騎士道王女は過去を語る1
「王になるって・・・今の王様を倒すってこと?」
「そうだ」
フォルトゥナの言葉にフェリシアは肯定した。
「このクーデターにはドラゴンズチルドレンが関わっている」
「ドラゴンズチルドレンが!?」
フォルトゥナは驚いていた。だがオレはドラゴンズチルドレンが何なのか知らない。
「ドラゴンズチルドレンって何だ?」
「軽く言えばヤバい奴らだよ」
「そうなんだ」
オレはその一言で納得する。
「ドラゴンズチルドレンが現れたのはわたしが奴隷となる前、すなわちクーデターのときだった。ドラゴンズチルドレンはクーデターに関わっていたのだ。そうだな。これを説明するにはクーデターの出来事を語る必要があるか」
そこあとフェリシアがクーデターのことについて話し始めた。
・・・
わたしはいつものように朝の鍛錬に励んでいた。そのときは第一王子のグロリオと第三王女のネモがこちらに来ていた。この時間にいるなんて珍しい。
「素晴らしいです。姉様! わたしも姉様みたいになりたい!」
ネモはキラキラした目でわたしを見ていた。ネモはまだ幼く可愛らしい。
「ネモは無邪気なのはいいがフェリシアみたいに剣術ばっかりしていると婚期を逃しちゃうぞ?」
グロリオは遠回しにフェリシアみたいになるなとネモに言いたいようであった。
「グロリオ兄様、それはどういう意味ですか?」
わたしはグロリオを咎める。
「ああ、ただ僕は将来を憂いていっただけだよ。それにもうそろそろやばいのに色恋の話を一切聞かないのは事実だろ?」
「うっ!」
痛いところをつかれる。確かにわたしに殿方はいないが・・・。幾重にも鍛錬を積み重ねわたしは騎士団総長になってしまったわけだが、わたしをもらってくれる人はいるのだろうか?そうして話しているうちに時間が経っていることに気づく。朝の時間はそんなにないのだ。わたしは一旦話を切り上げることにした。
「あっ! 悪い! 結構時間が経ってしまったようだ。わたしは鍛錬に戻る。もしよかったらこのまま見ていってくれてもいい。それか一緒に鍛錬でもするか?」
「いや? 僕たちもこれから用事があったね。ここに長くは居れないんだ」
「ばいばい! 姉様」
グロリオとネモは用事があるようで帰っていく。
「さて、訓練を始めるか」
わたしはいつもと変わらず訓練に励み始めた。朝の鍛錬には第三王子ノーゼンも一緒だった。ただノーゼンは来るには来るが何もやろうとしない。わたしは弟である第三王子ノーゼンが訓練をサボっているのを咎める。
「おい! ノーゼン。訓練に集中しろ!」
それにノーゼンは反論する。
「俺より身分の低いやつを守るために鍛えるなど馬鹿馬鹿しい」
「ノーゼン! 騎士としての誇りはないのか」
「王族だからな。騎士じゃねえよ」
「王族だとしてもだ。わたしたちの生活があるのは民がいるからなのだ。上に立つ者には民を守る使命がある」
「ああ言えば、こう言って・・・うざいんだよ!」
そう言うとノーゼンは練習場を飛び出していった。ノーゼン、やつは問題児であった。それを憂いたお父様がわたしたち騎士団に預けたのだけど、問題行動は変わることが無かった。それからもわたしは訓練を続けているも時間が経過し、訓練も終わった。
・・・
異変が起こったのはわたしが公務を行なっているときだった。わたしは突然異変を感知したのだ。
「血のにおい?」
王宮には場違いのにおいを感じ取る。訓練での負傷? いや、それにしては血のにおいが濃すぎる。わたしは横においてある愛剣『ラグナロク』を持って走り出す。
「なんだ? この血のにおいは!」
それはだんだんと濃くなっていく。おそらくにおいが強いのは騎士団がいつも鍛錬を積んでいる場所だ。わたしはすぐさまそこに駆けつけるとその光景に絶句する。
「ああ? 嬢ちゃんは案外強そうだな」
そこにはただ惨状が広がっていた。目の前に立っている男ただ一人を除いて心臓の鼓動は聞き取れない。訓練場は血にまみれていてその猫の獣人しか残っていない。訓練場には惨殺された死体が並んでいた。それらは当然騎士団の人たちの死体だった。
(見る限り騎士団長もこいつは倒したのか?)
