「確かにあの庶民の娘、鼻につくわよね」。
形成逆転。
マリアは「え、話が違う」と言わんばかりに呆然と立ち尽くし、王子は怒りと困惑で茹でダコのようになっています。
まだよ!まだ!ここからたたみかけるのよ!
「それだけではありませんわ!陛下、お聞きください。殿下はその娘にいい格好をしたいがために、裏でこう豪語しておりましたのよ。『父上はもう古い。早く隠居させて、私が王になれば、この国をマリアの遊び場にしてやる。老いぼれ(陛下)の小言を聞くのももう限界だ』……と!
わたくし、陛下を敬愛する者として、そのお言葉だけは聞き流せませんでした!これこそが、わたくしが許し難い最大の理由ですわ。陛下への不忠、わたくしは絶対許せません!」(適当に言うのってなんて楽しいんですのー!!!)
「さあ殿下! 『父を愚弄し、女に溺れた狂王の卵』!」
これほどまでの証言(わたくしの妄想)が揃って、まだ言い逃れができるとお思い!?
今すぐその娘と、地の果てまで転げ落ちるが良いですわ! あー楽しい!オーッホッホッホッ!!
これで王子は、宗教界からも王家からも完全に見放されますわ。100%の捏造ですが、誰にも「言っていない」ことを証明することはできません。これぞロザリア流、華麗なる断罪ですわ!
「もう限界ですわ!わたくしのような清廉潔白な乙女には、貴方のような不誠実な方は相応しくありません!――アルフレッド殿下、わたくしから貴方に、婚約破棄を言い渡します!!」
王子はあまりの展開に打ち上げられた魚のように口をただ動かしている。
わたくしは大げさによよと崩れ落ち、陛下の前に跪いた。
「陛下……っ、王子は、王子はわたくしを裏切り、この娘と……!わたくしの尊厳はズタズタですわ……!」
「……アルフレッド。お前、そこまで救いようのない馬鹿だったのか」
「父上!? 違います、こいつが勝手に――」
「言い訳は見苦しい! 多くの貴族が見ている前で、婚約者をここまで泣かせるとは。王家の恥さらしめ!」(陛下ナイスアシスト!話の通じないお父様で助かりましたわー!!)
結局、王子は弁明の機会を一切与えられないまま、あまりの素行の悪さ(というわたくしのデマ)と、衆人の前での醜態を理由に廃嫡・身分剥奪。
「こんなはずじゃなかったのにー!」と叫ぶマリアと共に、僻地の開拓地へと送られていきました。
わたくし?
わたくしは「不実な男を叩き斬った美しき女傑」として社交界のカリスマとなり、王家からの多額の慰謝料で、今日も優雅に推し活に励んでおりますの。
「冤罪を着せられるなら、先に着せればいい。これ、悪役令嬢の新常識ですわ!」
めでたしめでたし。
ぽんこつエルフさんと行く異世界の旅。
もよろしくです。連載始まったばかりです(´・ω・`)




