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マッドサイエンティスト異世界で神をやる  作者: 竹馬の友
世界でたった一人の勇者編

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勇者と梟

日向迅視点

オレたちは路地裏を出てから宿屋を探す。フェリシアは顔が元に戻ったのでフードを深く被っている。



 「宿屋はどこにあるんだ?」



 「ここじゃない?」



 オレたちが裏路地から移動して宿屋を探しているとフォルトゥナが宿屋らしきものを見つける。



 「羽付き亭。とりあえず入ってみるか」



 オレたちは中に入ってみると受付所が最初に目に入った。そこには少女が腕を突っ伏して眠っている。その眠っている少女を揶揄うようにまだついてきていた小精霊が遊び出す。



 「おきろよー。ねえねえ。おきろー」



 小精霊はあれからずっとオレたちについてきていた。小精霊は耳元で大声を出すが少女には聞こえない。元々適性がないと精霊女王などはともかく、小精霊は認識されないのだ。ただ、やろうとしていることは実に悪質だったのでオレは小精霊を少女から剥がそうとする。



 「勝手についてきて何してるんだ!」



 オレは異能で空気を吸収し、吸引することで小精霊をこちらに手繰り寄せようとする。



 「ふ!ふえー」



 いたずら心満載だった様子の小精霊はオレの方になすすべなく引き寄せられていき、終いには吸い込まれてしまった。



 「え? 吸い込むの?」



 まずい。精霊って吸い込めるのか。生物を吸い込んだ実績はこれまでに一度もなかったため油断していた。オレは慌てて異能を再発動する。



 『リリース』



 その言葉と共に小精霊は排出される。どうやら無事のようだ。よかった。だが、小精霊の方から苦情がくる。



 「なにしてるの! むくー」



 どうやらお怒りのようだ。



 「これがしょうせいれいのちから! くらえ! うるとらすーぱーはいぱーうちゅうちりちりそくしこうげきあたーっく!」



 小精霊はそう言うとふわふわしながらオレの方にキックをかましてくる。だが、小精霊はちっちゃいし、脅威はない。ただオレの体に当たってポフンッという可愛らしい音が鳴るだけだった。



 「なっ、なに! あたしのこうげきがきかない!?」



 小精霊はものすごく動揺する。



 「ねえ、さっきから何やってるの?」



 フォルトゥナが不思議そうな顔でこちらを見上げてきた。フォルトゥナは小精霊が見えていないから今の状況がわからないのだ。



 「今は小精霊とジンが戦闘中だ」



 「戦闘中!?」



 フェリシアがオレに代わって状況の解説をしてくれる。フェリシアも数少ない小精霊を見ることができる一人だったか。



 「いや、オレの状況は放っておいてもいいよ?」



 「そう? ならさっさと部屋取っちゃおうよ」



 「むしをするなー」



 小精霊が文句を垂れているが気にしない。



 「ちょっと! 起きて!」



 フォルトゥナは受付で寝ている少女を起こした。



 「何? 今いいところだったのに・・・っ! 客が来てる!?」



 少女はオレたちを見ると飛び起きた。



 「客なんて久しぶりだよ! 強盗じゃないよね?」



 その少女は茶色の鳥の羽毛が生えている。どうやら、鳥の獣人らしい。



 「強盗だと思うか?」



 「こんなところに入っても、もう取れるものなんて無いけどね! はっ! まさか! あんた、あたしを狙おうってことじゃ無いよね! あたしはあんたなんかに屈さないんだからね!」



 そう言いながら体をおさえて怯え出した。



 「じっー」



 「いや、オレそんなことしないからな!」



 他の視線が辛い。みんなそっち側なのかよ!



 「いや、冗談だっての! あたしはあんたを歓迎するよ。客もろくに来ないし、部屋は埃まみれだけど・・・」



 「・・・他の宿屋探そう?」



 「ちょっと待った!」



 フォルトゥナが他の宿屋を探すのを提案してきた。確かにここよりは他の宿屋の方が質がいいかもな。



 「本当にちょっと待ってよー! 他の宿屋も人来なくて碌なことになってないんだからどこも同じだって! ね? あたしの宿屋に泊まっていってよー! あたしの部屋使っていいからー! 埃とは無縁だからー」