どうやら油断はできないらしい。
「貴様がこれをやったのか?」
「ああ! そうだ」
男は冷たく肯定する。
「わたしはファングロア王女にして騎士団総長フェリシア・フォン・ファングロア! 貴様を斬る!」
わたしは騎士の名乗りをし、男に斬りかかった。男の持っていた剣とわたしのラグナロクで鍔迫り合いになる。
「そうか・・・姫様だったわけか。じゃあ、そっちが騎士として名乗りをしたのだからこっちも名乗らないとだな。おれは灰の剣豪カラク・グレイだ」
「っ!?」
『灰の一閃』
わたしは咄嗟に剣でやつの剣撃を防ぎ切る。
「ほう。おれの剣撃を防ぐなんてな。どうやら、お飾り総長じゃないみたいか」
やつはそんな呑気なことを言っていた。それもそうだろう。わたしはやつの名前を聞いたことがあった。
「Sランク冒険者か。なぜこんなことをする!」
やつはファングロア唯一のSランク冒険者だった。
「いや? こっちにも事情があるんだ。悪いが制圧させてもらうぞ」
そう言うとカラクはポーチから新たに剣を取り出す。
『操剣ポルターガイスト』
その剣をカラクはわたしの方へ思いっきり投げる。
「っ!」
わたしはその剣を回避した。
そしてカラクが近づいてくる。
「灰の一閃」
わたしが剣を回避した一瞬の隙をやつは見逃さない。
『アイスヘルニードル』
わたしとカラクの間に魔法を設置してわたしは少しの時間を稼ぐと体勢を整える。アイスヘルニードルはカラクの方に針のように伸びていく。やつはいとも簡単にアイスキルニードルを切り刻んだ。そしてその隙を突いてわたしも一閃する。
「カキンッ」
「何?」
わたしの一閃はカラクが出したポルターガイストという剣に防がれる。ただ剣撃が重くないためこのまま押し切ればカラクへ剣が届きそうだがこの一瞬をカラクは見逃さない。
「使用者の意思で浮遊し、攻撃する剣、それがポルターガイストだぞ?」
カラクはそう言うとまた剣を振るがその攻撃は後ろに回避して避けた。
「結構やるな。おれとここまでやりあえるなんてな。Sランクに引けを取らない強さをしてる」
会話をしたままカラクはポルターガイストをこちらに飛ばしてくる。
「二体一だ」
そう言うとカラクはこちらに迫ってきた。そしてわたしは発見する。カラクがポーチに手を入れている。操剣ポルターガイストを出した時もそこに手を入れていた。と言うことはつまり・・・
「武器庫か」
何かをしてくることは確実。ならば、この状況を壊すまで! すまない。ここでは使いたく無かったがSランクに手加減など出来なかった。
『絶対零度』
わたしは魔法を発動すると周囲に周囲は全てが氷に包まれる。そしてその魔法により操剣ポルターガイストに氷漬けにされる。
「炎剣エンバーフレイムッ! ったく、危ねぇな」
カラクはさっきまで振っていた剣から交換してエンバーフレイムを構える。カラクの周囲はエンバーフレイムによって氷漬けを免れていた。
「さあ、これからが本番だぜ?」
カラクはそう言いながら剣を振るとわたしの魔法によりできた氷が溶けはじめた。
キマの不思議な生物図鑑⑨
ワーム
キマが世界で生き物を創造した年代の中で初期の方に創られた。割と適応度が高く、ミミズとは似ているようで種としての性質が違う。雑食。人間も襲うことがある。




