勇者は考える
日向迅視点
カラクが盗賊の村から去っていった後、フォルトゥナはすぐさま倒れている少女へと駆け寄った。
『神聖魔法』
少女のカラクによって折られた腕は回復していく。フォルトゥナはカラクに対して疑問を呈した。
「一体この代わりようは何なの?」
「オレもよくわからないな。そもそもそんなにあいつと長くいたわけでもないし」
ただ、この少女を見たときの態度は確かに異常だった。
「まあ、この少女自身に聞いてみるしかないな」
少女は現在、気を失っている。待つのが鮮明だろう。
「・・・見た感じアナシスは居なそうだな」
オレは話を切り替える。
「・・・そこの盗賊のボスに聞いてみるしかないんじゃない?」
フォルトゥナは隅で倒れている盗賊のボスを指差す。
「そろそろ起きるんじゃないか?」
オレたちは盗賊のボスが起きるのを待つことにした。
・・・
オレとフォルトゥナが盗賊のボスが起きるのを少しの間待っていると盗賊のボスの体がピクっと動いた。どうやら起きたようだ。
「起きたね」
フォルトゥナは盗賊の意識が覚醒したことを確認するとオレの服の袖を引く。
「ジン。お父さんについて聞かないと」
「そうだな」
オレはすかさず命令を発動した。
「アナシス。エルフの男について知っていることを全て話せ」
「エルフの男はもう別の場所に移動させた。エルフは貴重だからな。王様に献上すれば稼げるんだよ!」
盗賊の男はペラペラと情報を喋ってくれる。
「クソ野郎! こんなことしてタダで済むと思ってんのか?」
命令が済んだからなのか盗賊のボスは喋り出す。
「あんまり、そういうこと言わない方がいいんじゃない?」
フォルトゥナは盗賊のボスに忠告する。ここには奴隷から解放されたものたちがいる。そういうものたちが今の言葉を聞いたらどうなるか。答えは明白だった。
「散々こき使いやがって! ふざけるな!」
「クソ野郎! 俺たちはもっと苦しんできたんだよ」
「そうだ!」
オレが盗賊村で解放した強制労働させられていた奴隷たちが騒ぎ出す。
「お、おい、おれが悪かった!だから・・・」
「ふざけるな! お前たちは俺たちが悲鳴をあげたって笑っていたくせに!」
解放されたものたちは盗賊のボスを囲み出す。
「私たちが彼らの復讐を止める権利はない」
フォルトゥナはその光景を見守っていた。解放された奴隷たちはこの盗賊の村で散々虐げられていた人たちだ。
「た、助け・・・」
「クソ野郎が」
「死ね」
「やめ・・・」
「俺たちの恨みだ!」
オレたちがその光景を見ていると建物から女性が飛び出してくる。
「布!」
フォルトゥナは慌てて布を渡すとその女性も復讐に加わった。
「死ね」
「消えろ、お前のせいで私はっ!」
罵詈雑言の嵐だ。盗賊のボスの声はもうすでに聞こえなかった。
・・・
それから少し時間がたち辺りは暗くなり、焚き火の火がオレたちを照らしていた。まわりにはオレたちが救出した人たちが騒いでいる。
「ジンさん! 助けてくれてありがとう!」
オレへの感謝の言葉が聞こえる。
「ああ、これくらいどうってことはない」
オレは感謝の言葉に内心喜んでいた。
(やっぱり人に感謝されるのは気持ちがいいな)
「あのー、ジンさんですよね」
オレが浸っていると女性が近づいてきて話かけてきた。
「あのっ! 助けてくれて! ありがとうございます」
女性はオレに感謝を伝えるために近づいたようだった。だが、その反面女性の手はどこか震えていた。
「手が・・・」
オレは指摘すると女性は隠すように手を引く。
「あっ! 違うんです! ちょっと男性を見ると手が震えてしまって・・・。ジンさんが助けてくれたいい人って言うのはわかっているんですけど・・・」
その女性は困り顔だった。
「不敬でしたよね。どうか私を許してください。なんでもしますから!痛いことしないで!」
女性は土下座をしてくる。