 少女はオレの掴んだまま泣き崩れて離さない。



 「おい! 離れろ」



 「いやだー! ここに泊まってくれるまで離さないー!」



 その少女はオレから離れる気配が無かった。



 「わかった! 泊まるよ」



 オレは少女の気迫に押し負けた。



 「本当にいいの? こんなところに泊まって」



 フォルトゥナは本当にいいのか? と念押ししてくる。



 「ありがとう! どう? あたしの全力ボディタッチ駄々っ子、役得だったでしょ?」



 少女はこれまでの涙が嘘かのごとく晴れ渡った笑みを浮かべる。



 「じっー」



 フォルトゥナからのきつい視線がこちらに突き刺さる。



 「役得? もしかして、ジン」



 「いや、違うから!」



 オレは不埒な動機ではないとフォルトゥナの言葉を否定する。



 「いやー! モテるのは照れますね。でもあたしはあんたのことまだわかってないから付き合えないの」



 「ふざけてると他の店行くぞ?」



 「ごめんなさい」



 少女の行動を制すとオレたちは代金の支払いに入る。



 「銅貨一人五枚だよ。多めに払ってくれると嬉しいな」



 この少女は案外図太い性格のようだ。オレたちは一人五枚ずつで払う。



 「もっと払ってくれてもいいのに・・・でも毎度あり! あたしの部屋を使っていいよ。ちょっと待ってね! 今片付けるから!」



 そう言うと奥の方に向かう。



 「ジジイ! どけ!」



 奥の部屋にいるヨボヨボのおじいさんを追い出したり、日用品の数々がカウンターの中に終われていく。



 「ふう! これで準備完了かな? さあ! 奥に進んでいいよ。部屋の鍵もこれ」



 そう言うと宿屋で渡されるような鍵ではない錆びがこびりついている鍵を渡された。



 「じゃあお元気で」



 オレたちが部屋に入ると扉を閉めていった。



 「さて、ここなら人が来ないね」



 その言葉の後フェリシアは被っていたフードを取る。



 「では話し合いを始めようか『ウィンドエリア』」



 フェリシアは魔法を唱えるとそれは部屋を覆う。



 「風を使って内部から音が漏れるのを遮断する魔法だよ。獣人は耳がいいものも多いからね。対策はしておいた方がいい」



 フェリシアはどうやら外部を気にしているようだった。確かにいつ敵が話を聞いていても不思議ではない。



 「さて、改めて、わたしはフェリシア・フォン・ファングロア」



 「日向迅だ」



 「フォルトゥナ・テンペスタ」



 オレたちは改めて自己紹介をする。



 「君たちはわたしと協力するってことでいいんだよね」



 フェリシアが確認を取ってきた。フェリシアを奴隷から解放したことで現在の王家と敵対する可能性とアナシスを王家が素直に解放してくれるのかという疑念からこちらにくみすることにしたのだ。



 「アナシスを助けるためにもな」



 (まだ輸送中っぽいけどな)



 どちらにしろ、追いつく可能性は低いため変わらない。



 「君たちが今計画している作戦の内容は把握している。少々盗み聞きしたからな。それともう少し周囲に聞かれないように対策をした方がいい。例え、助けた者だとしてもな。移動している道すがら、わたしが君たちが喋っている内容を聞きながら、こっそりとウィンドエリアを展開していたんだぞ?」



 どうやらここにくる最中に色々と気遣ってくれたらしい。



 「確かに獣人は他の生物の特徴を持つから耳がいいものもいるって聞いてたけどもっと気をつけた方がいいみたいだね」



 フォルトゥナもそれに関しては反省の色を示した。



 「フェリシア? 作戦の内容を聞いてたってことはフェリシアは協力してくれるのか?」



 それならば、話は早い。だが・・・



 「いや、その提案には乗れない」



 「どうして? 別にお父さんが救出できればあなたの命はキマ教が保証するよ?」



 フェリシアはそのことに納得していないようだった。



 「君たちの提案はわたしが生きているという情報を脅しにアナシスという者を返してもらう計画なのだろう。しかし、それでは交渉が成立した場合、我が弟であり仇であるノーゼンを放っておくということだ。それをわたしが看過できると思っているのか」



 「・・・」



 オレたちは黙り込む。



 「さらにはその交渉の前提条件はわたしが王政を揺るがさないことだろう? わたしはどちらにしろ仇を取りに行くぞ。そしてわたしを使わないで交渉したとしてもわたしを奴隷から解放したことが君たちの交渉において楔となる。この交渉はわたしの了承を得た前提の話だから君たちの作戦は不可能だ」



 「・・・」



 どうやら作戦は早速作り直す必要があるようだ。



 「どちらにしろ君たちはわたしに従ってもらうぞ」



 フェリシアはそのまま新たな作戦を告げる。



 「わたしはやつを倒してこの国! ファングロアの王となる。それがわたしが思い描くプランだ」



 フェリシアは堂々とわたしたちに告げた。

キマの不思議な生物図鑑⑧



 精霊の花


 精霊が近くにいると咲く花。幻想的で美しく楽しい場所にいるとされている。精霊の花が枯れたとき不吉なことが起きると信じられている。

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