「いや、そんなことしないから!顔をあげて!」
「本当ですか?」
「本当。君を傷つけるやつはここにはいないから」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
その女性は感謝を告げるとそのまま去っていった。オレは女性から受けた言葉を受け止める。オレは話したくなってフォルトゥナに話しかけた。
「なあ、フォルトゥナ。やっぱりオレは相手の傷とかわからないかも」
「急にどうしたの?」
となりにいるフォルトゥナは驚いた表情をしている。
「いや、さっきの女性を見てな。なんか生々しさを感じたと言うか。そういう状況に染まってしまった人だって思ったんだよ」
「確かにね」
「それでな。オレは盗賊のボスがリンチされるときなんか複雑な気持ちになったんだよ。なんだろうな。言葉では表せられない気持ち悪さがずっと残り続けている感じ? でもさ。あの女性の言葉だったりを聞いているとこの行為は正しかったんだって思えてくるんだ。理解できても納得しきれないこととかあるだろ? オレは納得せずに来たけどここに来て納得する理由ができて・・・そこで盗賊のボスは死んで当然だったって思えてきたんだよ」
オレはそこで会話を区切ると少しの間沈黙が走る。
「・・・いや、それでさ。やっぱり個人個人の傷もオレにはちっとも理解出来いし、それどころか、相手に同情してしまっていたって話だな。多分あの場面だけを見たからそう思うんだろうな。オレは盗賊たちが奴隷に何をやらせていたかもよく知らないのに・・・」
オレが落ち込んでいるとフォルトゥナは肩を優しく撫でてくる。そしてフォルトゥナの言葉はオレの疑問を前提から吹き飛ばした。
「まあ、悩むことじゃないでしょ」
オレはフォルトゥナに悩みを一刀両断されていた。フォルトゥナはそこからさらに喋り出す。
「盗賊のボスなんて他人でしょ。しかも敵だし。そもそも今回に関してはあっちが悪いでしょ。人を犯罪奴隷にして搾取する。どんな理由があってもやっちゃダメなことなんだから」
フォルトゥナは怒っていた。自身だけでなく今現在アナシスも被害に遭っているのだ。怒りプンプンだ。
「それに人の心なんてわかるわけないじゃない! 感情を表したときにある程度どういう気持ちかわかれば大丈夫。今回も盗賊のボスへの怒りは伝わっていたでしょ?」
フォルトゥナから叱責をいただいたオレはフォルトゥナの言葉に納得する。完全に相手の気持ちがわかる人など存在しないんだ。まあ、考えてみればそうだが、それでもだ。一応は勇者の加護をもらっているんだし、なるべくは人の気持ちに寄り添えるようになりたい。
「でも・・・やっぱり難しいな。ちょっと答えは出ないな」
「割り切ることも難しいからね。それに分かろうとすることは別に悪いことじゃないし」
フォルトゥナは焚き火の薪をいじりながら言った。
・・・
それからまた日が明け、今度はオレたちの前にカラクが気絶させた少女が目の前にいた。
「体調は大丈夫?」
「ああ、心配は無用だ。食べ物さえまともになかった環境と比べたらどれも豪華に見えよう」
その少女は白銀の髪が垂れ下がりケモ耳がピンっと立っている。そしてその瞳は翡翠を見てるかのような色だった。先ほどまで見えていた痩せ細ったボディラインは布で覆われて隠されている。その少女は自ら名を名乗った。
「わたしはフェリシア・フォン・ファングロア!この国の王女にして、ファングロア獣王国騎士団総長だったものだ!」
その少女、フェリシアはオレたちに正体を明かすのだった。
ダンジョンの遺物⑥
名前 音のなるゴミ
分類:娯楽品
一見ゴミのような物体。空気穴に吹き込むとただ音が鳴るだけのゴミ。鳴る音は音のなるゴミごとに違い汚い音から綺麗な音までランダム。ゴミごとに一つの音しか奏でることができない。綺麗な音がなるゴミは高く売れることがある。




